2000年4月発売
デッカードは愕然とした。外星から地球へ逃亡してきたレプリカントは六人いて、五人は死んだが、あと一人がまだ生きている。そのレプリカントをさがしだして処分してほしいというのだー愛するレイチェルそっくりの女性、タイレル社の総帥サラ・タイレルの依頼をうけ、デッカードは逃亡レプリカントを命がけで捜索しはじめるが…P・K・ディック原作、R・スコット監督の映画『ブレードランナー』の待望の続篇登場。
眼窩は深く落ちくぼみ、皮膚が乾ききった三人の少女の遺体。周囲に点された無数の蝋燭の光が、生気を失った彼女たちの顔に無気味な陰影を刻むー平穏に慣れきった田舎町を得体の知れない恐怖で包む連続少女失踪事件。最初に姿を消したのは、十四歳のシャロンだった。やがて届いた差し出し人不明の箱には、彼女の着ていた衣服とマネキンの左手が収められていた。住民たちは、行方不明となったシャロンの無事を願うが。
ニューヨーク州の田舎町オーリリアスで起きた連続少女失踪事件。少女がひとり姿を消すたびに、新たな箱が届けられる。犯人探しに血まなこになる住民たちは、外国人、社会主義者、同性愛者などの異質な者に不信の念をつのらせるだけではあきたらず、憎しみさえあらわにしはじめた。平穏だった小さな町の人々は、ゆっくりと、だが確実に、恐怖にむしばまれてゆく…狂気が理性を飲み込む様を冷徹に描いたサスペンスの傑作。
大学の警備員ジャックは、教授の一人から近所に住む牧師の娘が失踪した件で、相談をうけた。警察のコネをつかい、牧師夫婦に捜査状況を教えてほしいというのだ。幼くして娘を亡くしているジャックは、親の心情を察して依頼を引きうけた。やがて事件に深入りした彼は独自に調査をはじめ、大学内をうろつく麻薬の売人にさぐりを入れるがー雪深い田舎町で起きた少女失踪事件を軸に、人の心の深奥を鋭く描いたサスペンス。
1913年、表面は平穏でもヨーロッパは戦争に向けて水面下で熾烈な駆け引きを操り返していた。なかでも、統一後いまだ政情が安定しないイタリアは危険な状態だった。外国の手に落ちている領土の奪回を求める急進派は、中央政府の思惑とは別に、様々な策をこらしていた…情報局にリクルートされて一年余、ランクリンとオギルロイはロンドンに戻り、新人教育や書類仕事で平穏に過ごしていた。だが、急進派のイタリア上院議員ファルコーネの警護を命じられたことで、平穏の日々は終わりを告げる。イタリアの失われた領土回復を叫ぶファルコーネは、軍のための兵器調達に飛び回っており、対立するセルビアやオーストリアに命を狙われているのだ。そんな彼が調達に躍起となっているのが、実用化されたばかりの飛行機だった。飛行技術の先進国であるイギリスに渡ってきたファルコーネを追い、危険な刺客も放たれているらしい。さっそくランクリンは一計を案じるが…激動止まぬヨーロッパを駆けめぐる、草創期のスパイたちの活躍。
神戸を拠点とし、日本全国に傘下の組をもつ巨大広域暴力団・浜内組。兵庫県警の部長刑事志田司郎は、浜内組潰滅を図る県警本部長の特命を受けていた。折りしも義父で海運会社の重役を務める来水信介と浜内組とのトラブルを機に、組幹部を追跡するが、同僚の刑事を誤射してしまったのだ!職を辞し、妻子とも別れて孤狼と化した志田は、巨大組織を執拗に追いつめてゆく…。直木賞を受賞した不朽の名作。
