1999年発売
さわりたい…あたしは溶けだすように泣いた。この本を見て、何か少しでも感じるなら、読んでみてください。あなたがいくつであっても男でも女でも、きっとあなたのことが書いてあるから。
竜飛の海に浮かぶ死体…。京都の出版社の取材記者片山由美は、カメラマンの野木と青森県の竜飛岬に行き、民宿に泊まった。老夫婦や兄妹、不倫関係など様々な五組のカップルと一人旅の女性が同宿。翌朝、海岸で女性の溺死体が発見された。頭にある打撲傷から殺人の疑いが。
車の販売会社に勤める凡庸な兄ヒューと宇宙物理学者の妹ドルシー。物語はこの二人の人生行路を逆行し、やがてドルシーの誕生の瞬間に至るまでの出来事を主軸として展開される。二人の周辺に出没するエキセントリックな人間たちが演じる奇妙な日常、さりげなくスケッチされる現代アメリカ社会の諸相、折々に引用されるボードレール、ダンテ、ニーチェ、オッペンハイマー。著者は、理論物理学、哲学、宗教、文学、芸術にかんする驚くべき知識を駆使しつつ、さまざまな人物たちが放つ縦横無尽の「光」を淡々と叙述する。著者の創造する時空の淵源に接した読者は、そこに広大な宇宙空間と自己自身の内なる「光」を再発見することだろう。各章ごとに短篇小説的な完結性がみられる作品であるが、全体を通読することによって壮大な心象風景が知らぬ間に形成される濃厚な小説である。USAトゥデイ、ワシントンポスト、デトロイトプレスなど、全米のメディアが絶賛した異色の長編小説。
夢を追うのか、現実に身をゆだねるのか。生き残るためにはどちらかを選択しなくてはならないのか。時代は高度成長期、舞台は唯一衰退していく映画産業界。映画に情熱を賭けつつも、会社という組織に生きた男の夢と挫折。そして未来には何があるのか。バブル崩壊後の時代を先取りした、著者会心の大作、700枚。
過疎化に悩む町が仕掛けた捨て身の町おこし運動。それに青春を賭けるプータローの若者。行き詰まった産業廃棄物業者、そして、新興のカルト教団。ある土地をめぐってこの四者が偶然に出会った時、物語が動きだした-。第3回新潮ミステリー倶楽部賞受賞。
鮮血にまみれ、白骨があらわになった死体!自らの肉体を切り刻む女!魔の奇病が突如出現し、日本はパニックに陥る。蔓延する戦慄の病魔とその謎に、気鋭の植物学者、五十嵐雄次が迫る。ボルネオ奥地の伝説と世界の先端医学が交錯した時…次々と起きる奇怪な死の裏側に、とてつもない巨悪が蠢いていた。推理界の巨匠、島田荘司が絶賛した、現役医師が著した第三回新潮ミステリー倶楽部・島田荘司特別賞受賞作品。
始まりは深夜の電話だった-。七年前に別れた息子が誘拐された。事件の解決を待たずに別れた妻も失踪した。ありきたりの推理を嘲笑う展開。男の胸を騒がす血と絆のドラマ。第三回新潮ミステリー倶楽部賞、高見浩特別賞受賞作。
鬼(ゴースト)。おれが還暦になったとき見えはじめた奇妙な寄生生物だ。そいつが、目黒川に浮いた首と両手のない屍体を見つけた-警官上がりの血が騒ぐ私立探偵・前田太一は、相棒のゴーストとともに危険に満ちた事件に飛び込んだ!被害者は晴友銀行の総務部長代理・高井。犯人は中国マフィアの二人組とすぐに判明した。ところが、この事件の背後に、晴友銀行の巨額の裏金を巡る恐るべき陰謀が隠されていた。続出する犠牲者。太一は潜入捜査に挑むが…!?ときにユーモラスに、ときにスリリングに、練達の筆が冴える!シルバー・エイジのタフ・ガイの活躍を、痛快に描く長編ミステリー。
躁鬱病で入院中の女性ドンナが五階から飛び降り、昏睡状態に陥った。彼女の家族は病院側を過失で訴え、辣腕でならすシェリダンが弁護人を引き受けた。だが、背後に有力者を擁する大病院は裁判を阻止しようと策を弄し、技術も設備も劣る病院へドンナを追いやった。怒りに震えるシェリダンは、微かだが彼女が生きる意志を示しはじめたことに勇気づけられ、闘い抜くことを誓うが…『評決』の著者が放つ、正義と信念の大作。
状況はシェリダンに不利だった。ドンナの父親の虐待が明かされ、病院側はこれが彼女の自殺未遂の原因だと主張し、さらに彼女のカルテが忽然と消えたのだ。一方、ある病院関係者の恋人が、かつて不審死を遂げていたことが判明。病院側との攻防が激化する中、シェリダンは何者かに銃撃された。やがて、彼がつかんだ衝撃の事実は、この闘いを根底から揺るがすことに…正義を求め、苛酷な現実に挑む弁護士の姿を描く感動作。
親友を助けるため潜入したこの国は、私がかつて秘密活動をしていた危険な国だ。案の定、不穏な出来事が続くなか、親友は、没落した富豪の孫と名乗る娘の秘宝探しに、私を引き入れる。だが、その矢先、何者かが私を襲ってきた!秘宝を狙う者が他にもいるのか、それとも私の過去に何か関係が?海洋生物学者ドク・フォードが挑む、謎とロマン満載のサスペンス。
この顔には見覚えがあるわ…アンティーク家具の修復業を営むキャットは、なじみの骨董店の店先でホームレスの若い女性を見かけて驚いた。その女性は亡き娘の親友ジェニーで、しかも彼女はすべての記憶を失っていた。なぜ、新進女優として活躍中だった彼女がここに?同情したキャットは、ジェニーを救うため身辺調査に乗りだすが…行動力あふれる老婦人、“ワイルド・キャット”再登場。注目の痛快シリーズ第二弾。