2001年4月発売
羌という遊牧の民の幼い集団が殺戮をのがれて生きのびた。年かさの少年は炎の中で、父と一族の復讐をちかう。商王を殺すー。それはこの時代、だれひとり思念にさえうかばぬ企てであった。少年の名は「望」、のちに商王朝を廃滅にみちびいた男である。中国古代にあって不滅の光芒をはなつこの人物を描きだす歴史叙事詩の傑作。
妻子を得て春陰にたたずむ望の胸中には、焦燥あるばかりであった。周公を中心に諸侯は策謀しつつある。しかし独り時代の先を視る望の苛烈な生は、人知れぬ哀しみにみちていた。ひとは己れを超えねばならぬ、あたかも小魚が虹桟を渡り竜と化するように。利に争うものは敗れ、怨みに争うものは勝つ、そしてそれを超えるとは。
ひとを神々に贄として捧げる、そんないまわしい時代は去らしめねばならぬ。諸侯の協力を得て、周公を獄から救いだした望は、さらに機略を尽し周召同盟を成立させる。ここに叛意はととのった、宿望の日である。決戦の朝、牧野は清々しく晴れていた。未到の時空の光と風を甦らせる宮城谷文学の金字塔、完結篇。
愛する妻や家族への想いを断ち切り、北朝鮮の最高幹部・黄長〓@57F6@は韓国亡命の道を選んだ。何百万の人民を餓死させながら戦争ゲームにうつつをぬかす独裁者・金正日を倒すために。長年、金日成・正日父子の身近で働いてきた著者が見た独裁者の正体や奥の院での暗闇、圧政に苦しむ人民の救出策などを明かした衝撃のベストセラー。
「私は拳銃を構える。恐怖にひきつった顔を思い描くだけで、胸のもやもやが晴れていく」-。久しぶりの同窓会で、歌舞伎町に流れ、家出少女から受け取った包みの中身はなんと拳銃。なぜか主婦は警察に届けない。日常に倦んだ市井の人々を狂気に変えていくコルトの魔力。巧みな構成で魅了する連作短篇集。
正月早々、山神大地は中学時代の同級生・和子と再会、熱く燃える。高校の先輩・小泉ゆかりのお母さんには図書館のトイレに誘われ、強烈な体験を味わう。さらに、出戻りで書道教室の美里先生ともからだを合わせ、深い快感で先生の哀しみを癒してあげるー『週刊現代』好評連載中の官能ロマン。
この世の物とは思えない奇妙な恋の物語 22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。--そんなとても奇妙な、この世のものとは思えないラブ・ストーリー!!
1900年代初めに謎の失踪を遂げた両親を探し求めて、探偵は混沌と喧騒の街、上海を再訪する。現代イギリス最高峰といわれる作家が失われた過去と記憶をスリリングに描く至高の物語。
3年間で100万ポンド稼いだ者だけに全ての遺産を譲る…。前代未聞の遺言により、熾烈な金儲けレースを始めた息子たち。だが事態は思わぬ方向へと展開してゆく。
莫大な遺産は一体誰の手に?骨肉の愛憎とむきだしの闘争の末、彼らがたどり着いた終着点は?欲望うずまく現代社会で、人間の真の幸せとは何か、を問いかける感動の後編。
1 フィリアス・フォッグとパスパルトゥー、一方が主人に、他方が召使になることを了承しあう 2 パスパルトゥー、ついに自分の理想を見出したと確信する 3 フィリアス・フォッグが大変な結果をしょいこむことになる会話が交わされる 4 フィリアス・フォッグ、彼の召使であるパスパルトゥーを仰天させる 5 新銘柄株がロンドン市場に登場する 6 刑事フィックス、きわめて当然の焦燥を示す 7 こと捜査に関しては、パスポートが用をなさないことが改めて証明される 8 パスパルトゥー、おそらくはいささか度をこして喋りすぎる 9 紅海とインド洋上の航行はフィリアス・フォッグの計画に好都合に運ぶ 10 パスパルトゥー、幸いにも片方の靴を無くしただけで事なきをえる 11 フィリアス・フォッグ、とてつもなく高価な乗り物を買う 12 フィリアス・フォッグとその同行者たちはインドの森林の中を突き進む。またその結末 13 パスパルトゥー、幸運は大胆な者たちに微笑むことをまたしても証明してみせる 14 フィリアス・フォッグ、ガンジス川の美しい渓谷に沿う道を、その眺めを見ようともしないままひたすら下っていく 15 紙幣を入れた袋は更に数千ポンド分軽くなる 16 フィックスは彼が耳にする話について、皆目知らないという顔をする 17 シンガポールから香港までの航海中におきた色々なこと 18 フィリアス・フォッグ、パスパルトゥー、フィックスは、めいめいそれぞれの仕事にかかる 19 パスパルトゥー、自分の主人に強すぎる関心を抱く。