1999年発売
「人生の大きさは悔しさの大きさで計るんだ」。拍手は遠い。喝采とも無縁だ。めざすは密やかな達成感。克明な観察メモから連続空き巣事件の真相に迫る守衛の奮戦をたどる表題作ほか、代議士のお抱え運転手、サラ金の取り立て屋など、日陰にありながら矜持を保ち続ける男たちの、敗れざる物語です。深い余韻をご堪能ください。
「家を建てる」が口癖だった父は、理想の家族を夢みて、本当に家を建ててしまう。しかし、娘たちも、十六年前に家を出た妻もその家には寄りつかなかった。そこで、父はホームレスの一家を家に招き、一緒に暮らし始めるのだが…。第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞受賞の表題作のほか、不倫の顛末を通して家族の不在をコミカルに描いた「もやし」を収録。
人間の焼け焦げた骨と肉の塊が英陽女子大助教授日下部のマンションに投げ込まれた。一方、日下部宅の近所の神社で白木の箱に入れられた新生児の死体が発見された。はたして二つの事件に接点はあるのか?日下部と女性刑事水野のコンビが、おぞましき事件の真相に挑む。
しっかり者の新地の芸者蝶子は若旦那柳吉と駆落して所帯を持ち、甲斐性なしの夫を支えて奮闘するー大阪の庶民の人情を自在な語り口で描いて新進作家の地位を確立した「夫婦善哉」のほか、「放浪」「勧善懲悪」「六白金星」「アド・バルーン」、評論「可能性の文学」。作家生活僅か七年、裏町人生のニュアンスに富んだ諸相を書き続けて急逝した織田作之助の代表作六篇を収録。
14世紀イタリアのフィレンツェでペストが猛威をふるった時、7人の淑女と3人の紳士が森の館に避難し、毎日交代で面白い物語を話して聞かせることになった。──イタリア・ルネサンス期の巨人が残した世界文学史上不滅の古典に新たな生命を吹きこむ苦心の訳業。本巻には前半の第5日第7話までを収録(第3日、第4日は省略)。
ロシアの百科全書派チュルコフによる女性版ピカレスク・ロマン「可愛い料理女」、 夭折の詩人スシコフの「ロシアのウエルテル」、 文豪カラムジンの名作「哀れなリーザ」等、全5篇。 ロシア心理小説の源流を訪ねる懇切な解題を付す。 Пригожая повариха, или Похождение развратной женщины (Мнхаил Дмитриевич Чулков) Колин и Лиза () Российский Вертер (Михаил Васильевич Сушков) Остров Боригольм (Николай Михайлович Карамзин) Бедная Лиза (Николай Михайлович Карамзин) 可愛い料理女 または放蕩女の遍歴譚・・・・・・ミハイル・チュルコフ コーリンとリーザ 物語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・作者不詳 ロシアのウェルテル 半ば真実の物語・・・・・・・ミハイル・スシコフ ボルンホルム島・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ニコライ・カラムジン 哀れなリーザ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ニコライ・カラムジン 訳註 解題 あとがき
40代の主婦の座にある西川深雪が、中年の魅力あふれる野上謙三の中に見いだしたのは、夫に対するそれとは異なったもう一つの純粋な愛であり憧れであり心の支えであったのだが、神はそれを黙認するだろうか。感動のロマン。
大学に進学した“ぼく”は、何かを求めてバトミントン部へ。先輩達との確執の中、仲間達に支えられ、レギュラーの座をかけた試合に臨む。情感あふれる青春ストーリー。
皇女となる者、齢十六にして受け継ぐべしー神世の時代より連綿と続く高貴なる一族、フィリス公爵家。フィリシア公国を治める公爵の居城では、古からの口伝に従い、今日十六歳の誕生日を迎えた美貌の第一公女ルカシオンに全ての秘密を知らしめる謎の儀式『継承式』が執り行われようとしていた。継承の間で祝詞を唱え準備を進める后妃と大婆。その時、余人の立ち入ることを許さぬこの神聖な空間に、不遜な笑みを浮んべた軍服の男が足を踏み入れてきた。
偽札をつくりあげた者が勝利者となる!傑作長編 1260万円。友人の雅人がヤクザの街金にはめられて作った借金を返すため、大胆な偽札作りを2人で実行しようとする道郎・22歳。パソコンや機械に詳しい彼ならではのアイデアで、大金入手まであと一歩と迫ったが…。日本推理作家協会賞と山本周五郎賞をW受賞した、涙と笑いの傑作長編サスペンス!
