1997年発売
実在のミステリ作家らを襲う奇妙奇天烈な“うんこ事件”。竹本健治の連載ミステリに混入する眩暈と戦慄の物語。綾辻行人、小野不由美、笠井潔、新保博久、法月綸太郎、麻耶雄嵩、山口雅也が推理合戦を展開、小説ジャックまで強行される。世界は擾乱され朦朧胡乱の淵に転落した。
『メフィスト賞』第三回受賞作。大笑いか激怒かっ!?決して読む者の妥協を許さぬ超絶アホバカ・ミステリの決定版、遂に登場!流麗にしてクレバー。この“難問”を自力で解いた時には感動すらおぼえる表題作。思わず“ナルホド”とヒザを打つ『音の気がかり』。“ウゲッ”と絶句する『しおかぜ17号四十九分の壁』他、全15編+αを完全収録。
時は退廃の風たちこめる大正末期。帝大生、蒲生鉄哉のもとにもたらされたアルバイトは財閥の総帥、北畠家での住み込みの仕事だった。不吉な死の匂いの漂う館には、夜な夜な縄で責めさいなまれる二人の美少女と淫蕩な未亡人、そして北畠家乗っ取りを謀る後見人が棲んでいた。娘たちの調教を強いられた鉄哉はみずからの命をかけて、彼女たちを救い出そうと決心するが…。陰謀と肉欲がうごめく長く暑い夏の日々のよどんだ均衡を破ったのは毒薬と銃声の饗宴だった。
第一次世界大戦で欧州に出兵した日本は、戦勝国となったものの、ジェットランド沖海戦で金剛が撃沈され扶桑も大破した。またUボートにより輸送船も次々と沈められ、多くの将兵を失った。この近代戦を目の当たりにした若手将校は空軍と戦車の重要さを認識し、軍備の改革を進める。折しも租界地の奪還を目ざして蒋介石の国府軍は上海を包囲した。ただちに帝国政府は英米仏とともに租界地防衛のため、空母に改装した扶桑を旗艦とした上海派遣艦隊を赴かせるが…。
在日朝鮮人として生れた著者の、37歳で夭逝した魂の記録。差別と偏見の苦しい青春時代を越えて、生国・日本と母国・韓国との狭間に、言葉を通してのアイデンティティを探し求めて、ひたすらに生きた短かい一生の鮮烈な作品群。芥川賞受賞の「由熙」、そして全作品を象徴するかのような処女作「ナビ・タリョン」(嘆きの蝶)、「かずきめ」「あにごぜ」を収録、人生の真実を表現。
アイオワの小さな村を訪れ、橋を撮っていた写真家と、ふとしたことで知り合った村の人妻。束の間の恋が、別離ののちも二人の人生を支配する。静かな感動の輪が広がり、ベストセラーに。
日本を代表するシャーロッキアン小林司、東山あかねが不朽の名作「シャーロック・ホームズ物語」全作品を新たに全訳する。オックスフォード大学版の「注釈・解説」を完訳して付す、初版本のイラスト(ハッチンソン画)全点を復刻掲載、タイトルを「緋色の研究」から「緋色の習作」と改めた。
サイコセラピスト綾川恵美は、新築の超ハイテクビル「ベイサイドラビリンス」での実験に立ち会うよう指名された。スペースコロニー建設に向け、完全な閉鎖空間に置かれた人々の心理を分析する実験である。参加者は全員で10人。人気アイドル、政治家、自称超能力者…職業も年齢・性別もまちまちな彼らは、密閉された地上96階フロアで、安全で快適な3カ月を過ごすはずだった。-たったひとつ、踏み入れてはならない1室への好奇心を抑えることができれば。だが突如、有り得べからざる惨劇が起こった。
吉田松陰に十八歳で出会い教えを乞い以降維新革命に尽瘁、二十八歳でこの世を去った高杉晋作。その尊王倒幕の運動によって盤石の徳川幕府はついにゆらぎ、倒壊は時間の問題となったのだ。時代を駆け抜けた傑出した人間の型破りの青春の客気を、晋作自身の視点を通じ描く断然面白い新しい歴史小説の誕生。
「志士は頸首所を分つ事を恐れず、溝壑に填まり長く終に反ることを得ず」-。松陰の言う死をむかえた高杉晋作。行年二十七年と八カ月。その若すぎた死にはあらゆる伝説が生み出される。時代を読む確かな眼、破天荒な実行力、そして客気。世界は晋作のような英雄の出現を待っていたのだ。
江戸で五指に入る狂歌師となった政吉は、野心のあまり落ちこぼれて行くが、唯一救いの燈がともっていて…。幼い頃親を失ったお若は、腕のよい仕立屋になれたが、一人の心細さがつのる時は、まっすぐに深川澪通りに向って…。辛い者、淋しい者に、無条件に手をさしのべる木戸番夫婦を描く、傑作時代長編。
艶やかな黒髪、すき透る白い肌、もの言いたげに光る瞳ー美しい女人に成長した許子は、少女の頃から憧れていた皇子たちと恋におちる。幼い日の秘密が匂う甘い恋に始まる、「浮かれ女」の華麗な恋の遍歴。夫や子供を持ちながら、恋人たちとの愛の姿を熱くうたいあげた官能の歌人、和泉式部の生涯を描く長編。
タケル人の統べる異銀河に囚われた旗艦「マルコ・ポーロ」は必死の逃走を続けていた。マシュリーン提督率いる追跡艦隊は反空間ソナーに似た新兵器を投入、安全と思われたリニア空間までも追いすがってくる。さらにグルエルフィン銀河中にテラナーらの指名手配書がまかれるに至り、絶体絶命の窮地に追いこまれたローダンは捨身の作戦に出たー青色巨星ゲルヒャー・ラムダへ突入、「マルコ・ポーロ」の最期を演じるのだ。