そしてその結末 20 フィックス、フィリアス・フォッグとじかに接触を持つ 21 タンカデール号の船長が二〇〇ポンドの手当をもらいそこねる可能性がでてくる 22 パスパルトゥー、たとえ地球の反対側にいてもポケットになにがしかの金を所持しておくことが身のためであると思い知る 23 パスパルトゥーの鼻がとてつもなく長く伸びる 24 太平洋横断がなしとげられる 25 サンフランシスコの概観。政治集会の一日 26 パシフィック鉄道会社の急行列車に乗車する 27 パスパルトゥー、時速二〇マイルで走りながらモルモンの歴史の講義を受ける 28 パスパルトゥー、理性の言語を理解させることが不可能となる 29 合衆国鉄道においてしか起こりえないような様々な出来事についての物語 30 フィリアス・フォッグ、ごく単純に己の義務を果たす 31 刑事フィックス、きわめて真剣にフィリアス・フォッグのことを気遣う 32 フィリアス・フォッグ、直々に悪運との闘いに乗り出す 33 フィリアス・フォッグ、彼の能力を遺憾なく発揮する 34 パスパルトゥーに、残酷な、しかしおそらく誰も耳にしたことのない洒落を発する機会が与えられる 35 パスパルトゥー、主人に同じ命令は二度繰り返させない 36 フィリアス・フォッグ、再び市場の価格をつりあげる 37 フィリアス・フォッグがこの世界一周の旅で儲けたのは、幸福だけであったことが証明される 解 説
主家の乗っ取り、将軍弑逆、東大寺放火など、その非道な行動から戦国の梟雄と称される松永久秀。だが、浮浪の身から京の支配者にまで伸し上がった彼の評価を、本書は人間的な史観から問い直す。若き日、京の実力者であった三好元長に取り立てられたことに始まる、下剋上そのものの人生。何の後ろ盾もなく、自ら培った教養と処世の術で、乱世を疾駆した久秀の心情を見事に描出する力作長編。
死んだはずの“魔性の女”が再び現れた…… かつて彼女に振り回された苦い経験を持つ三人の中年女性が、若き日を回想しながら新たなる人生の危機に立ち向かう。鋭い時代感覚で照射する80年代カナダの肖像。ミステリー仕立ての知的エンターテイメント。ブッカー賞受賞作家の長編小説!
一九七四年。地方都市で暮らす十五歳の少年、山県龍二は、剣道部のキャプテンであり、全国大会ベスト4の実力者だった。ところが、卒業を間近にむかえたころ、クラスメートの重松正人が、いじめの対象になっていたことに気づいたことから、龍二の人生は狂い始めてしまう。正人の自殺、そして親友川辺の謎の死。腐敗した街の権力抗争に巻き込まれ、龍二は殺人犯の汚名を着せられることになり、故郷を捨てる決意をするのだが…。
故郷を捨て東京へ逃れた龍二は、そこで己の運命を変える、様々な人々と出会い、そして死とともに別れていった。如月やさち、朴たちの復讐を誓った龍二は、横浜黒龍会の周辺を調べまわる。そして龍二に心酔する木村たちによって「龍の会」が結成された。殺されたもの、殺したものの怨念や慟哭の中で、龍二は自分の背中に墓標となる龍の入れ墨をほり、やくざになることを決意する。龍二の運命の行方は果たして…。
会社社長の一人娘・仙道千紘は、ある日、見知らぬ女性から、父の会社が出したという奇妙な秘書募集広告を手渡された。まるで誰かを捜しているかのような文面に、父への不信感を募らせる千紘。だがその矢先、父が何者かによって殺害されてしまう。さらに、莫大な遺産を巡り、父の再婚相手と名乗る女性が現れて…。警察庁広域捜査官・宮之原警部が難事件に挑む、長篇旅情ミステリー。
福岡県甘木市の公園で、男が殺されているとの通報が入った。現場に駆け付けた捜査員たちが目にしたものは、男の胸に置かれた梅の枝と、胸元に狭まれていた短冊だった。その短冊には、謎めいた和歌が書かれていた。所持品から、被害者は暮れに倒産した月丘建設の常務であることが判明。警察庁広域捜査官の宮之原警部は、この事件の解決に乗り出すが…。傑作長篇ミステリー。
服飾デザイナーとして、女帝とも言われる鳥飼多佳子の家の前で、生後間もない乳児が捨てられる事件が起きた。その一週間後、熱海の錦ヶ浦で女性の絞殺死体が発見され、新宿のホステス・村瀬美奈であることが判明。彼女が捨て子の母親であったのだ。多佳子と美奈に何の繋がりがあるのか?警察庁広域捜査官の宮之原警部は、二人の関係を探るうち、美奈の出生に秘密があることを掴むが…。傑作旅情ミステリー。