1997年発売
ハリーの妻エヴィと医師シドニスはずっと浮気をしていたのだ。別れ話をもちだされたハリーが妻と別れたくなくて、妻を殺したのだとシドニスは主張する。妻が浮気をしていた事実さえ知らなかったにもかかわらず、ハリーは第一容疑者にされてしまった。真犯人を探しだそうと独自の調査を開始したハリーはやがて、病院内で暗躍している恐るべき組織の陰謀の渦中に…巨匠ロビン・クックにつづく、ベストセラー作家の話題作。
もう、刑事には戻れない。酒に溺れ、仕事も家庭も失った元警部補ロレインは、酒を断つことを決意し、探偵事務所を開いた。だが経営は苦しく、生活もままならぬところへ大物の依頼が舞い込んだ。一年ほど前、ニューオーリンズで行方をくらませてしまった、往年の名女優の娘で大学生のアンナ・ルイーズを探しだしてくれというのだ。ロレインはアンナ・ルイーズの身辺を探るうち、やがて娘の家族の驚くべき秘密を知るが…。
必死に調査を続けるロレインは、やがてアンナ・ルイーズの母親が麻薬中毒であるとの情報を得る。また、父親は新事業の計画を進めており、資金繰りに困っていたらしい。娘は誘拐されたのか、それとも家族の秘密に関わる何者かに殺されたのか?新たな手がかりを求め、ロレインはニューオーリンズへ飛ぶ…酒への欲求に苦しみ、自分自身と闘いながら事件を追う女探偵。
教師の特権の夏休みを返上して参加したサマースクールは、うんざりすることばかり。猛暑の授業に生徒はやる気なし。ただ一人、向学心に燃える移民の生徒エイプリルだけが救いだ。だがある日、その彼女が失踪してしまった。さらに、同僚の黒人女性教師が夜ごとの脅迫電話に悩んでいると打ち明けてきた。二人の身を案じ、真相を探りはじめたわたしに、謎の脅迫状が。
人類が拡大を目指し大宇宙に翔び立っていった「地球離脱」から数千年。地球に残った人々は科学を捨て、半ば無気力に暮らしていた。だが、太陽と地球のあいだに「暗黒星雲」が忍びよってきたことで、事態は一変する。星雲が太陽を遮り、すでに大気の薄くなった地球から、今度は光までもが失われようとしているのだ。このままでは大氷河期が訪れ、人類は滅亡してしまう。そんなある日、「滑る石の平原」で異変が起こった。何千年ものあいだ平原を滑りつづけてきた32個の石が静止し、完全な円形に並んだのだ。これは人類破滅の予兆なのか?奔放なイマジネーションで終焉を迎えつつある超未来の人類の姿を描き、ウィリアム・ギブスン、ノーマン・スピンラッドなど英米のSFウルサ方を唸らせた英国SF作家協会賞受賞作。
ゴードンは、数年前に妻が家出して以来、ひとり息子のカルヴィンの子育てにはげむ、シングル・パパ。わがままなカルヴィンの世話に手を焼き、ときには投げやりになって、勝手きままなシングル・ライフにあこがれたりするゴードンだが、そんな気分になったときに彼の脳裏に浮かぶのは、カレッジ・バスケットボールのコーチ役に徹するあまり、家族との交流をないがしろにしていた、自分自身の父親のこと。父と同じ轍を踏まないように、子どもを育てていきたい…と日々奮闘する彼の前に、ある日、ひとりの魅力的な女性が現われる。カルヴィンとの相性もぴったりの彼女としだいに親交を深めていくゴードンだが、そんな折り、しばらく音沙汰のなかった前妻から電話があり、もう一度カルヴィンといっしょに暮らしてみたいというのだ…。
白昼のロンドンを襲ったIRAの爆弾テロが、歴史さえ揺るがしかねない陰謀を浮かび上がらせた。爆破現場から偶然に発見された書類から、某国による要人暗殺計画が進行中であることが判明したのだ。書類によれば、暗殺の実行にあたるのは旧東ドイツの「シュタージ」。恐るべき計画力と実行力を持ちながら、いまや壊滅したと信じられていた秘密情報組織だ。しかも暗殺の実行者は人間ではなく、標的をコンピューター制御で認識する自動狙撃装置だという。となれば、詳細な情報がなければ、対策さえ立てられない。だが、この暗殺を計画しているのがどの国なのか、いったい誰が標的なのか、それさえもわからないのだ。唯一の手がかりは、シュタージの本拠地が北朝鮮にあるという情報のみ。かくして英国情報部MI5は、暗殺計画を阻止すべく、元特殊部隊兵からなる傭兵チームを北朝鮮に送り込むが。
