2003年2月発売
喫茶店「ブルーリップ」の美人ウェイトレスが自室で殺された。畳には大量の竹が敷き詰められ、その中央に全裸の遺体が横たわっていた。容疑者にはアリバイがあり、被害者には過去があり、目撃者には邪心があった。そこに現れたのが間暮警部。持ち前の美声で昭和の名曲を歌ってから言い放つ。「犯人はこの部屋の中にいます」-表題曲ほか『別れても好きな人』『四つのお願い』『ざんげの値打ちもない』など懐かしいヒット曲の裏に隠された真実が、いまここに明らかになる。
迷宮入りもやむなしと思われた事件が幾度、彼の手で解決されただろうか。3000体もの変死を扱った空前絶後の検死官・芹沢常行。鍛えられた勘と技術は「自殺」を「他殺」に変え、意外な真犯人を暴き出す。人呼んで「逆転検死官」。ワトソン役の作家・山崎光夫がその奥義に迫り、難事件の真相解明に挑んだ。
弟は隣家から聞こえてくるユーモレスクが好きだった。六年前に行方不明になった弟・真哉。鏡合わせに一棟を分けた隣家は、それ以来「近くて遠い」場所となった…。不在の人の記憶が紡ぎ出す切ない物語。
サラリーマンの堀慧一は煮ても焼いても食えない後輩の高須賀和正と社内恋愛中。堀は相変わらず高須賀に強引に抱かれ、散々喘がされるが、堀一筋な態度についついほだされてしまう。そんなある日、親の海外赴任で実家に戻ることになった堀。家人が居ないのをいい事に高須賀はそのまま同棲に持ち込むが、新婚生活は思いもよらない人物のせいでとんでもない方向に…。
大坂城落城により、天下を握ったはずの家康に驚倒すべき情報がもたらされた。真田幸村の秘策により、五人のくノ一が信濃忍法を駆使して秀頼の子を身ごもったというのだ。しかも、その五人は家康の孫娘、千姫の侍女の中にいるという。隠密のうちに禍根を断つことを決意した家康は服部半蔵に命じて、伊賀国鍔隠れの谷から五人の忍者を呼び寄せるが…。千姫と家康の確執、伊賀忍法と信濃忍法の妖しく凄絶な争い。著者自ら忍法帖の代表作として推した傑作中の傑作。
いつもと同じはずなのに、何かがしっくりこない。テーブルの角が見つめている。部屋に穴があいている。何かがおかしい。この前買ってきたアンティークの鏡台が?祖父が?彼女が?それとも僕自身がー?日常にひそむ些細なずれが、人を恐怖に、あるいは不可思議な世界へと招き入れる。原田宗典が想像力の限界に挑み、現実と虚無の間にひそむ異空間を描いた奇妙な短篇集。
日常世界の中でふと垣間見てしまった性の秘密に戸惑いながら、大人への階段を昇ってゆく少女の姿を描いた「世界の真ん中」。村祭りで出会った見知らぬ年上女性に誘惑され、熱く夢のような一夜を迎える少年の心情に迫った「ホップ・ステップ」etc。空港で、更衣室で、金木犀の茂みの中で、性の悦びが光る波となって、私を陶酔の海へと導いてゆく…。未知の扉の向こうに、新しい自分を発見する13の物語を収めた傑作官能小説集。
英雄となるべく運命を背負って生まれた孫堅。17歳の春の日、船旅に出て、海賊に襲われるが、賊20人をたった一人で退治する。豪胆ぶりはたちまち広がり、呉郡一円にその名をとどろかす。この武勇伝は、後の黄巾の乱、董卓の乱平定への序章だった。名著「三国志」を「呉」の視点から描く、著者会心の歴史ロマンが開幕する。
夢か現か?!最強と謳われた孫堅軍が瓦解してしまった。敗戦にうちのめされ、無念の思いで父の遺体を奉じた孫策だが、中国一の大河・長江を前に、その心は激しく燃えていた。隠忍の日々を経て、彼はついに長江西岸の平定に成功、さらに江東の魏の拠点を攻め落とす。魏の雄・曹操も、そうはさせじと孫策の前に立ちはだかる。風雲にわかに急を告げて…。
十二世紀末。鎌倉に追われる九郎坊と大和坊は、奥州の山中で妖麗な女が独居する藁屋に一夜の宿を請う。黒蜜と名乗る女は奥の間を覗かぬことを条件に逗留を許す。十九世紀、奥州山中の荒屋に宿を請うた男は、生首となって生きる九郎坊を奥の間に見る。さらに時代は流れ…九郎坊は高層ビルから廃墟と化した都市を見下ろしていた。永遠の命を生きる異形の者の、時空を超えて展開する愛憎と闘い。
黒い水中眼鏡をかけた女が、精神科医の前にあらわれた。ある朝、突然目が開かなくなってしまったという。自宅で発生した火事によって夫を失ったことが原因かと思われたがー。治療が進むにつれ、驚愕の真実が浮かび上がっていく表題作ほか、難病の妻の介護人として雇われた女性が、歪んだ夫婦関係に巻き込まれていく「ペンテジレアの叫び」など。サイコサスペンスの傑作全三篇を収録。
ふいに現れたその老人、国吉彬圀は郷土史家と名乗った。小さなPR会社を経営する俵谷慎介。彼の先祖の廻船問屋が江戸時代に北日本のどこかに隠したという財宝を探しているというのだ。財宝の総額は小判と砂金で百億円!さらに接近してきた国吉の姪の美貌。次第に俵谷も底の見えないゲームの中に巻きこまれて行く。冴える志水節、入魂のハードボイルド。