2001年10月発売
東京に戻った三年後、“おれ(坊っちゃん)”は、山嵐から赤シャツの死を知らされる。真相を求め、再び四国へ向かう二人だが…。漱石作品に浮かび上がるもう一つの物語。第12回朝日新人文学賞受賞作。
紅茶の季節に、孫娘の赤いくちびるの色に魅せられる祖母の偏愛「赤い唇」。外国にいる恋人に、冷たい感覚の右半身をゆだねる女の幻想「片冷え」。誰かに言いたくてたまらないある言葉への欲望「大統領の死」他人には言えない若い妻の妖しい願望「朱験」。老親の生への偏執「来迎の日」…。現実生活につなぎとめられた異常な感覚を軸に、大人の女のエロチシズムを描く短編集7編。
戦後の混乱期、全米水泳選手権に出場した古橋広之進らは世界新記録を連発し、“フジヤマのトビウオ”と賞賛された。敗戦にうちひしがれていた日本人に勇気と希望を与えた彼らを支えたのは、ひとりの在米日系人ーフレッド・和田勇。そのとき彼は、日本の悲願“東京五輪”誘致を心に決めた…。日本の発展のためにすべてをなげうった「無私の人」の苛烈な生涯を描いたドキュメント・ノベル。
飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。クラスメイトまでもがマサオいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現れた。ホラー界の俊英が放つ、書き下ろし長編小説。
都市銀行準大手の白百合銀行。各行が鎬を削る東京・多摩地方で敏腕を揮い、業績を順調に伸ばしていた支店長の鈴木昇は、盛夏のなか大口融資の決済を仰ぎに出向いた本社で、派遣社員の常務秘書と知り合った。さっそく彼女を口説き、食事から酒とお決まりのコースでホテルへ…。だが、美貌の彼女は思いもよらぬモノを持って鈴木の前に…。書き下ろし長篇官能ロマン。
成功と引き換えに愛するものを失った苦しみとは?ほんとうは、一体誰を愛する為に生まれてきたのだろう?その答えが、ここにある。混迷のIT時代に遂に現われたゴージャスなサイバーエンターテインメント・ノベル。
本書は私辞典である。一般の辞典が言葉の客観的な(と思われる)意味を主観的に記述しているのに対し、この辞典は言葉の主観的な(と確信する)意味を客観的に述べているので、特に「私辞典」と名付けた。
多額の借金を身体で返済する身の上の綾瀬は、狩納に高額の洋服を大量に買い与えられ戸惑っていた。狩納に酷い仕打ちを受けながらも、不自由なく生活している綾瀬は、狩納へプレゼントを贈ろうと思うが、お金がなくて…。綾瀬が狩納のために必死にお金をかき集めるハートフル・ストーリー!書き下ろし作品では、身体での借金返済を取り止めてもらった綾瀬の元へ、石井鉄夫の母が現れ-。
自由で平和な理想郷を築く気宇壮大ロマン!カラ・キタイ(西遼)を建てた耶律大石の驚愕の秘史と、暗殺教団の長老ハサン・サッバーフにウマル・ハイヤームの謎。主人公・陶羽が体験するマニ教の奥義「桃源郷」発見の旅。新世紀を飾る名作と三国志から始まる「曹操-魏の曹一族」を併録。国家を超越、世界主義を択る。
「けっきょく輪廻なんだよなあ、いろんな自分の。…地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天道って、聞いたことあるだろ。じたばたしても、いろんな自分を結局は輪廻していく…」ロックで六道輪廻を突き抜けろ!精神を病みロックに没入する僧浄念が見た輝く世界。現役僧侶による衝撃の芥川賞受賞第一作。
江戸時代初期、二代将軍秀忠のご落胤として生まれた幸松は、信州高遠の保科家を継ぐ。やがて異母兄である三代将軍家光に引き立てられ、幕閣に於いて重きをなすに至る。会津へ転封となった後も、名利を求めず、傲ることなく、「足るを知る」こそ君主の道とした清しい生涯を、時に熱く、時に冷静に描く著者渾身の書。
警察一家の要となる人事担当の二渡真治は、天下り先ポストに固執する大物OBの説得にあたる。にべもなく撥ねつけられた二渡が周囲を探るうち、ある未解決事件が浮かび上がってきた…。「まったく新しい警察小説の誕生!」と選考委員の激賞を浴びた第5回松本清張賞受賞作を表題作とするD県警シリーズ第1弾。