1998年7月発売
クレジットカード偽造、麻薬取引、密入国手引きなど、活動を拡げるアジアマフィアを摘発する端緒を、若手刑事川喜多良一がつかんだ。“春団治刑事長”岩切鍛治を尊敬する彼は、社会的影響の重大さを怖れる府警上層部をよそに単独捜査を開始した。職務遂行と在職死。警察小説最大のテーマに挑む本格推理長編。
故郷に戻った売れっ子ファッション・カメラマンに近づく魅力的な女たちが殺しを呼ぶ。全篇に流れるのは、サックス奏者が死の直前に悪女に捧げた「バッドガール・ブルース」。タフで愛すべき主人公の周りで次々に起こる殺人事件の犯人、ディープサウス一の悪の華は誰?ニューオリンズ・ミステリー傑作誕生。
プロデビューを目指す若き音楽家カップルの千秋と要之介。ある日、富豪の後添いとなった友人から、弟と先妻の息子が一緒に誘拐されたと相談を受ける。身代金の受け渡し場所は、どこにも逃げ場のない湘南の小島。にわか探偵と化した二人は犯人を追うが…。誘拐と密室の二重の謎に挑む、傑作青春ミステリー。
老母と暮していた兄嫁が急死。不測の事態にもめる親族。介護問題は親子の歴史、夫婦の過去をあぶり出す…。老母をひきうけた娘夫婦もすでに60代-老母の介護は自分たちの老後の不安とも重なる。介護者がいなくなったら?介護保険はどうなるのか?老母の現在から老いのプロセスを逆照射して自分の老後、“社会的介護”をともに考えるリアルな書下ろし小説。
謎の怪物フローリーモンスに導かれ、転送機に飛びこんだローダンたちは、いよいよガンヨの帰還を待ち望むガンヤス人世界へと到達した。だが、一行を迎えたのは武装した11人の老人たちだった!かれら、ガンヨ再臨を望んでいるはずのガンヤス指導者は、おのれの権力を護るため、こともあろうにガンヨを亡きものにせんと黒い陰謀をめぐらしていたのだった。期せずして故郷の招かれざる客となったオヴァロンの運命は…。
俵物問屋『万代屋』の押し込み探索に当たった鳥居耀蔵の家来・明智惣五郎は、十五人一家惨殺の現場を横目に、同店が唐物の抜け荷を扱っていたことを嗅ぎつける。下手人の追及とともに消えた荷の行方を追う明智は、背後に巨大な力が働いていることを垣間見る。幕府本丸目付である鳥居は、明智を薩摩へと奔らせ、裏探索を進める。やがて鳥居は、事実を明確化すべく画策を始めるが…。書下ろし痛快時代長篇。
元禄大飢饉により津軽藩は窮乏の危機に陥った。召放ちの立場に追い込まれようとしていた棟方長九郎は、勘定奉行・森岡主膳から、賄賂を出せば召放ちを免じると申し渡される。しかも賄賂とは長九郎の妻・松枝であった。妻と家のどちらをとるのか、苦悶する長九郎が選んだ道は…!?(「浮かぶ瀬もなし」)。表題作他、武家社会にあって、建前と本音の狭間で呻吟する人々の姿を描いた八篇を収録。文庫オリジナル。
グリム童話の主人公たちは、なぜ、いつも試されるのか?「愛」が永遠の生命に至るには、どんな犠牲が待ち受けているのか?「忠実なヨハネス」(KHM6)を読み解きながらヨーロッパ中世のヨハネ人気の秘密を探り、メルヘンにおける「試練」の意味を問う。
焦土と化した戦後ポーランドの混沌とした状況を四日間の出来事に凝縮して描く長篇小説。ヨーロッパ戦線が実質上終結していた1945年5月5日、ワルシャワ南部の地方都市で党幹部と誤認された労働者が反革命テロ団により射殺される事件がおこった。
その三日後の5月8日、テロ団の一員マーチェクは、党の大物シチューカの暗殺を決行するが、街頭で保安隊のパトロールに出会い、射殺された。この日は、ドイツ軍司令部代表が無条件降伏の正式文書に調印した日であった…。ワイダの同名の映画の原作。
ニューオリンズの豪華なホテルのベッドで、有名なテレビ伝道師が死体で発見された。頭や心臓などに銃弾が三発。容疑者の筆頭は、彼から糾弾されていた通販の下着会社のデザイナー兼社長であるクレア。担当のキャシディ地方検事補は初対面で彼女の気品ある容姿と神秘的な雰囲気にひかれてしまう。真犯人は伝道師の若き妻か息子か、それとも…。ラブ・サスペンスの女王の最高傑作『フレンチ・シルク』待望の文庫化。
「己はいまだに自分を凡人だと思う事は出来ぬ」と自分の天才を疑い得ない「神童」の独白、「甘美にして芳烈なる芸術」を発表するまでの陰欝な青春を描く「異端者の悲しみ」ほか、「The Affair of Two Watches」「詩人のわかれ」。天才の名を恣にした谷崎自身の影を色濃くうつした名作四篇を収める。
「さっき、棄てるっていったのは命のこと?-命の棄て場所を探してるってこと?」。友人を裏切り、人生を自堕落に過ごしている古宮の前に現れた女性・鈴子。彼女もまた、悲しい宿命を持った者だった。大正の東京を舞台とした、はかない男女の交歓を軸に描かれる表題作をはじめ、「能師の妻」「野辺の露」「花虐の賦」「未完の盛装」の全五篇を収録した傑作ミステリー集。
名探偵・浅見光彦が、兵庫県の城崎温泉を訪れたのは、母親雪江のお伴でだった。だが、浅見の行くところ、必ず事件あり。城崎の通称「幽霊ビル」で奇怪な事件が起こっていたのだ。以前、首吊り、服毒死と変死事件が続き、今度で三回目。興味をもった浅見は、『旅と歴史』の取材、母親のお守りをこなしながら、城崎、出石、豊岡…と事件の謎に挑んでいくのだった。
吉田松陰門下である高杉晋作は、諸外国からの圧迫を目のあたりにして、日本の危機を痛感する。そこで彼は、長州藩の海軍力増大を目指し、身分にかかわらない「有志」による奇兵隊を結成した。討幕派の中心となって奮闘する晋作だが、肺結核を患い、志半ばにして斃れる…。激動期、明治維新に尽くした救世主・高杉晋作の、波瀾の生涯を描く、傑作伝記小説。
「通信長は、どこに来ると思う?」「レイテです。まずレイテに間違いありません」山口多聞第二艦隊司令長官は満足そうにうなずいた。「私もそう思う。となると、問題はどこで待ち受けるかだな」大和作戦室内では緊迫したやりとりが続いている。負けることのできない決戦が近づきつつあった。艦上型に改良された爆撃機銀河を擁する第一機動艦隊も満を持して待機しているとの報告も受けた。山口長官は一人部屋を出ると、舷窓から星空を見上げた。(源田も本気だ。あとは角田の一航艦だな。今度は帰れん)生きて汚名を晒してきた男の最後の闘いが始まろうとしていた。
小悪魔な魅力でまわりを振り回す、入社二年目の日野郁也。郁也は最近、ハンサムだけど無口で怖そーな男・真田鷹彦が気になるのだが、真田は郁也の美貌にも見向きもしない。周囲の人間とちょっと違う真田に、郁也はますます興味が湧いてきて…。この正反対のふたりの距離はどうなるの。