1999年発売
ペトログラード、ヘルシンキ、ハルビン、上海、そして日本へ。母と妹の手を引いて、苛酷な運命にひとり立ち向かったエリアナ・パブロバ。彼女には二つの武器があった。その類稀れな美貌と、驚嘆すべきバレエの才能。彼女はこの武器で危機を脱し、日本バレエ界を導く星となった。しかし-忍び寄る軍靴の足音と共に思いもよらぬ運命が彼女を待ちうけていた…。わが国バレエ界の礎となったロシア貴族、その美しき流転の軌跡。
彼らは最初に白人の娘を撃つ。残りの女たちについては、ゆっくり片付ければいい。オクラホマの片田舎の黒人だけが住むルービィの町外れの修道院に流れついてきた女たちはさまざまな話を紡ぎ出す。男と女、親と子、富める者と貧しき者、肌の色の濃い者と薄い者、さまざまな相克が現れ出てくる。ノーベル文学賞受賞後5年の歳月を経て発表された現代アメリカ文学の頂点。
平凡な会社員だったぼくは、タイラーという奇妙な男と出会う。意気投合したぼくらは過激な悪戯を繰り返し、ストリートファイトの愛好会ファイト・クラブを創設したのをきっかけに果てしなくエスカレートする暴力の渦に巻き込まれていった…。期待の新鋭が現代のヴァイオレンスを描く衝撃のデビュー作。
旧軽井沢の別荘で、資産家・西城豊士教授夫妻が死体となって発見された。場所は自宅敷地内の地下貯蔵庫。鉄扉を内側から南京錠で固定した六畳ほどの室内、夫妻は折り重なるように倒れていた。嘔吐物が散らばり一目で毒死と分かる。完全なる密室。遺書はなく、床には「WS」の文字が。心中か、あるいは殺人か。別荘で一夜を明かしたパーティ招待客は十三人。だが殺害動機も決め手がない…。本格推理の傑作。
“天誅邪淫”-新宿のホテル街で惨殺された娼婦の身体の上には、半紙に墨で書かれた文字が残されていた。科学捜査研究所心理課の捜査官・加山知子は犯人像を追い始めるが、嘲笑うかのように、同様の文字を残し、女子中学生、バーのママが次々と殺害されてしまう。しかも手足切断、肝臓摘出と猟奇性は増していく。残された文字と、犯行の残虐性に何らかの意味を見た知子は、事件の核心に迫り始めるが…。
カリフォルニアのバークレーヒルズ病院に勤務するレイ・デュープレーは、黒人で女性の産婦人科医。3カ月後には部長への昇進が控えている。ところが突然、愛すべき産婦人科が病院の収益減から閉鎖を迫られる。さらに妊婦たちの出産に急に異常事態が続発する。医療ミス、それとも事故?はたまたもっと悪質で意図的なものなのか。レイは調査に乗り出すがー。現役の黒人女医が描く傑作医学ミステリー。
2カ月間で8人の出産に異常が生じていた。それらはいずれも、バースセンターから救急でバークレーヒルズ病院へ送られてきた妊婦のケースだったことがわかる。レイは、何者かが人為的に事故を起こしているという確信を抱く。産婦人科の閉鎖を望む心臓外科医のマーコウ、麻酔医サム、かつての恋人ボーーだれもが怪しい。疑心暗鬼はつのるばかり。そしてついに、思いがけない手口と陰謀が明らかになる。
21世紀初頭に起こった核戦争の影響により出現した「妖獣」。人を媒介にして増殖する最悪の敵は人類の復興を阻んでいた。荒廃した地上で唯一国家に成長した「ミレニアム」。そこには、妖獣に対抗すべく遺伝子操作により創り出された少女戦士の特殊部隊「アウローラ」があった。ミレニアムにたどり着き、アウローラを率いることになった沖原だが、彼の理想は過酷な戦いの中では通用しなかった。そして、アウローラ隊員エリカには「再調整」の決定が下された。それは、彼女の全人格がリセットされるということ。アウローラ隊員の中に動揺が広がり沖原に決断が迫られる。時を同じくして、妖獣の大規模攻撃が予想されていた。
望月祐太郎は超貧乏・倒産寸前の特撮プロの二代目若社長兼キグルミ役者。転職したいと切望しつつ奮闘の毎日だ。そんな祐太郎の前に現れたのが、バイト志望の南条千春。可愛い・素直・働き者と三拍子そろった千春は、あっという間に撮影所のアイドルに。だけどなぜか祐太郎にだけは態度が違って冷たいし、おまけに千春の身の上には何だか秘密の匂いが…?「お前はいったい誰なんだ!?」甘くせつないラブ・コメディ。
北アルプス西穂高で警察官が連続して転落死した。共に山に関してはベテランだった。その偶然に不審を感じた捜査一課の白鳥刑事は死んだ警察官の山仲間だった白バイ隊の月村を強引に巻き込んで捜査を始めた。目撃者もいない冬山の事件だけに捜査は難航したが、やがてひとりのアルピニストが線上に浮かんだ。だが、男には鉄壁のアリバイが…。本格山岳ミステリー。
白百合銀行の成城支店に赴任してきた鈴木昇は四十二歳。仕事の実績をかわれて渉外担当代理に抜擢されたが、彼は美女には目がない好色漢。仕事のついでに顧客の女性を次々と口説き落とし、手慣れたテクニックと自慢のモノで美女たちを絶頂へと導く。ある日、そんな鈴木の前に、ポスター撮影でアイドルタレントの西宮あかりが現れて…。書下ろしサクセスロマン。
プロ棋士への夢を目前に謎の死を遂げた姉。事件の真相を探るために弘子は姉と同じ道を志し、昇段をかけたリーグ戦に挑むが…。弘子との対局直前に天才小学生・千堂将が会場のトイレで殺される。現場には彼が得意とする戦法を記した棋譜がばらまかれていた。犯人の目的は?二つの事件のつながりは?姉と深い仲にあった男、K・Fとは?混乱する弘子。そして新たな犠牲者が同じ手口で…。
その町には幸と不幸の見えない境界線がひかれている。事業拡大を目論んだ鉄工所主・川谷を襲うウラ目ウラ目の不幸の連続。町のチンピラの和也が乗りこんだのは、終わりのない落ちるばかりのジェットコースター。「損する側のままで終わりたくない!」追いつめられた男たちが出遭い、1本の導火線に火が点いた。
「毀すこと、それがばさら」-六波羅探題を攻め滅ぼした足利高氏(尊氏)と、政事を自らつかさどる後醍醐帝との暗闘が風雲急を告げる中、「ばさら大名」佐々木道誉は数々の狼藉を働きながら、時代を、そして尊氏の心中を読んでいた。帝が二人立つ混迷の世で、尊氏の天下獲りを支え、しかし決して同心を口にしなかった道誉が、毀そうとしたものとは…。渾身の歴史巨篇。
室町幕府の権力を二分する、足利尊氏・高師直派と尊氏の実弟直義派との抗争は、もはや避けられない情勢となった。両派と南朝を睨みながら、利害を計算し離合集散する武将たち。熾烈極まる骨肉の争いに、将軍尊氏はなぜ佐々木道誉を必要としたのか。そして、道誉は人間尊氏に何を見ていたのか。「ばさら太平記」堂々の完結。
「金と銀」「AとBの話」「友田と松永の話」を収める。天才は金、能才は銀、芸術的素質において金の青野と銀の大川。Aは善の、Bは悪の文学者。また友田と松永は西洋と東洋との対立として描かれ、常に芸術の高みをめざす人間の、内に省みて葛藤、照応する二重性に焦点をあてた作品三篇。