1999年5月発売
火星で発見された地上絵に隠された“宇宙メッセージ”の解読が進む中、「木星太陽化計画」主任・本田は、太陽系開発機構から恐るべき報告を受けるー二年後、ブラックホールが太陽を直撃するおそれがあるというのだ!人類滅亡の危機を前に、木星を爆破させて、ブラックホールのコースを変えようという計画が浮上するのだが…。空前のスケールで描く宇宙SF巨篇完結。
両親を失った少年が復讐のために、日本最大の暴力団の組長を狙撃し逃走したことで、全国的なやくざ戦争が始まった。時を同じくして、新戦略専門家・宗像一佐は、レーダーから消えた、最先端の科学を結集した対潜哨戒機の調査を命じられ、事件の背後に、元同僚のゲーム理論家の影を見ていた。暴力団から逃げる少年と元同僚を追う男が交錯するところに見たものとは果たして…長篇本格アクションの金字塔。
逃げる猫と岳飛軍の遺児の運命は?胸のすく痛快武侠活劇の秀作。桂花かおる港市、臨安(杭州)の二貴公子。巨魁秦檜に挑む!臨安は刺激の強い街だった。白日賊といわれる詐欺や盗賊が常に横行して、扇情的な話題には事欠かなかった。「猫を、外へ出すんじゃないよ。絶対に、出すんじゃないよ」その老人は、毎朝家を出る時に、かならず奥に向かってそう念をおした。杭州が臨安と呼ばれるようになってしばらくたつが、住宅事情は悪くなるばかりで、その日暮しの庶民が城内に一軒家を持つなど、夢のまた夢。その老人も数階建ての家の一階の一部を借り、妻とふたりで暮していた。最初、同居人たちはその女を、老人の娘だと思っていた。それほど年齢が離れていたのだが、狭い家の内のこと、ふたりの会話は自然にはいってくる。女が北から避難してくる途中、家族と生き別れ、老人に救われて妻になったということまで、ひと月たたないうちに、その家の全員が知るようになった。
「私」は来週21歳。ウェイトレスとバーの歌手という、2つのアルバイトをしている。「年齢こそ三つちがうが双生児のような」兄がいて、兄には、美しい妻と幼い娘、そして50代の愛人がいる…。ある朝、逃げたやどかりを捜して隣の男の子がやって来たときから、奇妙な夏の日々が始まったー。私と兄をめぐって、現実と幻想が交錯、不思議な物語が紡がれて行く。シュールな切なさと、失われた幸福感に満ちた秀作。
古い祖母の家。草々の生い茂る庭。染め織りに心惹かれる四人の娘と不思議な人形にからまる縁。蛇の夢。竜女の面。クルドの地。呪いと祈り、憎悪と慈愛。リバーシブルの布-私たちの世界。何かを探すためでなく、ただ日常を生き抜くために…。
膨張した変死体は、皮膚が透け、鮮血の中に白骨が見え、どろどろの脳が眼窩から溶けだしていた。高熱を発し、おびただしい出血とともに死を招く魔の奇病とは何か?これは人為か偶然か?アメリカ帰りの若き研究者、高部涼子は真相に迫っていく。連続する変死と最新遺伝子学の闇に隠れた悪とは?新潮ミステリー倶楽部賞・島田荘司特別賞を受賞した現役医師作家による最先端書下ろし推理作品。
週刊誌のキャップをする兄から「私」に電話があった。上海系の麻薬組織を追跡取材しているが、編集部には中国語を話せる者がいないので手伝ってほしいと言う。早速私は大同というデスクの取材に同行することになった。関西の広域暴力団までが絡むからくりが見えてきた。そして、兄の首が切り落とされた!温厚な男の中に眠る戦士の目覚めを、練達の筆致で描き切る。
ーシルヴィアの悪夢は現実のものとなった。将来を約束していた恋人が溺死したのだ。そのときからだった。否定しようのない霊能力が発揮されはじめたのは…(「頭痛と悪夢」)。-’98年度MWA賞短編部門候補作「ダヴィデを探して」を含むスカダーもの3編のほか、軽妙なタッチで読者を楽しませてくれる泥棒ローデンバーものなど13編を収録。作品の幅の広さと、変化に富むシリーズものに冴えをみせるブロックの、上質なオリジナル短編集。
