2001年4月発売
十数年前。高校時代。恋人の死。「喪失感」から始まる魂の彷徨の物語。落ち葉の匂いのするファーストキスではじまり、死を予感させる無菌状態の中でのキスで終わる。
「千里眼」岬美由紀と「催眠」嵯峨敏也が挑む友里佐知子との“最終決戦”。社会派サイコ・サスペンスと冒険小説の醍醐味を掛けあわせ、エンターテインメント文学に新たな金字塔を打ちたてた超ベストセラー・シリーズ、読者の圧倒的支持に応えて贈る最新作。
(もはや開戦は避けられん。こんな時に、山本が逝ってしまうなんて)永野修身軍令部総長はため息をついた。一昨日未明にもたらされた訃報。山本五十六連合艦隊司令長官の突然の死に、永野は頭の整理がつかない。ハワイ作戦のような投機的なプランに軍令部はじめ反対意見も多かったが、永野個人としては山本に賭けてみよう、と思っていた矢先だった。未曾有の対米戦争を戦い抜くには、豪胆さと強い信念をあわせた持った男がリーダーでなければとても無理な話である。(及川は反対しているが、やはりあいつしかいない)「車を用意してくれ。そうだな、三時間、いや四時間ほど留守にする」一時間後、永野を乗せた武蔵野航空工業と書かれた看板の前にいた。「戦争はビジネスだ」-新たなる発想の架空戦記。待望のシリーズ開幕。
北カリフォルニアでのカルト教団の集団自殺から逃れたクリスティンが、風俗店ひしめく歌舞伎町のホテル・リュウで行なう「メモリー嬢」という仕事とは?地下鉄サリン事件や、ロックスターの暗殺などカオス的な事件の日付から成る「アポカリプスのカレンダー」。その作成にとり憑かれた「居住者」の過去とは?現代アメリカ文学の鬼才が放つ最新作。
30歳を前に商社を辞めて転職した。やくざまがいの探偵稼業。それまでの自分は投げだした。なぜこんなことを始めたかも、考えないようにしていた。そして、汚れた都会の罅の間から聞こえてくる人々の呻きに耳を傾け、その声を胸底に深く沈めてきた。女に言われた。街に詩を書いている。人の心が綴る詩を書いている。探偵、浅生。32歳。哀切で情感あふれる北方ハードボイルドの名編。
家庭内暴力をふるう不登校の中学生、志方恭介が刺殺された!悲劇の夜、たまたま誘われて怪しげな店で遊んでいた父親・恭一郎は、妻や娘たちに恨まれ、警察やマスコミからは疑惑を受ける。やがて犯人が判るが、少年法で守られている犯人を糾弾する恭一郎は、逆に非難を浴びる。家庭も将来も失い、復讐心から犯人の母・はつみに近づいた彼は…。少年犯罪で崩壊した家族の苦悩と再生を描く傑作。
売れない漫才コンビ、田代誠と袋金太はお笑い名人大賞を目指しネタの練習に明け暮れていた。ある日二人乗りしていた自転車がダンプと衝突。気がつくと見知らぬ部屋に寝かされていた。しかも、窓の外には零戦!?二人は事故のショックで昭和二十年の航空隊基地にタイムスリップしてしまったのだ!しかも実在の特攻隊員の魂とすり替わってしまったらしい。平和とはまったく無縁の世界に愕然としながらも、二人は周りの隊員達と少しずつ心を通わせていく。アメリカも泣いた芸術祭賞受賞の舞台をついに文庫化。
風俗店が並び立つ横浜黄金町。14歳の少年は、中学を登校拒否してドラッグに浸っている。父親は、自宅の地下に金塊を隠し持つパチンコ店“ベガス”の経営者。別居中の母、知的障害を持つ兄、援助交際に溺れる姉など、家庭崩壊の中、何でも金で解決しようとする父に対し、少年が起した行動とは…。生きることはゲームだと思っていた少年が、信じるという心を取り戻すまでを描く感動的長編。
「霊泉」を利用した温泉療養施設には、重い病に悩む客たちが遠方から大勢集まり逗留する。僧玄山はそこで書道教室を開きながら客たちの相談相手にもなっている。末期ガンの久美子は明るく振舞う人気者だが深い孤独を抱えたクリスチャン。しかし身寄りのない男を助けた久美子は玄山に自らの「罪」について衝撃的な告白をする。クリスチャンの女性と禅僧の出会い。現役僧侶による話題の芥川賞候補作。
フォーレラは英国侯爵の父ピーターとハンガリー貴族の令嬢を母に、親子で世界各地を旅していた。しかし、近年相ついで両親を亡くす。後見人の伯父、クレイドン伯爵は姪をイギリスに呼び戻す手はずを整えた。が、ロンドンでは冷たい態度の夫人がフォーレラを厄介払いしたがっていた。その指示に従って、仕方なく社交界デビューの準備を続けるしかない。まもなく、社交界屈指の接待会でハンガリー王子の所有する城へ叔父夫婦と共にフォーレラも出席することになったが…。
大学出のブルジョワ令嬢が、しっかり者の母親のいる田舎の家へ嫁いだらどうなるか-これが謎を解くきっかけになりました。嫁姑、夫婦、親子の、本書は関ヶ原の戦より壮絶な家庭内バトルです。「悪女だと誰が決めたのですか」家康正妻築山殿。書き下ろし作品。集英社時代小説。
スコットランドで三百年ぶりに再開される自治行政の中心地となる歴史的建造物クイーンズベリ・ハウス。保安のために見学中だったリーバスたちは、その地下室の壁の奥に隠されていた人骨を発見する。いったいこれは誰なんだ?刑事魂をいたく刺激されたリーバスは、さっそく捜査にしゃしゃり出ようとするが、本部所属のエリート警部と対立する羽目になる。だが捜査に着手する間もなく、今度はクイーンズベリ・ハウスの中庭で、来るべき議会選挙の有力立候補者の他殺死体が!リーバスは事件の間に、複雑に絡み合った意外な関連を見出すが…。
ジェイクは、鍵の修理も家の建築もお手のもの。留守中の精神分析医のオフィスで改装工事をしていたが、そこへ“珍客”が訪れる-泣き腫らした目とかみすぎた鼻が赤らんでいる。いかにもはかなげなその女性マギーは、いきなり不幸な自分の身の上をジェイクにぶちまけだした。マギーは、どうやら、その場に居合わせたジェイクを医師と早合点してしまったらしい。だが、彼はマギーの思い違いを正すどころか、彼女を励まそうと次の“セラピー”を約束してしまう。そして真実を告げる勇気もないままにセラピーは回数を重ね、二人は次第に惹かれ合っていく…ハンマーを扱うのは得意でも、女性の扱いには不慣れな便利屋ジェイクに、はたしてマギーを救うことができるのか?コメディのエッセンスを加えた現代の“シンデレラ・ストーリー”の幕切れはいかに…。