1999年4月発売
鎌倉・稲村ガ崎に時間はながれる。クイちゃんと僕は今日も生きている。茶々丸といっしょに。猫と宇宙、便利屋の兄妹と自由律俳句のしあわせ。昔の写真をながめながら、うつらうつらと哲学する父子の語らいのなかで、ふと思うのだ。生は有限ではない、と。谷崎潤一郎賞受賞のロングセラー『季節の記憶』待望の姉妹篇。
舞台は第二次大戦下のイタリアの僧院。北アフリカの砂漠に不時着したパイロットが収容され、手当を受けている。「イギリス人の患者」としか身元を明かさない彼は、全身に火傷を負い、容貌も不明、記憶も喪失している。だが、瀕死の患者が若い看護婦に語り紡ぐ言葉は、この上なく深くミステリアスな愛の世界だ。美しい文章と濃密なストーリーで大きな話題を呼んだブッカー賞受賞作。
出版エージェントのアランは、ヨーロッパから帰国した父ニルスと数年ぶりに会った。ニルスは、アランと稀覯書愛好の友人に、パリのアメリカ人夫妻を描いた短編を読ませた。文体から著者を推定した二人は興奮した。入手経路は明かさずに「1922年パリのヘミングウェイ原稿盗難事件」を匂わせたニルスは、短編は全部で20編あると言う。ヘミングウェイ学者も巻きこむスリリングな長編。
デイヴ・デラノーは、5年の服役を経てマイアミ刑務所を出る当日、国外追放されたロシア人ゲルギエフから手紙を受け取った。そこに記されていた現金強奪計画を、デイヴは、その弁護士を通じ、マフィアの黒幕ヌーデリに持ちかける。大西洋を横断する豪華ヨット運搬船に乗り込み、資金洗浄すべく極秘で隠し運ばれる麻薬売上金を横取しようというのだ。海洋ピカレスク・ロマンの金字塔。
さざ波海岸のオシャレな海の家「マリンパレス」で、ひと夏、アルバイトをすることになった高校2年生・袋井雅人。音信不通になっていた幼なじみの麻丘千尋と、バイト中にバッタリ出会えたのはよかったが、隣にはしっかり彼氏が…。切ない想いをする雅人をよそに、なぜか雅人に憧れるロリ少女・早坂みく。彼女のために、雅人を一人前の男に教育しようと、山咲かんな、柏崎麗、杉田智恵理らが頭と身体を使って…ムフフフ。ところが、それを知った千尋の心に何かが芽生えた…。ゲームと文庫同時発売!文庫版オリジナル・ストーリー。
熱く奔放なる少年ー風祭龍紀。物静かで聡明なる少年ー風祭龍弥。双子として、同じ魂をもつが故に、互いを理解し、同じ魂をもつが故に、反発するふたり。それでも、ふたりは、ずっと、固い絆で結ばれてきたーその日までは。那智姉弟の思惑の中、それぞれの『大切なもの』を護るために、今、ふたりは対峙する。二組の転校生を巡って繰り返される因果と宿星を描く『東京魔人学園双龍変』シリーズの第参巻。
首無し死体となって発見された美人女子大生、菅野香織。彼女の死と殺害方法は、ミステリ小説の中で、何故か予告されていた。首は見つからぬままに、再び発見される女子大生の首無し死体。異常なる連続殺人の背後には、密室の中で首を切断して自殺した作家の存在があるという。事件と対峙するのは、笑わぬ男、安藤直樹。安藤が最後に微笑むとき、明らかになる「世界の謎」、そして驚愕の「切断の理由」。若き才能が、ミステリ・ルネッサンスの先を見つめ、自らの存在を賭けて挑む超絶のエンターテインメント。
「山手夫人」を巡って壮絶な諍いを起こした二人の男。一方の本橋が殺され、凶器のナイフには、相手の藤木と、謎の指紋が残されていた。藤木は、死者への憎しみを露わにするが、鉄壁のアリバイを主張する。ルポライター・浦上伸介と前野美保は、事件の発端と思われる、正体不明の「山手夫人」に迫る。真犯人は誰。
コンピュータネットワークが張りめぐらされた未来都市・東京。突如世界を襲ったコンピュータウィルス「XINN」により、世界中が混乱してから1週間後。その原因を捜査していた政府情報機関「帝謀」の御子神は、命令によりCIAから極秘情報を盗んだマシー・スペクターを暗殺する。ところが、翌日マシーは、ネットワークを通じて挑戦状を突きつけてきた…。ネット上に次々と浮かぶ謎…。マシーは本当に死んだのか?「XINN」の正体と目的は?シーズウェアの大ヒット作完全小説化。
「お前に弟か妹ができると言ったらどんなものかなあ」突然の親父の電話に僕はぶっ飛んだ。福岡に単身赴任している親父に、どうやら彼女ができたようだ。それも妊娠3か月!そこで、かれんと二人で福岡まで行くことに…。新幹線の旅は楽しかったけど、むこうで会った親父の彼女というのが…。シリーズ第4弾も、波乱含みー。
玩具修理者はなんでも直してくれる。 どんな複雑なものでも。たとえ死んだ猫だって。 壊れたものを全部ばらばらにして、奇妙な叫び声とともにあっという間に組み立ててしまう。 ある暑すぎる日、子供のわたしは過って弟を死なせてしまった。 親に知られずにどうにかしなくては。 わたしは弟を玩具修理者のところへ持っていくが……。 これは悪夢か現実か。 国内ホラー史に鮮烈な衝撃を与えた第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。 ■解説・井上雅彦
エリートたちが隠し続けた愛の秘密結社とは?死んだ医学部教授の妻と娘をめぐる異常な愛そして連続殺人。無気力でユーウツなジゴロ探偵・桂木圭太、事件ファイル。『ボディ・レンタル』の文芸賞作家による初の本格長篇ミステリー。
愛するおじいさんが残してくれたのは、一束の自伝『成功の秘密』だけだった…。ロバ1頭から始まる旅。この物語を読み進むうちに孫は学ぶ。「本当の富とは何なのか」「自分にとっての成功とは何なのか」。アメリカンドリームを実現した起業家が、メキシコを舞台にしてその成功哲学を寓話化。受難の時代を積極的に生きるためのもうひとつのバイブル。
藤木芳彦は、ある日、全く見覚えのない場所で目を覚ました。うっすらと霞む視界に映ったのは、雨に濡れ、一面鮮やかな深紅色に染まった異様な世界。奇岩に囲まれた峽谷だ。記憶喪失か、それとも……。
娘の千とせとともに、実家の本陣・汐見家で恋しい清次郎と結ばれる日を待つお美也だが、清次郎は藩主の口添えで他家の養子となり、二人の縁は遠のいていく。たとえ生涯結ばれることがなくても、清次郎を信じて生きていくと心に誓うお美也…。運命の荒波に抗い、幸福を模索する女の人生を細やかな筆致で描く会心作。
楚漢戦争とよばれた項羽と劉邦のたたかいは混乱をきわめ、臣下は主にそむき自らの利に奔ってなお不名誉とされなかった。貴族の血胤たる項羽にたいし平民出身の劉邦。しかし帝位は天が命ずるものである。本書は、覇をあらそうふたりの英傑のすがたを、友、臣、敵の眼に映ずるまま、詩情ゆたかに描いた名篇集。