月夜の晩に火事がいて水もってこーい木兵衛さん金玉おとして土(ど)ろもぶれひろいに行くのは日曜日。この予告状から前代未聞の「おもしろこわい」事件が始まった。奇想天外な展開、明るくユーモラスな会話。そのなかで垣間みられる人間存在の深淵。
上院議員のもとから失踪した黒人掃除婦。彼女は議員の秘められたスキャンダルを撮影した写真を持ち去っていた。写真の奪回を依頼された探偵パトリックとアンジーは、写真を巡る陰謀に巻き込まれていく。
伝説的な麻薬ディーラー、ボビーZが死んだ。ボビーを麻薬王ドン・ウェルテロとの秘密取引の条件にするつもりだった麻薬取締局は困り果てる。そこへ服役中の泥棒ティムがボビーZに生き写しと判明し……。
邸の氷室は十八世紀に小丘を模して造られた。冷蔵庫の出現にともない保冷庫としての役目を終えていたそこで、不意に死骸が発見される。胴体は何ものかに食い荒らされた、無惨な死骸。はたしてこれは何者か?…ここにはすべてがある。悲嘆も歓喜も、幻滅も信義も。これはまさに人生そのもの、そしてミステリそのもの。ミステリ界に新女王の誕生を告げる、斬新なデビュー長編!CWA最優秀新人賞受賞作。
シャワーカーテンの隙間からのぞく仮面のような顔。ぎらつく二つの目。メアリは悲鳴をあげはじめた。が、その声は切り裂かれた…肉切り包丁の一閃で!雨の夜、片田舎のさびれたモーテルでなにが起きたのか?大金を拐帯し失踪した婚約者を探すサムが見いだした、恐るべき真実とは?ヒッチコックの映画であまりにも有名なサイコスリラーの原点、今ここに復活!新訳決定版。
文政七年夏、歌舞伎役者・鶴屋南北が、しのつく雨の中で見かけた浪人者がひとり。菊五郎にも劣らぬ男振りの翳に潜む不吉な匂いが、作者南北の興味に火をつけるー男と女の愛憎と、からみつく因縁が思わぬ結末へと転がりだす。鶴屋南北、一代の名作執筆の裏側を舞台に、芝居者、浪人者、謎めいた淪落の女、大店の娘ら江戸庶民の姿をいきいきと描いた時代小説の傑作。
三人姉妹、新しい神話の誕生。静謐な秋の湖にとどろく雷鳴。魂の成熟と再生、思寵の美しさ!男は水際の砂場に立っていた。風はないのに水際にはひっそりと漣が寄せている。異常なほど透明な水。だが湖の表面は両側の山陰部分だけを除いて、一面赤っぽい黄色に、ほとんど金色に染まっている。その光のきらめきの中に、女は後姿だけ見せていた。肩の広い長身の後姿が、影絵のように水から浮き出している。女がいまここに連れてきてくれたことよりも、前もって話さなかったことに、そしていまも黙って離れていることに、男は女の配慮を、彼女もこの世のものならぬこの光景を大切に思っていることを感じた。魂が不意に真空に晒される思いだ。知覚だけが異様に冴えて、感情の領域より一段下、普段は静まり返っている体の芯に近い暗い領域がひとりでに疼いて、自然に体が内側から開いてくる。
ヴァルダは家柄重視の結婚を強要され継父と口論の末、自立心を示そうと秘かに家を出る決心をする。毎年訪れる顔見知りのジプシーに頼み馬車の一隊に加えてもらおうと高価なカメラを携えて屋敷を出た。実はヴァルダには写真の心得があり将来個展を開けるほどの写真を撮ることが夢だったのだ。キャンプ地であるカマルグに立ち寄った時、この土地に惹かれ、皆と離れた。そして、危険も顧ず窪地に入りこみレンズをのぞいているうち荒馬に乗った男性に蹴ちらされてしまう。奇襲を受けたような出会いだった。