1999年発売
状況はシェリダンに不利だった。ドンナの父親の虐待が明かされ、病院側はこれが彼女の自殺未遂の原因だと主張し、さらに彼女のカルテが忽然と消えたのだ。一方、ある病院関係者の恋人が、かつて不審死を遂げていたことが判明。病院側との攻防が激化する中、シェリダンは何者かに銃撃された。やがて、彼がつかんだ衝撃の事実は、この闘いを根底から揺るがすことに…正義を求め、苛酷な現実に挑む弁護士の姿を描く感動作。
親友を助けるため潜入したこの国は、私がかつて秘密活動をしていた危険な国だ。案の定、不穏な出来事が続くなか、親友は、没落した富豪の孫と名乗る娘の秘宝探しに、私を引き入れる。だが、その矢先、何者かが私を襲ってきた!秘宝を狙う者が他にもいるのか、それとも私の過去に何か関係が?海洋生物学者ドク・フォードが挑む、謎とロマン満載のサスペンス。
この顔には見覚えがあるわ…アンティーク家具の修復業を営むキャットは、なじみの骨董店の店先でホームレスの若い女性を見かけて驚いた。その女性は亡き娘の親友ジェニーで、しかも彼女はすべての記憶を失っていた。なぜ、新進女優として活躍中だった彼女がここに?同情したキャットは、ジェニーを救うため身辺調査に乗りだすが…行動力あふれる老婦人、“ワイルド・キャット”再登場。注目の痛快シリーズ第二弾。
後悔なんかしてないわ。夫を殺した日から、わたしの本当の人生が始まったのだから。小さな町で暮らすボニータ・フェイは横暴な夫に耐えかね、山頂で夫を射殺してしまった。事件の後、彼女は長年の憧れのパリを訪れ、そこでハンサムな青年と出会って友情を深めていく。が、やがて穏やかな日々に暗い影を落とす事件が…ロマンティックで少しせつない、自己再生を賭けた一人の女性の物語。
大天変と呼ばれる気候の大変動により極地の氷が融け、結果、水没地域のアジア・アフリカからの大量の移民が溢れ返ることになったロンドン。街全体が異国情緒に満ち、ロンドンの裏世界はさまざまな人種によって構成され、毎日騒然とした雰囲気に包まれている。しかも、「ドール」と呼ばれる人工的に合成された肉体に電子チップを埋めこんだ一種のロボットの人権を主張するグループが爆弾テロを繰り返していた。逮捕歴のある遺伝子ハッカーのアレックスは、戦闘用に改造したドールを闘わせる闘技場建設を試みるギャングと、そのギャングに私憤を抱く刑事の間に立っていたが、やがていやおうもなく争いに巻き込まれていった。そして、争いの渦中、現れた謎の美少女ミレーナはアレックスに手伝わせて盗んできたドールのチップを入れ替え、知性を持った「フェアリイ」を造りあげ、フェアリイとともに姿を消してしまった。アレックスはミレーナの後を追ったが…。アーサー・C・クラーク賞/ジョン・W・キャンベル記念賞を受賞した、イギリスSF界最高の有望作家が描く、ナノテクSFの傑作。
十二月三日に新宿公園、一月十三日に代々木公園、そして今日、一月二十三日に大久保公園で女性の絞殺死体が発見された。手口はすべて同じで抵抗した跡はなく、媾合しながらロープで首を締められ、また、現場の情況から、別の場所で殺された後そこに捨てられて、わざわざ局部をむき出しにされているのだ。被害者は、OLの山内幸代、女子大生の武田弥生、そして今日は、予備校で英語を教える佐々原明子だった。ムラマサこと警視庁歌舞伎町分室の村木正警視の必死の捜査が始った…!圧倒的迫力で描く迫真の書下し長篇。
『ショッピングマート赤羽店』の通用口に横づけされた現金輸送車が襲われた。手口は、非常にあらっぽい。イラン人らしき男がナイフでガードマンを脅し、コロンビア人と共に自動拳銃をぶっぱなし、中国人らしき二人連れが、現金輸送車を乗っ取るという荒技だ。同様な事件が相次ぎ、億単位の現金が強奪されているのだ。鰐沢賢は桜田物産本社の地下秘密射撃訓練場で一日百発のターゲットペーパーへの撃ち込みを終えた。鰐沢は警察庁長官直属の特別捜査班『隼』のメンバーだった。超法規の私刑執行部隊だ。書下し新シリーズ。
戦闘で負傷したリンドハースト伯爵はチェルトナムで療養中ジゼルダを看護婦として雇い入れる。彼女は痩せこけていたが、誇り高く淑女であることがうかがえた。が、数日後、弟の手術代のために愛人候補の男性を探してほしいと途方もない依頼を伯爵にもちかけた。折しも、従弟の結婚を阻止しようと思案していた伯爵は、ジゼルダの難問を同時に解決すべく、一計を巡らせる。ジゼルダを裕福な貴婦人に仕立て従弟に求婚させようとする筋書きで大芝居が演じられることになったが…。
