1999年発売
本日天気晴朗ナレドモ浪高シー明治三十八年五月二十七日早朝、日本海の濛気の中にロシア帝国の威信をかけたバルチック大艦隊がついにその姿を現わした。国家の命運を背負って戦艦三笠を先頭に迎撃に向かう連合艦隊。大海戦の火蓋が今切られようとしている。感動の完結篇。巻末に「あとがき集」他を収む。
ある日、突然浦添のスナックに豚が闖入してきた。豚がもたらした厄を落とすため正吉(しょうきち)と三人の女たちは真謝島に向かう。ひたむきに生き、ときにユーモラスな沖縄の人々の素朴な生活を生き生きと描き、選考委員の圧倒的支持を得て第114回芥川賞を受賞した表題作。ほか一篇「背中の夾竹桃」を併録。
わたしたちの故郷って、どこだろう?全ての女性たちに、社会の矛盾の中でもがき苦しむ子供たちに、彼らとともに変革の時代を生きようと志す男性たちにも…深い絶望を超えた光を投げかけた干刈あがたの小説世界!新たな希望への旅路に、ようこそ。
ジェシカ・オパール・クレヴァリングは、かつてはクレヴァリング家の所有だったオークランド館の主ベンと親しくなり、ベンの息子ジョスとの結婚を強いられる。彼は孔雀とあだ名される誇り高い男だった。ベンは鉱山での事故がもとで、鉱山の株式と「グリーンフラッシュ」と呼ばれる最高のオパールを二人に遺して世を去った。名目だけと約束して結婚した二人はオーストラリアへ渡る。シドニーで孔雀荘と呼ばれる屋敷の女主人となったジェシカは、会社にとけこみ、オパールの知識も深めていくものの、一方いつかジョスに殺されるのではないかと不安につきまとわれるのだった…。
主エル・ランティと大天使たちが誓った真実のユートピアとは?新興宗教の誕生から救済までを高橋信次師の正法に学び、師の教えを広めるべく本を出版してきた著者が、初めて挑戦した異色小説。
平和の波は、社会へ世界へ。東西の対立に終止符を打つ、人間の融合の哲理は仏法に。伸一の会長就任1周年で200万世帯を達成。学会は“日本の柱”“平和の希望”の存在に。
街のチンピラが京劇場で殺された。捜査にあたった北京市公安局・王警部補は古美術品の盗掘、密輸出と殺人事件との関連を追うが…。チャイニーズ・マフィアから警察幹部、さらには共産党へと真相に迫る一人の刑事が職務の狭間で懊悩する姿を描く。天安門事件を遠景に中国の闇社会が舞台のクライム・ノベル。
妻を事故で失い札幌を離れ森林作業員となった男が、自衛隊演習場と隣接する夜明け前の森で救出した女性は、謎を残し病院から逃亡する。女性を捜し真実を突き止めることに己れの再起をかけ調査を始めた直後、落とし穴などの罠が仲間を襲う…。北海道を舞台に独り闘う男の葛藤と勇姿を描くサスペンス大作。
「お返事がないので、またお手紙を差し上げます」熱狂的な女性ファンから次々届くファンレター、断っても断ってもしつこく講演を依頼してくる図書館司書…謎の覆面作家・西村香をめぐって起こる怪事件・珍事件の数々。はたして作家は、男なのか、女なのか?年齢は?全編、手紙形式でつづる絶妙の連作推理集。
ペトログラード、ヘルシンキ、ハルビン、上海、そして日本へ。母と妹の手を引いて、苛酷な運命にひとり立ち向かったエリアナ・パブロバ。彼女には二つの武器があった。その類稀れな美貌と、驚嘆すべきバレエの才能。彼女はこの武器で危機を脱し、日本バレエ界を導く星となった。しかし-忍び寄る軍靴の足音と共に思いもよらぬ運命が彼女を待ちうけていた…。わが国バレエ界の礎となったロシア貴族、その美しき流転の軌跡。
彼らは最初に白人の娘を撃つ。残りの女たちについては、ゆっくり片付ければいい。オクラホマの片田舎の黒人だけが住むルービィの町外れの修道院に流れついてきた女たちはさまざまな話を紡ぎ出す。男と女、親と子、富める者と貧しき者、肌の色の濃い者と薄い者、さまざまな相克が現れ出てくる。ノーベル文学賞受賞後5年の歳月を経て発表された現代アメリカ文学の頂点。
平凡な会社員だったぼくは、タイラーという奇妙な男と出会う。意気投合したぼくらは過激な悪戯を繰り返し、ストリートファイトの愛好会ファイト・クラブを創設したのをきっかけに果てしなくエスカレートする暴力の渦に巻き込まれていった…。期待の新鋭が現代のヴァイオレンスを描く衝撃のデビュー作。
旧軽井沢の別荘で、資産家・西城豊士教授夫妻が死体となって発見された。場所は自宅敷地内の地下貯蔵庫。鉄扉を内側から南京錠で固定した六畳ほどの室内、夫妻は折り重なるように倒れていた。嘔吐物が散らばり一目で毒死と分かる。完全なる密室。遺書はなく、床には「WS」の文字が。心中か、あるいは殺人か。別荘で一夜を明かしたパーティ招待客は十三人。だが殺害動機も決め手がない…。本格推理の傑作。
“天誅邪淫”-新宿のホテル街で惨殺された娼婦の身体の上には、半紙に墨で書かれた文字が残されていた。科学捜査研究所心理課の捜査官・加山知子は犯人像を追い始めるが、嘲笑うかのように、同様の文字を残し、女子中学生、バーのママが次々と殺害されてしまう。しかも手足切断、肝臓摘出と猟奇性は増していく。残された文字と、犯行の残虐性に何らかの意味を見た知子は、事件の核心に迫り始めるが…。
カリフォルニアのバークレーヒルズ病院に勤務するレイ・デュープレーは、黒人で女性の産婦人科医。3カ月後には部長への昇進が控えている。ところが突然、愛すべき産婦人科が病院の収益減から閉鎖を迫られる。さらに妊婦たちの出産に急に異常事態が続発する。医療ミス、それとも事故?はたまたもっと悪質で意図的なものなのか。レイは調査に乗り出すがー。現役の黒人女医が描く傑作医学ミステリー。
2カ月間で8人の出産に異常が生じていた。それらはいずれも、バースセンターから救急でバークレーヒルズ病院へ送られてきた妊婦のケースだったことがわかる。レイは、何者かが人為的に事故を起こしているという確信を抱く。産婦人科の閉鎖を望む心臓外科医のマーコウ、麻酔医サム、かつての恋人ボーーだれもが怪しい。疑心暗鬼はつのるばかり。そしてついに、思いがけない手口と陰謀が明らかになる。
21世紀初頭に起こった核戦争の影響により出現した「妖獣」。人を媒介にして増殖する最悪の敵は人類の復興を阻んでいた。荒廃した地上で唯一国家に成長した「ミレニアム」。そこには、妖獣に対抗すべく遺伝子操作により創り出された少女戦士の特殊部隊「アウローラ」があった。ミレニアムにたどり着き、アウローラを率いることになった沖原だが、彼の理想は過酷な戦いの中では通用しなかった。そして、アウローラ隊員エリカには「再調整」の決定が下された。それは、彼女の全人格がリセットされるということ。アウローラ隊員の中に動揺が広がり沖原に決断が迫られる。時を同じくして、妖獣の大規模攻撃が予想されていた。