2001年7月発売
初の本格恋愛小説。娘の夢を見て欲しいと懇願する初老の奇術師、他人の弔辞を書きつづける女シナリオライター…他人との折合いが微妙にずれる男女がおりなす、かなり奇妙で怪しくて、チョッピリ背筋も寒くなる“四つの恋の物語”。
郊外に居を構え、孫の成長を喜び、子供達一家と共に四季折々の暦を楽しむ。友人の娘が出演する芝居に出かけ、買い物帰りの隣人に声をかけるー。家族がはらむ脆さ、危うさを見据えることから文学の世界に入った著者は、一家の暖かな日々の移りゆく情景を描くことを生涯の仕事と思い定め、金婚式を迎える夫婦の暮らしを日録風に、平易に綴っていく。しみじみとした共感を呼ぶ長編。
わすれかけてしまいそうな日々の中で、ふと思いかえし、流れの中に立ち止まって、「あの気持ち、あの気持ち」とつぶやくと、まわりからだんだん遠くまで、ゆっくりと波が静まってゆき、間違わない方向の石が輝いて見えた。それに足をかけ、次に飛び乗り、進んで行く。困ったときは、遠くを見よう。近くばかりを見ていると、迷うことがあるからー静かにきらめく16のストーリー。初めての物語集
いつでも女の人に甘え、その場をずるく言い逃れ、迷惑という迷惑をかけ通しだった。でも実は、身をよじるようにして、この国と、国民のことを案じていた。十五歳の「私」を見つめる時、まぎれもなく、母にすがる目をしていた。玉川上水に女と身を投げたあの人は…。一人の女生徒が物語る、優しくて汚くて、誇り高くて品がなくて、「無頼派の旗手」と呼ばれた小説家の「死」まで。
死の集団密航から奇跡的に甦り、命がけの凄絶な実生活を体験しながら、凋落の一途を辿る中国人女性レイの軌跡。20世紀の日本と中国の歴史的記憶のために、全身全霊を傾けて執筆した渾身の作。
8世紀中頃の黄金発見に端を発する奥州動乱と、中央政界の血腥い権力抗争を描く大河ロマン。蝦夷の若者・丸子嶋足は、黄金を土産に帰京する陸奥守の従者となり平城京に上る。8年が過ぎ、衛士府の官人として異例の出世を遂げた嶋足は、やがて奈良朝を震撼させた政変・橘奈良麻呂の乱の渦中に、自らの身を投じるのであった…。迫り来る動乱の兆しの中での、若き蝦夷たちの躍動と葛藤を描く。
生放送のテレビドラマ本番中に、スタジオ内で次々と勃発する事故。毒は本物にすり替えられ、脅迫電話は真実の声音となり、脚本に秘められた真実は、慟哭と贖罪の扉を開く。「完全なる虚構」と「不完全な虚構」という二つの世界が交錯する、入れ子トリックの博覧会。この物語は、著者自らが奏でる鎮魂歌でもある。
きっと、君にもあるだろう?果たせなかった約束。大人になり、見失いかけて初めてそれが大切なものだって気づくこと。僕らは、祈った。四人の輝くような時間を取り戻したくて。あの頃、僕らはまだ10歳だった。著者初の短編小説。