1999年8月発売
アリスがまだ魔女や妖精を信じる幼い少女だったころ、親友のエルシーが突然姿を消した。彼女の行方も誘拐犯の正体も分からぬまま、事件は迷宮入りとなる。それから十年、封じられていた魔法が今、アリスを事件の真相へと導くのだった。運命的な暗合の連鎖が不思議な世界を作り出す、傑作「不思議の国の悪意」他七編を収録。かのエラリー・クイーンも絶賛した、才気溢れる短編集。
彼女は脱ぎ捨てられた服のように横たわっていた。ライラ・ブレヒトー往年のハリウッド女優を母親にもち、みずからは高級フィットネス・クラブを経営する美貌の主。現場に到着したデッカーは、レイプ及び盗難の被害者となったライラの纏う尋常ならぬ空気に当惑しながら捜査を開始するが…。スリルに富む展開と、異常な家族を中心に織りなされる謎とで、読者を魅了する第五弾。
2034年、地球の夜空から星々が消えた。正体不明の暗黒の球体が太陽系を包みこんだのだ。世界を恐慌が襲った。この球体について様々な仮説が乱れ飛ぶが、決着のつかないまま、33年が過ぎた…。ある日、元警察官ニックは、病院から消えた若い女性の捜索依頼を受ける。だがそれが、人類を震撼させる量子論的真実につながろうとは!ナノテクと量子論が織りなす、戦慄のハードSF。
発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす一家がいる。1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦がいる。18歳で結婚したが、夫にも義母にもまともに扱ってもらえない若妻がいる…。3組の家族、ひとりひとりの理想が、現実に浸食される。だが、どんなにそれが重くとも、目をそらさずに生きる、僕たちの物語ー。「カラス」「扉を開けて」「陽だまりの猫」。
鰹、白魚、鮭、柿、桜…。江戸の四季を彩る「初もの」がからんだ謎また謎。本所深川一帯をあずかる「回向院の旦那」こと岡っ引きの茂七が、子分の糸吉や権三らと難事件の数々に挑む。夜っぴて屋台を開いている正体不明の稲荷寿司屋の親父、霊力をもつという「拝み屋」の少年など、一癖二癖ある脇役たちも縦横無尽に神出鬼没。人情と季節感にあふれた時代ミステリー・ワールドへご招待!
祖母は言った。「ほんとにまあ、どうして作家なんぞになったもんだか」それは、ピギー・スニードがいたからだ。豚を飼い、豚と暮らしたこの男が、豚ともども焼け死んだとき、少年アーヴィングの口をついて出た嘘話。作家の仕事は、ピギーに火をつけ、それから救おうとすることなのだ。何度も何度も。いつまでも。創作の秘密を明かす表題作とディケンズへのオマージュに傑作短篇をサンドウィッチ。ただ一冊の短篇&エッセイ集。
幼い頃、父と母は離婚した。母は新しい恋人と海外へ。父もやがて再婚し…。娘をかえりみない子供のような親。抵抗のすべを知らない子供。世界を静かに覆しつつある新しい家族像を、自らの体験をもとに、柔らかな声で描いた、21世紀文学の幕開けを予感させる長篇。ドイツ語圏の文学賞を独占した23歳の新人の、繊細、果敢な話題作。
“悪く生きる”より“よく死にたい”。“モンゴル人がモンゴルで生活することが、なぜ許されないの”。希望だけを心の支えに、生き抜いてきた日々-。『草原の記』のヒロインが自ら語る波瀾に満ちた半生。
印刷屋や書籍販売店が立ち並ぶグラブ街で、出版業者のクラブとその家族らが惨殺されるという事件が起きた。クラブ家の屋根裏部屋から、斧を手にした錯乱状態の男が発見された。その男はクレイトンという詩人でクラブの店から作品集を出版したが、印刷職人によれば二人の間で支払いを巡る争いがあったという。クレイトンは治安判事サー・ジョン・フィールディングの元に引きだされるが、男は殺人が起きた時は別の人格が出現していたと主張し…十八世紀のロンドンを舞台に、盲目の名判事と助手の少年が冷酷きわまりない殺人事件の真相に挑む。
楽しいはずの独立記念祭をひかえて、アニーの心は重かった。元軍人のハッチが、図書館の理事として、記念祭の行事に横槍を入れてきたからだ。彼の差別主義的な言動には、もはや我慢がならない。ところがそのハッチが、記念祭の花火の最中に衆人環視の中で突然射殺された!容疑を受けた黒人青年の無実を信じ、アニーとマックスは、真犯人探しに乗り出す。
初の短篇作品である「強襲」、長篇も含めてグランド・ナショナルをあつかった唯一の作品である「敗者ばかりの日」、めずらしくも婦人誌むけに書かれた「春の憂鬱」などの傑作に、本書のために書き下ろされた五篇の作品を加えた全十三篇の輝きが、ディック・フランシスの魅力のすべてを照らし出す。