1999年5月発売
江戸・深川の町で、人知れずもめ事を闇に葬る男たち。その“始末人”の一人が全裸で殺された。裏稼業の覇権を狙う男たちと繰り拡げられる凄絶な闘い。謎の一味の正体は何か。渋沢念流の達人・蓮見宗二郎の刃が妖しくきらめき、人斬り忠左の「追切りの太刀」と火花を散らす。痛快剣豪ミステリ。
雪に囲まれた廃墟の塔で密室殺人が発生した。現場には塔へ向かう足跡が一筋だけ。殺されたのは発見者の一人、祐今の父だった。かつて同じ密室状態のこの塔で祐今の母が殺され、容疑者として逃亡中だった。事件が解決せぬままに呪われた塔では三度目の殺人が。新本格ミステリ第二世代の旗手が密室を変えた。
武器はニセ1万円札。復讐に挑む男の情熱。 友人のために始めた偽札づくり。涙と笑い、友情と闘いを描く傑作。 ヤクザの追跡を辛うじて逃れた道郎は、名前を変え復讐に挑む。だがその矛先は、さらなる強大な敵へと向かい、より完璧な1万円札に執念の炎を燃やす。コンピュータ社会の裏をつき、偽札造りに立ち向かう男たちの友情と闘いを、ユーモアあふれる筆緻で描いた傑作長編。予想もできない結末に思わず息をのむ!!
タケル族との交戦を終え、『マルコ・ポーロ』は故郷銀河への帰途についた。戦乱にまきこまれた大陽系の現状が気になり、テラナーらの心ははやる。だが帰還途上、四十万もの謎の宇宙航行物体群が忽然と出現、エネルギー・インパルスらしきものを『マルコ・ポーロ』に浴びせると、乗組員に異変が生じた。精神退行をきたし、艦内装備を片端から破壊しはじめたのだ…ローダンの新しい闘いのエピソードがここに幕を開ける。
第二次大戦前夜、スエズ運河爆破を目論むヒトラーの元に、シバの神殿が発見されたとの報がもたらされた。同じころ、失踪した夫を捜しているイギリス人女性の依頼を受け、アメリカ人考古学者ギャヴィンもまた、ローマ時代の古文書を手掛かりに幻の神殿を目指していた。だが、彼の行く手を阻むのは、砂漠の苛酷な自然環境だけではなかった…ナチスの恐るべき陰謀逆巻く南アラビアの熱砂に展開する、灼熱の冒険スリラー。
南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への侵攻を開始した未知の異星体「ジャム」。地球防衛機構を設立した人類は、超空間通路の彼方に存在するフェアリイ星に、実戦組織「FAF」を派遣。その特殊戦第五飛行戦隊に所属する深井零中尉もまた、戦術戦闘電子偵察機「雪風」とともに、ジャムとの熾烈な戦闘の日々をおくっていた。やがてFAFは、膠着した戦況を打開するため、新型無人戦闘機の導入を決定するが、その矢先、作戦行動中に被弾した雪風は、まるでジャムとの戦いに人間は必要ないと判断したかのように、パイロットの零を機外へと射出、自己のデータを無人機へと転送した。-それから三カ月。昏睡状態の零を残して出撃した無人機・雪風は、みずからの意志により味方前線基地への攻撃を開始する。ジャムはそこにいる、という謎めいたメッセージとともに…。はたして、雪風の真意とは?未知の存在に対峙する人間と機械の関係を極限まで追究し、星雲賞に輝いた前作『戦闘妖精・雪風』から十五年、神林長平が満を持して放つSFファン待望のシリーズ第二弾。
レストランチェーン・ニコライの社長、市川俊夫が突然謎の脅迫電話を受けたのは、愛人、森田佳子と情事の最中だった。二十五年前、市川は長崎の鶴島炭坑で博奕打ちの堀切勇次と娼婦の井上清子の二人を殺害し、重要参考人として勾留された。が、証拠不十分のために不起訴となり、事件はすでに時効になっていた。松浦と名乗る脅迫相手は、人殺しの確証があるとほのめかし、市川の心胆を寒からしめた…。