江戸・深川の町で、人知れずもめ事を闇に葬る男たち。その“始末人”の一人が全裸で殺された。裏稼業の覇権を狙う男たちと繰り拡げられる凄絶な闘い。謎の一味の正体は何か。渋沢念流の達人・蓮見宗二郎の刃が妖しくきらめき、人斬り忠左の「追切りの太刀」と火花を散らす。痛快剣豪ミステリ。
雪に囲まれた廃墟の塔で密室殺人が発生した。現場には塔へ向かう足跡が一筋だけ。殺されたのは発見者の一人、祐今の父だった。かつて同じ密室状態のこの塔で祐今の母が殺され、容疑者として逃亡中だった。事件が解決せぬままに呪われた塔では三度目の殺人が。新本格ミステリ第二世代の旗手が密室を変えた。
武器はニセ1万円札。復讐に挑む男の情熱。 友人のために始めた偽札づくり。涙と笑い、友情と闘いを描く傑作。 ヤクザの追跡を辛うじて逃れた道郎は、名前を変え復讐に挑む。だがその矛先は、さらなる強大な敵へと向かい、より完璧な1万円札に執念の炎を燃やす。コンピュータ社会の裏をつき、偽札造りに立ち向かう男たちの友情と闘いを、ユーモアあふれる筆緻で描いた傑作長編。予想もできない結末に思わず息をのむ!!
タケル族との交戦を終え、『マルコ・ポーロ』は故郷銀河への帰途についた。戦乱にまきこまれた大陽系の現状が気になり、テラナーらの心ははやる。だが帰還途上、四十万もの謎の宇宙航行物体群が忽然と出現、エネルギー・インパルスらしきものを『マルコ・ポーロ』に浴びせると、乗組員に異変が生じた。精神退行をきたし、艦内装備を片端から破壊しはじめたのだ…ローダンの新しい闘いのエピソードがここに幕を開ける。
第二次大戦前夜、スエズ運河爆破を目論むヒトラーの元に、シバの神殿が発見されたとの報がもたらされた。同じころ、失踪した夫を捜しているイギリス人女性の依頼を受け、アメリカ人考古学者ギャヴィンもまた、ローマ時代の古文書を手掛かりに幻の神殿を目指していた。だが、彼の行く手を阻むのは、砂漠の苛酷な自然環境だけではなかった…ナチスの恐るべき陰謀逆巻く南アラビアの熱砂に展開する、灼熱の冒険スリラー。
南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への侵攻を開始した未知の異星体「ジャム」。地球防衛機構を設立した人類は、超空間通路の彼方に存在するフェアリイ星に、実戦組織「FAF」を派遣。その特殊戦第五飛行戦隊に所属する深井零中尉もまた、戦術戦闘電子偵察機「雪風」とともに、ジャムとの熾烈な戦闘の日々をおくっていた。やがてFAFは、膠着した戦況を打開するため、新型無人戦闘機の導入を決定するが、その矢先、作戦行動中に被弾した雪風は、まるでジャムとの戦いに人間は必要ないと判断したかのように、パイロットの零を機外へと射出、自己のデータを無人機へと転送した。-それから三カ月。昏睡状態の零を残して出撃した無人機・雪風は、みずからの意志により味方前線基地への攻撃を開始する。ジャムはそこにいる、という謎めいたメッセージとともに…。はたして、雪風の真意とは?未知の存在に対峙する人間と機械の関係を極限まで追究し、星雲賞に輝いた前作『戦闘妖精・雪風』から十五年、神林長平が満を持して放つSFファン待望のシリーズ第二弾。