首吊り女が産んだ奇跡の子。齢千年の巨樹はその未来を見通した。親も家も名も持たぬ「おまえ」を待つ、腐臭を放つ二十一世紀の日本。「おまえ」は盗みをくりかえし、白毛の老猿が語る謎の詩集に導かれ、個の自由を求めて流れゆく。だが、猛火と爆発を逃れつづけた「おまえ」の姿が捉えられる瞬間はついにやってきたー。強烈なスリルと暴力的な興奮が横溢する新世紀への黙示録。
自由を蹂躪され、窮地に立たされた「おまえ」を救ったのは大地震だった。そして、その地異は首都を壊滅させ、民衆の理性を奪い去った。独裁者はこの機に乗じた。愚民はわれ先に従った。「おまえ」は詩集を味読し、ナイフを振り下ろした。酒浸りの日々から復活すると、運命を海に託した。そして波間で裏切られた。憤怒を楽しむ「おまえ」は流れゆく者の使命を悟り、真の敵へと向かう。
夫婦と、息子ひとりの3人家族。どこにでもある、新興住宅地の平穏で幸福な一家だった。妻が妊娠したことで、新たなる喜びに一家は包まれる…はずだった。しかし、ある朝、夫が巻き込まれた小さな事件が思いもよらぬ展開を見せ、彼らの運命を大きく狂わせていくー。次第に追い詰められ、崩壊に向かう家族に、果して救いはあるのか?現代の不安を鋭くえぐった心理サスペンス。
偶然通りかかった、阿久津との思い出の場所。そこで私たちは出会い、恋に落ちたのだー。18年前に事故死した男との愛の日々を記憶によみがえらせたその日の晩、突然かかってきた電話の主は…。不思議で怖く、どこか懐かしい「異界」への扉を開く幻想小説8編。
他民族の支配を受けたことがないウアオラニー族。彼らはアマゾンで最も勇敢な部族と自負している。その領地内に石油が出た。エクアドル政府の協力を取りつけて油田開発を進める合衆国の石油会社。押し寄せる宣教団、環境保護活動家。勇士たちは槍と吹き矢を頼りに、自分たちの文化と熱帯雨林を守る闘いに立ち上がった。
本年度直木賞を受賞した作家、宮部みゆき。そして中村隆資、鳴海丈、火坂雅志、安部龍太郎、宮本昌孝、東郷隆の時代小説の若き旗手7人が、一振りの剣の繰り広げる数奇なドラマを時代ごとに書き継ぐリレー小説。 鎌倉末期、備後長船で生まれた剛刀「のきばしら」。室町時代、足利将軍惨殺という嘉吉の乱を引き起こし、切腹を迫られた茶人・千利休の手により石灯籠を斬る。やがて江戸時代、転生した娘とともに質屋夫婦の命を救う。幕末には“人斬り”岡田以蔵の手に渡り、維新動乱のなかで女剣士の仇を討ち、ついに、終戦前夜の皇居に現れる……。 リレー小説は、最近ではあまり見かけないが、作家たちの卓抜たる個性をぶつけ合い、壮大なドラマを生み出すために、意欲的にこの形式に挑戦。鎌倉時代の刀の誕生から昭和の動乱期まで日本の歴史を縦断し、物語のバリエーションに富んだ作品に完成した。時代小説ファンならずとも垂涎の一冊である。 解説・縄田一男。
流行作家・穂高誠が、新進の女流詩人・神林美和子との結婚式当日に毒殺された。美和子の兄・貴弘、穂高のマネージャー・駿河直之、穂高の担当編集者・雪笹香織。彼らは皆、事件後つぶやく。「私が彼を殺した」と…。容疑者は三人。そして犯人は一人。卓絶のテクニックで繰り出される真相を、はたしてあなたは看破できるか。
天空を目指して屹立する尖塔から女は墜落していった-『機械の森』という小説のゲーム化のために集まったグループ八人が、湖畔の古い洋館で過ごした問題の一夜。妊娠していた被害者を突き落としたのは誰か。容赦なく裏切られながら、強烈極まりないラストまで一直線。その衝撃音が世界と読者の魂を揺るがす。
売れない役者の武田勇司は、久々の撮影中突然落雷を受け、忍者が死闘を繰りひろげる異世界へと飛ばされた。そこで女忍者の乙女と知り合った勇司は、「武田」という姓のため武田信玄の縁者と誤解され、反徳川忍者の頭目とされてしまう。お館様と呼ばれ、くの一達からHの洗礼を浴びる勇司だが、現代へ残した恋人・五月が忘れられない。一方で、乙女の気持ちも気にかかる。また、反徳川潰しの忍者集団「五人組」が攻撃を仕掛けてくる。恋と戦闘の間で、勇司は現代へ戻れるか…。