1999年5月発売
ニューヨークのシチリア移民、フランク・バタリア。若き日にボクサーへの夢を断たれた彼は、タフガイを装おうと、マフィアの階段を駆け上がってゆく。長男バディがその浅薄な教育方針の犠牲となった後、華奢で気弱な次男ニッキーが期待を一身に集める。だが彼は、父と兄の恐ろしい秘密を知らずにいた…。“ほんものの男”にこだわる父と子の葛藤と悲劇に全米が唸った処女長編。
酷寒のシベリアの町ノヴィ・ウレンゴイは、外国企業が支配しマフィアが暗躍する無法地帯だ。すさみきったこの町で、アメリカ国籍の会社重役が射殺された。くすぶり続ける正義感を持てあます中年刑事ヴォロンツィエフ、愛娘を麻薬に奪われたゴロフ捜査官らは、はるかヴェトナム戦争に遡る大規模な陰謀を掘り起すことになった。記録的な雪嵐の中、凄絶なサバイバル・ゲームが始まった。
天衣無縫の隠れ蓑を持つ“疑われざる者”の正体は?無数の崇拝者を持つ元舞台監督のグランディスン。彼は秘やかだが恐るべき魔力で誰をも虜にしてしまう。だがこの男こそ、奸智にたけた冷酷きわまりない殺人鬼なのだ。男の邪悪な正体を知る者は二人だけだった。グランディスンに恋人を殺された青年フランシスと、青年に同情する少女と…復讐を誓うフランシスは、グランディスンの家に身を寄せる娘が行方不明と知り、娘の婚約者を装って殺人の証拠を集める。だが、当の娘は生きており、さらに殺人鬼は動揺したフランシスの命を狙ってきた!緊迫した追跡劇を繊細な筆致で綴る、サスペンス小説。
あれほど巧妙に組み立てられた計画が、それが最後にドア一つ-錆びた真鍮のノブが付いているペンキ塗りの木製ドア-のために粉砕されようとは。事件後すでに幾月も過ぎ、その間、無数の手がそのノブに触れた。ドアそのものも塗り直してあった。それなのに無心のそのドアが謎を解き、悪魔のような狡猾な殺人犯を破滅させたのだった…。ベル家の裏にある未開懇地を、青年を乗せた葦毛の馬が静かに進んでいく。と、だしぬけに、馬は猛然とあとずさりし何かに怯えている様子。脚もとの下水管には、数日前から行方不明になっていた看護婦セアラの死体が…。アメリカのクリスティーと評されるラインハートが、スイートでロマンチックな雰囲気のなかに神秘的なサスペンスを色濃く漂わせた堂々たる本格探偵小説。
「大きくなったら女優になるの!」ライス・ウェイヴラルのその夢を、彼の可愛いペニスが打ち砕いた。それでも、俳優、ジゴロとなったライスは、おしろいとコカインのパウダーの中を、エキセントリックな父親の魔の手を逃れつつ、謎の美女ピーチ、クレイジー・ギャングらと共に駆けめぐる。『アナザー・カントリー』の元祖英国美青年俳優ルパート・エヴァレット初の半自叙伝的小説。
私立霞ヶ浦高校に入学し、早々に女子野球部を設立した野々原千晶と牧野泉だが、部員集めにひと苦労。どうにか集めたメンバーは個性派ぞろいで、まとめるのも超タ〜イヘン。学校一の暴れん坊・滝沢馨、あぶない天才科学少女・浅井真弓、超リッチお嬢様・中山玲子、アイドル志望・長嶋茂子、剣道日本一・須永知美…。でも、野球ができるだけで千晶と泉は幸せだ。さあ、女子高校野球全国大会優勝目指して、がんばるぞー。
高校生の未来時生は、ネット犯罪に対処するハッカー「スライダー」の電子戦に偶然関わってしまう。電子戦でハッカーの才能を発揮する時生。その日を境にスライダーとなった時生はハッキングプログラム「DAISENRYAKU」を武器に犯罪者に挑む。鮮やかに犯罪を解決していく時生だが、彼を取り巻く事件の裏には冷ややかに自分を見つめる黒幕が存在していた。時生の封印された記憶、そして自分と一連の事件との関わり。自身の過去を取り戻すため、時生の戦いが今、始まる。
「人生の大きさは悔しさの大きさで計るんだ」。拍手は遠い。喝采とも無縁だ。めざすは密やかな達成感。克明な観察メモから連続空き巣事件の真相に迫る守衛の奮戦をたどる表題作ほか、代議士のお抱え運転手、サラ金の取り立て屋など、日陰にありながら矜持を保ち続ける男たちの、敗れざる物語です。深い余韻をご堪能ください。
「家を建てる」が口癖だった父は、理想の家族を夢みて、本当に家を建ててしまう。しかし、娘たちも、十六年前に家を出た妻もその家には寄りつかなかった。そこで、父はホームレスの一家を家に招き、一緒に暮らし始めるのだが…。第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞受賞の表題作のほか、不倫の顛末を通して家族の不在をコミカルに描いた「もやし」を収録。
人間の焼け焦げた骨と肉の塊が英陽女子大助教授日下部のマンションに投げ込まれた。一方、日下部宅の近所の神社で白木の箱に入れられた新生児の死体が発見された。はたして二つの事件に接点はあるのか?日下部と女性刑事水野のコンビが、おぞましき事件の真相に挑む。
しっかり者の新地の芸者蝶子は若旦那柳吉と駆落して所帯を持ち、甲斐性なしの夫を支えて奮闘するー大阪の庶民の人情を自在な語り口で描いて新進作家の地位を確立した「夫婦善哉」のほか、「放浪」「勧善懲悪」「六白金星」「アド・バルーン」、評論「可能性の文学」。作家生活僅か七年、裏町人生のニュアンスに富んだ諸相を書き続けて急逝した織田作之助の代表作六篇を収録。
十四世紀イタリアのフィレンツェでペストが猛威をふるった時、七人の淑女と三人の紳士が森の館に避難し、毎日交代で面白い物語を話して聞かせることになった。-イタリア・ルネサンス期の巨人が残した世界文学史上不滅の古典に新たな生命を吹きこむ苦心の訳業。本巻には前半の第五日第七話までを収録(第三日、第四日は省略)。
40代の主婦の座にある西川深雪が、中年の魅力あふれる野上謙三の中に見いだしたのは、夫に対するそれとは異なったもう一つの純粋な愛であり憧れであり心の支えであったのだが、神はそれを黙認するだろうか。感動のロマン。
大学に進学した“ぼく”は、何かを求めてバトミントン部へ。先輩達との確執の中、仲間達に支えられ、レギュラーの座をかけた試合に臨む。情感あふれる青春ストーリー。
皇女となる者、齢十六にして受け継ぐべしー神世の時代より連綿と続く高貴なる一族、フィリス公爵家。フィリシア公国を治める公爵の居城では、古からの口伝に従い、今日十六歳の誕生日を迎えた美貌の第一公女ルカシオンに全ての秘密を知らしめる謎の儀式『継承式』が執り行われようとしていた。継承の間で祝詞を唱え準備を進める后妃と大婆。その時、余人の立ち入ることを許さぬこの神聖な空間に、不遜な笑みを浮んべた軍服の男が足を踏み入れてきた。
一千二百六十万円。友人の雅人がヤクザの街金にはめられて作った借金を返すため、大胆な偽札造りを二人で実行しようとする道郎・22歳。パソコンや機械に詳しい彼ならではのアイデアで、大金入手まであと一歩と迫ったが…。日本推理作家協会賞と山本周五郎賞をW受賞した、涙と笑いの傑作長編サスペンス。