奥州街道沿い、旧伊達領の北の外れにある、小さな城下町岩井。ここに鉄道が敷かれるという見通しを得た上村屋旅館の若旦那菊乃は、停車場の建設予定地と予測した吸川の埋め立て工事を請け負うよう、父の万治を説得した…。明治初期から大正末年にかけて描かれる、菊乃を中心とした岩井の町の人間模様。人々の絆が町を発展させ、町が人を育んでいく。しみじみと心に響く、傑作長篇小説。
宮沢登は四十四歳、京都に本社のあるN栄を辞めて、いまや宮沢商事という金融会社をかまえる。金融業が扱う商品は「お金」、銀行などは信用が一番大切などというが、売るものを理解していないから信用を売買するなどと馬鹿なことを言うというのが持論。近年、猛烈な勢いで東日本に勢力を広げ始めた宮沢商事は個人小口融資部門に真野清香という女性を迎え、まさに破竹の勢いだが…。
和光銀行の業績はこの二年間、次第に低下していた。ワンマン体制を敷いていた加藤五十八が引退し、矢野原史郎が新頭取に就任してからのことだった。さらにこの業績不振は矢野原の生ぬるい経営方針にあると、マスコミにも中傷記事が掲載されてしまう。これは銀行が世間に初めて見せたアキレス腱でもあったー。業績不振にあえぐ銀行の内部紛争と、そこに巻き込まれた一調査役の苦悩を描いた傑作経済小説。
ロンドンで発生した猟奇殺人事件。被害者はいずれも、レイプ容疑を持つ男性。現場には必ず、一輪の黒い蘭の花が残され、犯行の前日には、聖書の引用とともに被害者の死亡届が新聞に送られていた。敏腕ジャーナリストのベス・ギャンブルは自ら事件捜査のおとりとなるが、いつしか、レイプ犯殺害の容疑をかけられてしまう。無実を証明するため、そして真犯人を挙げるため、ベスの孤独な闘いが始まる。
足利高氏の謀叛により遂に崩壊する鎌倉幕府。驕る後醍醐は後宮政治を復活。寵姫・寵臣の国事壟断に諸国の民心は後醍醐を離れ、朝家の私闘に始まる戦いが日本国家を二分する。
7歳で父の組子・瓜生仁左衛門に預けられた禎蔵は、剣術に自力で這い上がる道を見出し、出世した。しかし、否応なく藩内の大きな力に巻き込まれていく下級武士の悲哀を身近に感じながらも、幼なじみの失踪と、父の死の謎を問い続ける。藩権力に翻弄される下級武士たち。その中で、若き剣術師範は、手探りしながらも誠実に生きようとする。待望の書下ろし長編時代小説。
日本ではまだマイナースポーツの水泳競技『飛込み』。学園生活を送りながらダイビングクラブに通い、オリンピックをめざしはじめた少年ダイバーたちをドラマチックに描く!森絵都、初の「スポ根」小説。
オーロラの中に現われた「もうひとつの世界」に渡ったライラは、“スペクター”と呼ばれる化け物に襲われ、大人のいなくなった街で、別の世界からやって来た少年ウィルと出会う。父親を探しているウィルはこの街で、不思議な力を持つ“短剣”の守り手となる。空間を切りさき別世界への扉を開くことのできるこの短剣を手に入れた少年と、羅針盤を持つライラに課せられた使命とは…。気球乗りのリーや魔女たち、そして天使までも巻き込んで、物語はさらに大きく広がっていくー。世界中で大ベストセラー、カーネギー賞受賞の壮大で胸躍る冒険ファンタジーの傑作。
キャリアも積んだ。名声も得た。だが、俺に何が残されたというのか-。過ぎ去った時、遠い出会い、苦い別れ。女流写真家と暗室で愛を交わした40代、先輩を凌駕しつつも、若手の台頭に焦りを抱いた30代、病床の少女を撮って飛躍した20代、そして学生時代を卒業した、あの日。時間のフィルムを巻き戻し、人生の光と影をあぶりだす名編。50歳のカメラマン喜多川の脳裏によみがえる熱き日々。閃光が灼きつけたせつない記憶いまも疼く5つのシーン。