尼寺の離れに独り暮しのお源は、若い女高利貸し。情なしお源だの、夜叉のお源だのと悪名高い。面長の顔に白粉っけもないが、スラリとした姿。見る目のある人に言わせれば、すこぶるいい女らしいのだが、小気味のいい、情容赦のない取り立てで、江戸の町にその名をとどろかせている。そんな非情なはずのお源が、隠れて庶民たちの暮しを助け、彼らが巻き込まれる難事件を解決していく。時代推理の醍醐味。
南アルプスで男女の死体が発見されたが、遺体は死後十日間で白骨化していた。同じ頃、環境庁鳥獣保護課の沖田のもとに中部山岳一帯における鳥獣の異常繁殖を告げる調査報告が相次いだ。沖田は理学博士・右川を訪ね、百二十年に一度というクマザサの結実が、それを餌とする鼠の大量繁殖をもたらしているとの指摘を受ける。関係官庁は対策要請にも耳を貸さず、ついに大惨事が発生する。壮大な長篇サスペンス。
一流商社の燃料部に勤務するOLの森高美加に、人事部の小野寺という女性から電話があった。午後六時に有楽町のイタリア料理店で待ち合わせた美加に小野寺の持ち出した話は、彼女にアルバイトをしないかということだった。それも、いきなり横書きで森美子と書いてみてという。実は、これが優良企業に勤めるOLを巻き込んだ詐欺の始まりだった(表題作)。裏経済傑作短篇集、文庫オリジナル。
南極横断の冒険に失敗して失意の底にあったアメリカ人飛行士オーエン・ハートは、1938年、ナチスドイツに雇われ、再び南極探検へと出発した。しかし航海中、ノルウェーの船と戦闘状態になり、破損して南極の小さな火山島にたどり着く。そこには、苦悶に顔をゆがめた死体の山があった。何か新種の病原体らしい。ナチスの高官ユルゲン・ドレクスラーは、それを生物兵器に利用しようと考える。
イタリアのバイオリン職人ニコロ・ブソッティによって命を与えられ、四世紀にわたりオーストリア、イギリス、中国、カナダと五つの国を旅した伝説の“レッド・バイオリン”。官能的で悲愴なまでに美しいその音色は、多くの人を魅了し幸福の絶頂へと導くとともに、いつしか破滅へと誘ってきた…。永遠を司るがごとき悪魔的な力の源は?明かされる衝撃の事実とは?一本のバイオリンが綴る愛と運命の物語。日本版オリジナル・ノベライゼーション。
広告代理店営業課長の小倉茂郎は、寝たきりの妻を献身的に看病する良き夫でもあった。仕事上のトラブルで休職処分を受けた夜、自宅から出火、妻が死体で発見され、警察は小倉を殺人で逮捕した。小倉を上司として男性として慕う南条菜津江は無実を信じ、弁護士を依頼した。起訴された小倉は法廷で無罪を主張、激しい法廷闘争が始まった。迫真の法廷ミステリー。
渋江抽斎(1805-58)は弘前の医官で考証学者であった。「武鑑」収集の途上で抽斎の名に遭遇し、心を惹かれた鴎外は、その事跡から交友関係、趣味、性格、家庭生活、子孫、親戚にいたるまでを克明に調べ、生きいきと描きだす。抽斎への熱い思いを淡々と記す鴎外の文章は見事というほかない。鴎外史伝ものの代表作。改版。
無職の法学士斎藤と英子の贅沢な道行、ひと夏を共にした玉置は斎藤から英子を奪う「熱風に吹かれて」。自身の性の女性化を自覚しつつ女の奴隷となって破滅してゆく幸吉「捨てられる迄」。“天性の麗質”を楯に放蕩三昧、女から女へぬくぬくと生きるK「美男」。自信と誇りに輝いていた若き谷崎の面影が彷彿する作品三篇。
落ちぶれた奇術師・楓七郎は、かつての仲間から仕事の依頼を受けた。ショウボート・ウコン号でのバラエティショウ出演ー早速、船へと赴いた彼を待っていたのは、何とも奇妙な連続殺人だった。被害者たちはみな、上から読んでも下から読んでも同じに読める“回文名”を持つ者ばかりのこの事件に隠された真相とは?構成から展開まで、凝りに凝った趣向で彩られた、異色のミステリー長篇。