1999年6月発売
北九州市内の繊維メーカーに勤務するやり手の営業課長が誘拐された。家族からの知らせを受けた警察は極秘裏に捜査体制を敷くが、犯人はそれをあざ笑うかのように逆探知されない方法で連絡を寄越し、身の代金五千万円を会社に出させるよう指示。さらに人質の息子を運搬役に指名し市内を転々とひきずり回したあげく、関門海峡を挾んで奇想天外な方法で受け取りを謀る。だが、犯人の真の狙いは、五千万円というはしたガネではなかった!!期待の大型新人が、現代社会の裏を鋭くえぐった渾身の書き下ろし。
アメリカ中西部はミネソタ州スタンダード・スプリングズ。人口:4317。このスモール・タウンで最大のイベント、年に一度の“連続殺人記念祭”の季節がやってきた!毎年、町で起こる殺人事件はたったの一件。どういうわけか犯人が捕まることなく20年も続いている。大した危機感もなく、平和がしみついている人々は、恐怖を知りたい、味わいたい。ぞっとするような叫び声をあげる少女を“絶叫クィーン”の座に据え、祭りのパレードは最高潮に達する。デビイは、そんな異様な町に暮らす女子高生。今年がクィーンになるラストチャンスなのに、「恐怖が感じられない」と困り果てる日々。…ところが本番目前に、最大のライバルが戦線離脱!?コンテストの結果は?保安官は今年こそ犯人逮捕なるか?『葬儀よ、永久につづけ』の著者が再び放つ、奇想天外な田舎風アメリカン・コメディ。
絞殺された人妻の喉元にくっきりとついた五本の指の跡。犯人とおぼしき夫を追うコロンボ警部を惑わす、完璧なアリバイと動機なき殺人。“魔法の杖”(クラブ)はどこへ消えたのか?ゴルフ狂の大物フィクサーとの禁じられた賭けに端を発した殺人契約…すべてはあの“忌わしき一打”(ショット)から始まった-。王者(チャンピオン)の誇りを賭けた死のマッチプレイ。
新潟県と山形県の境界にある飯豊連峰の山荘で二人の男が向かいあって談笑していた。一人は、山荘の所有者である伝説的存在の天才相場師・山口省三。もう一人は、東大法学部の気鋭の助教授・中河英輔。この中河は、昭和陸軍最高の戦略家といわれる石原莞爾のただ一人の「孫」であった。二人の間の話題は、戦前の日本を破局に追い込んだ最大の原因をめぐってだった…。平成13年12月8日、特別国会が召集された国会議事堂に40名の武装集団が突入、たちまちにして議場の制圧に成功した。それは中河英輔をリーダーとする「クーデター」であり、体制変革をめざす「維新政権」の誕生だった。壮大なスケールで新世紀における日本の在り方を問う「世界最終戦争」新シリーズ開幕。
「猿渡」と「伯爵」のコンビが飄々として行くところ、日常世界は薄暮の幻想地獄に変貌する。鬼才津原泰水、注目の処女短篇集。怪奇と幻想の「幽明志怪」シリーズ・書き下ろし新作を含む七編を収録。
花も鳥も風も月もー森羅万象が、お慕いしてやまぬ女院のお姿。なればこそ北面の勤めも捨て、浮島の俗世を出離した。笑む花を、歌う鳥を、物ぐるおしさもろともに、ひしと心に抱かんがために…。高貴なる世界に吹きかよう乱気流のさなか、権能・武力の現実とせめぎ合う“美”に身を置き通した行動の歌人。流麗雄偉なその生涯を、多彩な音色で唱いあげる交響絵巻。谷崎潤一郎賞受賞。
鍵のかかった閉鎖空間で起きた殺人、不可能状況下に横たわる死体、忽然と姿を消す犯人と凶器、二転三転するアクロバティックな論理。なぜ犯人は密室を作らねばならなかったのか?現代日本を代表する七人のミステリ作家が「密室」をテーマに競作!ボーナストラックとして、密室への想いを綴るエッセイも書き下ろしで収録。ファン必携、究極の「密室」がここに誕生。
