1998年7月発売
ゆすりたかりに押し込み、殺しで、獄門となるはずだった囚人・音次。が、市中引廻しの最中に、なぜか縄が解けて脱走する。牢屋同心は責任をとって切腹、その息子・角之助は、父の仇を討つため、岡っ引の子分となって音次の行方を探す。次々と裏切り者を始末する音次と追いつめる角之助、二人をめぐる女たち。悪の巣と化した邪淫寺を舞台に、江戸の闇を描くピカレスク時代長編。
ウォール街の大手法律事務所。30万ドルを超える年収。妻とふたりの息子。ヤッピー弁護士のベンは、それでも満たされぬ思いを抱いていた。そして妻の不貞に気づき、激情に駆られて凶行に及んだあとで、ベンはそれまでの自分をも葬ることを決意した…。エリートから逃亡者へ、ニューイングランドからモンタナへ。数奇な運命と皮肉な結末をスリリングに描き、全米を震撼させた問題作。
上流社会に育ったアッシュブルック家の令嬢ヴァレリーは、恋愛と結婚を切り離し、学生時代の恋人ニックと別れた。シビルは、子供の頃から羨望の眼差しでヴァレリーを見ていたが、ある事件で大学を除籍になり、彼女への復讐からニックと結婚する。しかし野心に燃える彼女は、ニックと息子を捨て、50も年上の実業家に近づき再婚。今、夫の死で、シビルは遺産を相続し笑いが止まらない…。
人を憎み利用するだけで愛を知らないシビルの目的は、ヴァレリーの全財産を奪い破滅させることだ。ヴァレリーは、銀行家の夫と別れ、最近、カールトンと再婚、自分の財産管理を夫に一任していた。その夫がヴァレリーの全財産を担保に借金をして急死。破産したヴァレリーは学生時代の恋人ニックと再会する。そして、資産家の未亡人になったシビルは、カールトンと密会していた…。
夜の性風俗ガイドを依頼してきたアメリカ人・フランクの顔は奇妙な肌に包まれていた。その顔は、売春をしていた女子高生が手足と首を切断され歌舞伎町のゴミ処理場に捨てられたという記事をケンジに思い起こさせた。ケンジは胸騒ぎを感じながらフランクと夜の新宿を行く。97年夏、読売新聞連載中より大反響を引き起こした問題作。読売文学賞受賞作。
「やめてっ、先生にそんな乱暴するの…」。不良の巣窟となっている男子高に美人で気の強い二十七歳の女教師が赴任してきた。早速、不良グループの撲滅をはかるが、一味の罠に堕ち、犯されるはめに。しかし教え子に嬲られるうち、被虐の妖しい悦びに火がつく…。美人教師が牝奴隷に転落していくまでの背徳の性宴を活写した官能学園小説の最高峰。
鶴丸貫太郎課長に特命が下った。不良債権の土地をラブホテルとして活用する企画を成功させろ!男女の愛情と官能を満たすには、如何なる仕掛けが必要か?鶴丸は女たちを話題をホテルに誘い込み、己の欲望と調査の一石二鳥を果たす。だが、カネと欲望の蠢く派閥抗争に巻き込まれ、絶体絶命の窮地に…。
敏腕医師と呼ばれた波多京哉だが、大病院を飛び出したいまは片田舎で小さな診療所を営んでいる。そこにひとりの少女が運び込まれた。難病を患う、その少女の名は矢野蛍。病ゆえの繊細な美しさは人を惹き付けるものがあった。京哉の献身的な治療に、心を閉ざしていた蛍も次第にうちとけていく。だが病状は少しずつ悪化の途をたどっていた。互いに惹かれ合う京哉と蛍をよそに、周囲は無情にもふたりを引き裂こうとする。京哉は蛍を手放すか決断を迫られるのだが…。
少年時代に受けた屈辱により、南部で人間として認められるには「土地と黒人と立派な家」を持たなければならないと思い知らされたサトペンは、その野望の達成に向けて邁進する。しかし最初の妻に黒人の血が混じっていることを知って捨てた報いにより、築き上げた家庭は内部から崩壊していく。小説表現の限界に挑みながら二十世紀文学の最先端を歩み続けたフォークナーの渾身の大作。
知人の華燭の典で、二十年ぶりに再会した実業家と、夫と死別して一人けなげに生きる女性。人生の道のなかばで、生涯に一度の至純の愛にめぐり逢った二人を描き、人の幸せとは?人を愛するよろこびとは?を問う香り高い長篇小説。作品解説のほか、雅びな恋愛小説を遺した中里恒子の作家案内と自筆年譜付き。
城田家にハンガリーからの留学生がやってきた。総勢十三人と犬一匹。ただでさえ騒動続きの大家族に、あらたな波瀾が巻きおこる。異文化へのとまどい、肉親ゆえの愛憎。泣き、笑い、時に激しく衝突しながら、家族一人ひとりは、それぞれの生の新しい手がかりを得る。そして別れー。人と人の絆とはなにかを問う長篇小説。
新設間もない秋田大学医学部に、挫折と不安を抱えながら集まった医学生たち、和丸、京子、雄二、修三の四人は、解剖に外来実習に、失恋に妊娠に患者の死に悩み、あたふたしながらも、自分の生き方を探っていく。そして、彼らの十五年後ー。自らの体験を振りかえりつつ、人生の実感を軽やかに爽やかに綴る永遠の青春小説。
『可愛いベイビー』が街に流れていた夏、結婚の約束をした女は、他の男と逃げてしまった。それから三十年を経て、突然現れた女。時を越え、忌まわしい秘密が明らかになってゆく…。戦後を生きた男たちの喪失の悲しみを、乾いた叙情で描き出した六篇。馴染み深いメロディにイメージを託した感動の作品集。
家族も友人も棄てて、親友が突然消息を絶った。彼から届いた10枚の葉書には、風景画のほか何も記されていない。この風景をたどれば、あいつの居場所がわかるかもしれない-そんな思いに駆られ北海道へ来た男の、風景を探す旅が始まった。著者が初めて挑む、吹きわたる風のような長編ミステリー。
沖縄で最高裁判事が殺され、調査官・真樹加奈子にスパイの密命が下った。判事は最高裁の内紛の犠牲者なのか。東京地検、法務省、内閣情報調査室、警察庁…あらゆる権力を巻きこみながら最高裁の陰謀は潜行していく。法曹生命を賭して真相をさぐる真樹は、思いもよらない巨大なたくらみに直面する。そしてさらなる驚愕の結末とは…。
アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し二十年以上もひっそり暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た真実とは…。史上初の第41回江戸川乱歩賞・第114回直木賞受賞作。