1997年7月発売
隋の煬帝は各地の叛乱でついに自縊。隋は二代で滅びた。李淵、李世民の親子は長安を奪い唐を建国。各地で群雄並び立つ戦乱が続く。秦叔宝、魏徴ら英雄たちも唐の将として戦いを続ける。大唐帝国成立期の英雄・豪傑たちが織りなすスペクタクル。群雄雄び立つ戦乱のなかで陰謀と愛欲が時代をいろどり華麗な歴史絵巻が続く。
寺僧の堕落を痛罵し、妻や弟子ももたず、法も説かず、破庵に独り乞食の生涯を果てた大愚良寛。その人間味豊かな真の宗教家の実像を凄まじい気魄で描き尽くした水上文学のエッセンス。毎日芸術賞受賞作。
美をはらむ恐怖、その香しき世界。殺したいほど憎いのに、狂おしいほど愛しい。ひぐらしが鳴き乱れる屋敷に、ひっそりと暮らす若き女主人。彼女の魔性に翻弄される男の行く末は?匂い立つ官能美の世界を華麗に描く表題作他、著者自選の二篇を収録。
名探偵が実は犯人であった、という意外さ。被害者と思われていた人物が、本当は加害者であったという面白さ。一人称小説の記述者、つまり私が、真犯人である、という驚きーミステリの難題一人三役に敢然と挑んだ野心作『猫の舌に釘をうて』。007の痛快さと山田風太郎忍法帖の面白さを併せもつ冒険アクションとしても楽しめる『三重露出』。凝りに凝った工芸品のような本格推理趣向の傑作二編。
カフェ、雑貨、花、絵画、オブジェ…優しさと親しみをこめて生活やアートに接しようとする人たちの集うサンライト・ギャラリー。新しいフォークロアを求め、都会を離れ、海と山に囲まれた湘南に暮らしはじめた人たちの喜びと失意の日々を描く、待望の短編小説集。
たとえば、姉の食べ残しに弟が躊躇なく手を出せるーそんなふつうの生活を理加子は夢みている。軍隊にも劣らないほど強権な父親と、一度も家族を愛したことのない母親のもと、理加子は大屋敷家ただひとりの子供として“石の歳月”を過してきた。“不良になるから”という理由で、映画、読書はもちろん電話、手紙に至るまで禁止されてもなお、理加子は両親に逆らえない。そんな彼女の前に粗暴で強引な男性江木が現れ、次第に心を開いてゆくが…。子供から大人へ。集団から個へ。誰もが通過する家=家族との決別を綴った切ない物語。
美しく生まれた女は怖いものなし、何でも思い通りのはずだった。しかし祖母はボケ、父は倒産、職場でも心の歯車が噛み合わなくなっていく。美人も泣きをみることに気づいた椿。本当に美しい心は何かを問う。
あらゆる悪が正気をのみ込むグリーンリバー刑務所。痴情のもつれから始まった暴動により、刑務所は完全に秩序を失った。本当に狂っているのは誰なのかーー。黙示録的プリズン・サスペンス。
植木職人の銑次郎は一匹狼の盗賊だったが、岡っ引きの伝造に追われ始める。確証は与えていなかったが、探索の輪は狭まっていく。だが、この二人には、愛しい女、そして、守ってやらなければならない女がいる-。
ホラーを知り尽くした著者が、自信をもっておくる本格的怪奇小説の決定版!とにかく怖い!怪奇実話作家のもとに持ちこまれた一冊の日記帳。赤い羽根を極端に恐れる男の記録に隠された驚愕の真実とは?切れ味するどい第一章「赤い羽根の記憶」から、幽霊屋敷パターンに新機軸をうちだす第三章「黒い家」、今までの登場人物が総登場して百物語をくりひろげる最終章「百鬼譚の夜」まで、奇想と企みに満ちた恐怖の迷宮の中で、怪奇小説ならではの醍醐味をたっぷりと味わっていただきます。