1997年11月発売
日々回転しつづけるわたしたちのこの世界はフンコロガシに押されていく糞の玉だ。その中で他人の生き血を吸うことに明け暮れる蚊=ビジネスマンが飛び回り、闇の中で光の意味について蛾=若者が語り合い、いつか陽の目を見ようと単調な穴掘り仕事をつづける蝉の子=労働者が這いずっている。人生は虫の生活に似ているなどと思ってはいけない。宇宙に行き交うものすべてが変態を続ける虫の自我の現れなのだからーカフカの『変身』で始まった二十世紀の文化を締めくくる小さく深い虫物語。
ベトナム戦争以降、米国が極秘に開発を進めていた恐るべき生物兵器ー『ナイトメア90』と名付けられたその薬は、大脳を刺激し人間が眠らせている遺伝子情報を活性化させるというものだ。だが、この薬はチンパンジーに服用させると、瞬時にチンパンジーが未知の物体に変態してしまうという未完成のものであった。この薬が過激派環境保護団体に奪取され、一部が新種ドラッグとして日本の若者の手に渡ってしまった。フリーランスの軍事顧問・牧原は、秘密裡に事態を収拾するべく当局より依頼され、ひとり調査を開始するが…。
姓は「覆面」、名は「作家」-本名・新妻千秋。天国的な美貌を持つ弱冠19歳の新人がミステリ界にデビューした。しかも、その正体は大富豪の御令嬢…ところが千秋さんには誰もが驚く、もう一つの顔があったのだ。
今年で創刊四十周年を迎えたSF同人誌「宇宙塵」の、既刊一九四冊の中から傑作・佳作を厳選したベストコレクション!1には、星新一の初期中篇「火星航路」をはじめ、眉村卓「歴史函数」、光瀬龍「イリ・エネルギー販売店」、石川英輔「水の魔物」など、日本SFの草創期を築いた大家たちの、珍しい単行本未収録作品を一挙に収録!渥見凡「黄昏の町」、光波耀子「聖母再現」、川島ゆぞ「副作用」、嬉野泉「三月来たる」といった新進有望作家たちの秀作と併せて、SFの醍醐味をここに結集。
幼い息子を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山竜司の解剖を担当した。冠動脈から正体不明の肉腫が発見され、遺体からはみ出た新聞紙に書かれた数字は、ある言葉を暗示していた。…「リング」とは?死因を追う安藤が、ついに到達する真理。それは人類進化の扉か、破滅への階段なのか。史上かつてないストーリーと圧倒的リアリティで、今世紀最高のカルトホラーとしてセンセーションを巻き起こしたベストセラー、待望の文庫化。
N.Y.の有名出版社の若き編集者ラッセル・キャロウェイは、大学時代の親友ジェフ・ピアースをスター作家に押し上げ、自身も脚光を浴びはじめる。しかし、彗星のごとき名声の上昇が、社の重鎮ハロルド・ストーンの不評を買ってしまう。社での立場に危うさを感じたラッセルは、社主の妹と謀って自社買収へと動き出す…。
会社買収王バーニー・メルマン、M&A専門の美人銀行家トリーナ・コックスと組んだラッセルの自社買収は成功した。経営に奔走するラッセルと孤独の色を深める妻コリーン。出張先でのラッセルの不倫をきっかけにするかのように、事態は思わぬ方向へと進展する。人生の絶頂から手中のすべてを失ったラッセルを待ちうけるものは?…マキナニーが渾身の力を込めて描く若きカップルの喪失と再生。