1997年5月発売
「旅先の祭りのなかをこうしてぶらぶら歩くこと、それがわたしの祭りだった」-植民者の子として過ごした朝鮮での記憶を抱きつつ、旅商いの人々の漂泊と遠い夢に惹かれ、各地の祭りを尋ね歩く日々。友人たか子もまた、露店の親分との強烈な過去を持っていた。二人の心が漂う幽玄の世界を描く。
紀州和歌山の泣き虫の少年は、大阪に奉公に出された。火鉢屋、自転車屋での辛いながらも愉快な丁稚時代を経るうち、彼は電気の時代の到来を看破。電気工の見習いへと転身。やがて、工夫を重ね、新型ソケットを開発して独立する。明治、大正の大阪船場の賑やかな空気、昭和の動乱の産業界の激しい浮沈を背景に「経営の神様」松下幸之助の波瀾万丈、創意工夫の足跡を颯爽と描く快作。
酒浸りの夫と別れたケイト・オドワイヤーは、三歳の娘ジェニファーと暮らし始めた。若き弁護士マイクと恋に落ち、再び幸福を手にしたかに見えたが、悲劇は起こった。ケイトの留守中にジェニファーがレイプされ、HIVウイルスに感染してしまったのだ。しかも犯人は裁判で無罪となった。なぜ法律が犯罪者の味方をするの?-絶望したケイトに残された道は、ただ一つだった…。
26年前にヴェトナムで戦死した筈の米国陸軍兵士の認識票が、突然その両親の許へ届けられた。それも、クリーシィの名を記した紙片に包まれて。両親の切願で、かつての若き戦友の生死を確認すべく、クリーシィは現地に飛んだ。彼をおびき寄せるための計略の気配を感じとりつつも。事実、邪悪で賢く、美貌の復讐者が周到かつ壮絶な罠を仕掛け、彼を待ち受けていた…。
群馬・水上温泉と大阪・蛍池で同じ日に起きた殺人事件。死体に残された同じタイプの出刃包丁が事件を繋ぐ。被害者の男女の関係は?犯人の動機は?だが、次々浮かぶ容疑者は、誰もが鉄壁のアリバイを持っていた。時刻表の裏を読み、事件の真相に迫る浦上伸介の名推理は、如何にして犯人を追いつめるか。
せんじつめれば全て偶然のいたずら、あるいは運命でしかないーあの日メイン州ヘイヴンの森で、ボビ・アンダーソンが何物かにつまずいたことも、好奇心から地面を掘り返しはじめたことも。(ボビが大変なことになっている!)虫の知らせを感じ、訪ねてきたかつての恋人ジム・ガードナーは、驚くべき光景を目の当たりにするが…。
大量の乾電池などを使い、家庭の日用品をつぎつぎと改良していくヘイヴンの人々。町には不可解な死亡事故や失踪事件が頻発している。森の奥深くからは、怪しい緑色の光が…。平和だったヘイヴンに何が起っているのか?ボビはどこまで“進化”していくのか?SF的趣向とモダン・ホラーが渾然一体となったキング・ワールド。
自分の夫の毒殺を計ったテレーズは、家の体面を重んじる夫の偽証により免訴になった が、家族によって幽閉生活を強いられる。絶対的な孤独のなかで内なる深淵を凝視するテレーズは、全ての読者に内在する真の人間の姿そのものなのだろうかー─遠藤周作がノーベル賞作家フランソワ・モーリアックと一心同体となって、昂揚した日本語に移しかえたフランス文学の不朽の名作。
一九四一年、風雲急をつげる上海。一人の少女が合衆国へ脱出した。四十年の歳月を経て彼女の元に届いた古めかしいトランク。その中には、米国権力中枢にくいこんだ史上最大のスパイ「ダンテ」の秘密が隠されていた!ロマノフ家の財宝、ゾルゲ事件の真相…錯綜する歴史の闇から浮かびあがる衝撃の真実とは。
「な、何の真似だね、それは…。おい、気は確かか…」老人の声がうわずり、椅子が激しくきしむような音が上がった。違法電波から聞こえてきた生々しい“殺人現場”の音。「狩り」に出た盗聴器ハンターが都会の夜でとらえたものとは?今が“旬”の気鋭が送る初めての短編集。表題作ほか秀作ミステリ4編。
老紳士の体から、真っ赤な血が吹き出した。騒然とする中、双子だけが瞬きもせず、殺人の一部始終を目撃していた。目撃者を消そうとする組織。二人を守る女教師ローラと刑事上がりの検事補モンタナたち。必死の攻防に、味方は一人、また一人と倒れ、彼らは追いつめられていく…。息づまるノンストップサスペンス。
明治歌壇に颯爽と登場した鉄幹を囲んで、多くの女性たちが愛を競った。その中で晶子は、もっとも激しく恋し行動して、彼の妻となった。しかし、結婚の現実は厳しく、次々と挫折に襲われる。萎縮する夫を支え続け、恋冷めの気持を歌によって発散し昇華させて、愛を貫いた与謝野晶子を描く、感動の長編小説。
明治の文豪・二葉亭四迷は、日本陸軍の指令を受けたスパイだったのか!?ウラジオストック、ハルビン、北京…を舞台に彼の足跡をたどり、隠された真実を明かしてゆく。日露戦争前後に繰り広げられた諜報戦や遠くポーランドの独立運動との関わりまでをも描いた、史実に基づく壮大な歴史ミステリーの傑作長編。
モリタトールーすなわちグルエルフィン銀河の語り部をもって任ずる種族。そのひとり、カラバシュが『マルコ・ポーロ』へコンタクトを求めてきた。ローダンは申し出に応じ、相手の本拠惑星モラケシュへ向かう。驚いたことにモラケシュはカピン20万年の膨大な歴史を記録・保存する“文書庫惑星”であり、銀河に君臨するタケル人の干渉も受けつけぬほどの聖域だった。しかし、そこにも密かな陰謀のしのびよる気配が…。