1997年5月15日発売
一九四一年、風雲急をつげる上海。一人の少女が合衆国へ脱出した。四十年の歳月を経て彼女の元に届いた古めかしいトランク。その中には、米国権力中枢にくいこんだ史上最大のスパイ「ダンテ」の秘密が隠されていた!ロマノフ家の財宝、ゾルゲ事件の真相…錯綜する歴史の闇から浮かびあがる衝撃の真実とは。
「な、何の真似だね、それは…。おい、気は確かか…」老人の声がうわずり、椅子が激しくきしむような音が上がった。違法電波から聞こえてきた生々しい“殺人現場”の音。「狩り」に出た盗聴器ハンターが都会の夜でとらえたものとは?今が“旬”の気鋭が送る初めての短編集。表題作ほか秀作ミステリ4編。
老紳士の体から、真っ赤な血が吹き出した。騒然とする中、双子だけが瞬きもせず、殺人の一部始終を目撃していた。目撃者を消そうとする組織。二人を守る女教師ローラと刑事上がりの検事補モンタナたち。必死の攻防に、味方は一人、また一人と倒れ、彼らは追いつめられていく…。息づまるノンストップサスペンス。
明治歌壇に颯爽と登場した鉄幹を囲んで、多くの女性たちが愛を競った。その中で晶子は、もっとも激しく恋し行動して、彼の妻となった。しかし、結婚の現実は厳しく、次々と挫折に襲われる。萎縮する夫を支え続け、恋冷めの気持を歌によって発散し昇華させて、愛を貫いた与謝野晶子を描く、感動の長編小説。
明治の文豪・二葉亭四迷は、日本陸軍の指令を受けたスパイだったのか!?ウラジオストック、ハルビン、北京…を舞台に彼の足跡をたどり、隠された真実を明かしてゆく。日露戦争前後に繰り広げられた諜報戦や遠くポーランドの独立運動との関わりまでをも描いた、史実に基づく壮大な歴史ミステリーの傑作長編。
モリタトールーすなわちグルエルフィン銀河の語り部をもって任ずる種族。そのひとり、カラバシュが『マルコ・ポーロ』へコンタクトを求めてきた。ローダンは申し出に応じ、相手の本拠惑星モラケシュへ向かう。驚いたことにモラケシュはカピン20万年の膨大な歴史を記録・保存する“文書庫惑星”であり、銀河に君臨するタケル人の干渉も受けつけぬほどの聖域だった。しかし、そこにも密かな陰謀のしのびよる気配が…。
青葉ヶ丘中学3年A組ー悪魔のようなこのクラスを、担任教師が名づけて「沈黙の教室」。何者かが不気味な恐怖新聞を発行し、つぎつぎと粛清の対象を指名していく。そして行なわれる残酷ないじめ。やがて20年がたち、クラスの同窓会の告知が新聞に載った時、報復を誓う者による大量殺人計画がひそやかに進行しはじめた!めくるめく多重構造の謎と、じわじわと忍びよる恐怖。日本推理作家協会賞長篇賞に輝くサスペンス。
パームビーチ一の人気を誇る肖像画家が死体で発見された。さっそく捜査を開始したわたしだが、すべてのカギを握ると思われる、ひとりの女性の妖しい魅力に心奪われて、肝心の脳細胞はいっこうに働こうとしない。やがて、事件で証言をした関係者たちが、次々と謎の死をとげはじめて…あらゆる男を惑わす“魔性の女”に翻弄される、プレイボーイ探偵の奮闘ぶりをユーモラスに描く、秘密調査員マクナリー・シリーズ第3弾。
1944年、アメリカ南部。ある黒人の少年が、白人の少女を殺した罪で史上最年少の14歳で死刑になった。数十年後、少年の甥で元記者のウィロップは、叔父が本当に殺人を犯したのかどうか真相を探り始める。やがて彼が接触した人々が謎の死を遂げ、ウィロップに殺人の疑いが!史実に基づく衝撃のサスペンス。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長篇賞受賞作。
ついに翠心を妻に迎えることを決めた楊三郎。そんな時、天界の西王母から命を受け、二郎の妹・三娘が長安に現れた。伯父である天界の統治者・玉帝は、近く長安に異変が起こると予見していた。ゆえに、その身は人間でありながら、実は天界から誤ってこぼれた霊玉の化身・翠心を西王母の保護の許に置こうというのだ。伯父への反発から拒否する二郎だが、翌日、己の偽者が立ち回りを演じたとの報告を受け…。
CIA情報部中国担当のシャロン・リーは、中国の自治区となっているチベットで起こった独立運動が突然の終息を迎えた謎を解明していた。資料として回ってきたチベット騒乱の際に配られた手配書の写真の顔に目を止めた。それは半年前の大亜湾原発事故、その後の香港会議中心爆破テロの際にも居合わせた顔だったからだ。三つの事件に関連する顔ー工藤秋生とその周辺の人物を調査すべくCIAが動き出した。
ルーサー・ホイットニー、66歳。金持ちの家しか狙わない筋金入りの老泥棒だ。ある夜、忍び込んだ豪邸で億万長者の人妻と現職大統領の密会を目撃してしまう。お定まりの情事はやがて恐ろしい暴力へと変わる。抵抗した女は、騒ぎを聞いて駆けつけたシークレット・サービスに射殺され、現場は偽装される。今や真実を知る唯一の人間となったルーサーは欺瞞を見過ごせず国家を相手に命がけの罠を仕掛けるが。
殺人現場に残されたペーパーナイフを証拠に500万ドルを大統領の側近に要求したルーサー。シークレット・サービスのビル・バートンは、ルーサーの愛する一人娘、ケイトを利用して彼をおびき出そうとする。真実を知らないケイトは父親の逮捕に手を貸し、激しい後悔に陥る。しかしルーサーの弁護士ジャックは父娘の窮地を救うために犯罪を隠蔽するグループとの闘いを決意する。超大型新人の傑作サスペンス。
昭和20年8月15日、「大和」は夕日の中にその姿をとどめていた。降伏文書の調印を終えた2週間後、呉にも進駐軍が大挙して押し寄せ、旧海軍艦艇の接収作業が開始された。むろん「大和」も例外ではなかった。ミッドウェーをはじめ重要な戦局で常に勝利を収めた名将レイモンド・スプルアンスが太平洋艦隊への編入を強く望んだのである。米海軍は、「大和」を改修するとともに、操艦技術を習得させるために、旧乗組員たちを軍属扱いで乗艦させた。日米の乗員たちが手を携える、ようやく訪れた平和であった。が、安息の日々は長くは続かなかった。昭和25年6月25日未明、北朝鮮軍が韓国へ侵攻したのである。それは、新たなる「大和」の旅立ちとなった。