京都を襲った未曾有の大災厄から10カ月。大火災に始まり、人を襲う妖怪たちに蹂躙され、逃げまどった恐怖もようやく薄れ、人々も街も再建に忙しい。地質調査会社の技師・木梨香流は、あの事件の渦中に離れ放れになった恋人・真行寺君之を偲んで悲しみに浸ってはいられなかった。君之は紅姫によって時のはざまに連れ去られたらしい。…サイパンのジャングル内の洞窟で、妙なものが見つかった。象牙色の皮をなめしたようなものの上に見たこともない文様が並んでいる。それが『アルルの謎文字』であることが分った時…。
人質として、カフタル帝国の中心、リュシプール城に囚われていたルテニア王国第二王子・ラシカのもとに、突然の悲報が告げられた。家臣の謀反によって、父王ゲオルゲ、長兄ブラントが殺されたというのだ。忠実な僕にして唯一の友・イーレンタールとともに、故国をめざすラシカを待ちうける運命は?そして、十五年ぶりに目覚めの時をむかえる邪悪な地霊とラシカの関係とは。
七年越しの恋人に別れを告げ、彼を忘れるための長い旅を経て故郷の大阪に戻ったさつき。新しい職場で、陽気な同僚たち、優しい女友だちとともに新しい生活を始め、二十五歳になるまでに何とか新たな人生の転機を迎えようとがんばるが…。親友の裏切り、仕事での失敗、昔の恋人の出現、憧れの一人暮らし、そして新しい恋ー愛に惑い、仕事に悩む、すべての二十五歳に贈る応援歌。
「そちは何年何十年生き延びようと、四十七名の一人である」-。吉良上野介邸に討ち入った赤穂四十七士の中でただひとり、生き残ることを大石内蔵助に命じられた足軽・寺坂吉右衛門。ある時は遺族の相談役として東奔西走し、またある時は生命を賭して公儀へ自訴し…。複雑な思いを胸に、元禄義挙の生き証人として残りの人生を生きた男の17年間を描いた「もう一つの忠臣蔵」。
天使のような笑顔を浮かべると、出会う者はみな思わず「可愛い!」と声を上げてしまう。大人たちを自分の魅力のとりこにし、望むものを手にしてきた小学1年生の少年、拓馬には、ある秘密の「趣味」があった。場所はたそがれの競馬場ー。純真、残酷、妖艶、粗暴、嘘言…。正常と異常の狭間に立つ幼児たちの危うい心理を描きだした、現代の「恐るべき子供たち」ともいうべき7編。
七歳で旗本小普請組勝家の養子に入った小吉は、学問嫌いの極道者。喧嘩三昧の毎日だ。出世の道を喧嘩で切り開こうと、道場破りに生き甲斐を感じている。業を煮やした父親は、座敷牢に小吉を閉じ込め、許嫁と二人きりにする。そうして麟太郎(海舟)が生まれたー。出世を望むも叶わず、不良御家人として放蕩無頼に生き、麟太郎に自らの夢を託して生涯を終えた小吉を痛快に描く時代長編。
第一次大戦に赤十字の傷病兵輸送隊員として参戦したヘミングウェイは、砲撃による重傷で、ミラノの赤十字病院に運ばれた。そして、彼の人生を大きく左右する女性と出会った。19歳の精悍な青年と7歳年上の美しい看護婦アグネス。戦火の中、二人の心は激しく燃え上がる。結婚を考えるほどに…。名作『武器よさらば』の背景をなす悲恋を、日記や書簡を中心に構成した迫真のドキュメント。
キャンパスで発生したレイプ事件。心理学科助教授のジニーは、罪を着せられたスティーヴが一卵性双生児であることを突き止める。だが、その片割れは殺人罪で服役中。では、“3人めの双子”が存在するのか?遺伝子操作、ソシオパス、コンピューター・テクノロジー、M&A、そして合衆国保守派の陰謀ーすべてを盛りこみ、鬼才が11年ぶりに放つ鉄壁のコンテンポラリー・スリラー。
自らの名誉を守るために、徒手空拳で強大な権力に挑むジニーとスティーヴ。その行く手に、70年代まで進められていた“禁断の計画”の幻影が浮かび上がる。止めるか、止められるかー。大学、FBI、ペンタゴン、果てはキャピタル・ヒルまでを巻き込んで、敵の失策を徹底的に利用する苛烈な闘いが展開されてゆく。世紀末の状況を冷徹に描いた巨編は緊迫のクライマックスを迎える。
スコットランド高地地方に暮らす落魄した大地主バルメリノー家とその古くからの隣人エアド家の人々を主人公に、家庭と家族の絆を深い愛情をもって描き出した、ピルチャー円熟の長編小説。
あてどない日常をさまようように生きる全共闘世代の二人の男と二人の女ー危ういバランスにゆれる四角関係のゆくえの中に、時と魂のふるえを実験的にうつし出す、八十年代のひそかな名作が、話題の映画化とともによみがえる。