最後のスコットランド王を自称する荒唐無稽な独裁者、ウガンダのアミン大統領。政府に派遣された若きイギリス人医師は、アミンの侍医となり奇妙な運命に翻弄される。恋あり、内戦あり、暗殺指令あり。グレアム・グリーン、ジョーゼフ・コンラッドら先駆者たちの伝統を見事に受け継いだ、卓抜な文明論、スリリングなストーリー性。そして、絶望的な逃走、戦闘場面の圧倒的臨場感。六年をかけた周到緻密な取材に基づきつつ、史実さえたじろぐようなマジカルな想像力も縦横に駆使された、読書界の話題をさらう会心作。ウィットブレッド賞処女長篇小説賞受賞、サマセット・モーム賞受賞、王立文学協会ウィニフレッド・ホルトビー記念賞受賞、ベティー・トラスク賞受賞。
映画脚本の基礎を確立した、ハリウッドの大物ゴードン・キャントウェルの邸宅で、月例パーティが催された。しかしその席上、脚本家志望の青年レイザー・ジャファーリが突然死してしまう。さっそく警察が呼ばれたが、彼がゲイであり、HIVに感染していたことが明らかになると、単純な病死として片づけようとした。たまたまパーティに出席していた元新聞記者ベンジャミン・ジャスティスは、その死因に疑問を抱き、調査を始めるのだが、その過程で殺人の疑いが…前作『夜の片隅で』で絶賛された甘くせつない世界が甦る、異色ハードボイルド。
プラハの街をぶらつき、観光客の娘を騙して弄ぶのを無上の楽しみとするアメリカ人青年ニックス。彼はある夜モニカという女に出会い、その魅力に取り憑かれた。ジプシーとチェコ王族の血を引きモニカへの想いはとめどなく膨れあがる。彼はモニカを執拗につけ回し、彼女の兄と称する男を殺してさらにある卑劣極まりない犯罪を企てた…“運命の女”のために転落の一途をたどる男を非情なタッチで描く、サスペンスの新収穫。
元捜査官ケイトのもとに、先住民協会の理事をしている祖母エカテリーナが訪れた。土地の開発をめぐって理事会が開かれるアンカレッジへ同行してほしいと頼みにきたのだ。祖母によれば、開発に反対する理事の一人が最近急死したうえに、他の理事たちも様子がおかしいという。だが、二人が到着して間もなく、反対派の理事がまた一人謎の死を遂げ…ケイトのねばり強い調査が、開発がらみの黒い陰謀を暴くシリーズ注目作。
夏のはじめから、すべてに意味がなくなるまで、ぼくたちは開いたままの大きな窓の前で絡みあった。自分ではどうすることもできず、ぼくは妄想の世界、あの怪物の住む世界に引きこまれていく…少年と少女のひと夏の恋を、エロティシズムと恐怖を交えて綴った表題作をはじめ、大人の仲間入りを果たすために10歳の妹を誘惑する14歳の兄の姿を描いた出世作「自家調達」など、英国文壇の旗手が、時には残酷に、時には優雅に紡ぎだした八篇を収録。官能、恐怖、風刺、叙情…ブッカー賞作家の独自の世界が堪能できるデビュー作品集。サマセット・モーム賞受賞作。
栗村夏樹は都内の短大の二年生で剣道三段の腕前。彼女の母・幹子が突然襲撃された。関係者から手渡された母の所持品のビデオテープには、厳寒の海に浮かぶ“透明な密室”の内部で惨殺される男性の映像が収められていた。事件を追う夏樹の前に、十八年前亡くなった父の死の謎、さらには超能力者の指導者を擁する擬似宗教団体が立ちはだかる。そしてついに、リシが予言したとおり、絶対に実行不可能なはずの、奇怪な殺人事件が…。トリックメーカーの著者が満を持し、正面から読者に挑戦する前人未到の大トリック!“夏樹”シリーズ三部作完結編。