2004年5月発売
「怪しすぎるよ。こんなところに『弟』がいるなんて嘘じゃないの?」父と二人、少女は教会の地下、苔むした石畳を歩んでいく。研究者の父と、社交に忙しい母、二人のメイドとともに館で何不自由なく暮らしていた彼女の前に、野生児の「弟」が出現した…。R-18文学賞読者賞受賞作家の魅惑的なゴチック・ロマンス。
eビジネスで成功し時代の寵児となった男は、なぜ大銀行のビルから飛び降りようとしたのか。安値更新していた株が急騰、最新設備を誇る外資系通信会社で何が起こったかー証券会社を辞め、警備会社に再就職した中年男が直面する事件の数々。刻一刻と進化する経済社会を生き抜く人間たちを熱く描いた傑作。
旅順の港とその大要塞は、日本の陸海軍にとっての最大の痛点であり、ありつづけている。-日清戦争から10年後の明治37年(1904)2月10日、日露戦争開戦。軍事力も財政力もロシアに劣る日本は、戦局の長期化を避けたい。しかし、満州を主戦場とする陸軍にとっても、一日も早く制海権を握りたい海軍にとっても、旅順の大要塞が大きく立ち塞がった。「日本人とは何か」を問う畢生の大作。
旅順の乃木軍司令部から児玉のもとに入ってくる報告は、ことごとく敗報であった。-旅順の要塞との死闘はつづいていた。要塞に対し正面攻撃に固執する乃木軍は、兵士たちを死地へと追いやりつづけた。兵力が衰えるなか、攻撃の主目標を二〇三高地に限定せよとの声が高まる。そこからは、旅順港が眼下に見下ろせるからであった。「日本人とは何か」を問う畢生の大作。
夏休み、大地はサッカー部の合宿でマネージャーの友江と初々しいキスを交わし、水沢先生とは林の中で月の光を浴びながらお互いを晒け出した。地元・三嶋大社のお祭りの夜、三田先輩と躯を重ねる寸前までいって別れたあと、突然呼び止められた。東京に行ったゆかりだったーシリーズ第10弾。
婚約中のロディーとエリノアの前に現われた薔薇のごときメアリイ。彼女の出現でロディーが心変わりをし、婚約は解消された。激しい憎悪がエリノアの心に湧き上がり、やがて彼女の作った食事を食べたメアリイが死んだ。犯人は私ではない!エリノアは否定するが…嫉妬に揺れる女心をポアロの調査が解き明かす。
残忍な殺人は平穏な海辺の館で起こった。殺されたのは金持ちの老婦人。金目的の犯行かと思われたが、それは恐るべき殺人計画の序章にすぎなかったー人の命を奪う魔の瞬間“ゼロ時間”に向けて、着々と進められてゆく綿密で用意周到な計画とは?ミステリの常識を覆したと評価の高い画期的な野心作を新訳で贈る。
「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」西条八十の詩集をタクシーに忘れた黒人が、ナイフで刺され、ホテルの最上階に向かうエレベーターの中で死亡した。棟居刑事は被害者の過去を追って、霧積温泉から富山県へと向かい、ニューヨークでは被害者の父の過去をつきとめる。日米共同の捜査の中であがった意外な容疑者とは…!?映画化、ドラマ化され、大反響を呼んだ、森村誠一の代表作。
『死霊の手』-旗本の三男坊、波之助の釣り船に女の土左衛門が流れ着いた。首筋の痣は相対死の名残か…。『検察捜査・特別篇』-県警本部に男が乱入し、横浜地検の岩崎紀美子に「たれ込み」電話がかかってきた。『920を待ちながら』-神業の腕を持つ伝説のスナイパー。防衛庁情報局の男たちは、姿なき彼に追い詰められ-。『放蕩息子の亀鑑』-「冷たいカルテ」を書いた病院長・童子女の前に現れた不意の訪問客。『脳男』の鬼才が描く「本格」ミステリー。
オルガン奏者が何者かに襲撃され、不穏な空気が漂うトールンブリッジの大聖堂で、巨大な石の墓碑に押し潰された聖歌隊長の死体が発見される。しかも事件当時、現場は密室状況にあった。この地方では18世紀に魔女狩りが行なわれた暗い歴史があり、その最中に奇怪な死を遂げた主教の幽霊が聖堂内に出没するとも噂されていた。ディクスン・カーばりの不可能犯罪に、M・R・ジェイムズ風の怪奇趣味、マルクス兄弟のスラップスティックをミックスしたと評される、ジャーヴァス・フェン教授登場のヴィンテージ・ミステリ。
まっとうさの「力」は、まだ有効かもしれない。信じること、優しいこと、怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。吉川英治文学新人賞作家、会心の受賞第一作。
小説編集の桜井透也は、担当作家の穂高櫂とプライベートで親密な関係にある。憧れの作家と恋愛をしていること自体、透也にとっては信じられない上に、仕事の立場で、肉体関係をもっている相手にどう接していいのか戸惑っていた。そんな時、透也は新人作家の担当になる。新鮮な気持ちで仕事に夢中になる透也だが、その分、穂高に会う時間がなくなり…。甘く切ないラブSTORY。
あんな有名詩人との恋?考えられない!雪子は舞い上がっていた。なんてったって、本人に付き合ってほしいといわれたのだから!でも、雪子は知らなかったのだ。おなじみ片山刑事と晴美とが、TVスタジオで、詩人を殺そうと花束にナイフを隠し持った女・ユリ子に遭遇していたことをー。ユリ子は告げた、「あの男は悪魔よ!」。雪子の運命はいかに!?三毛猫ホームズシリーズ第27弾。
十八世紀、頽廃のパリ。名うてのプレイボーイの子爵が、貞淑な夫人に仕掛けたのは、巧妙な愛と性の遊戯。一途な想いか、一夜の愉悦かー。子爵を慕う清純な美少女と妖艶な貴婦人、幾つもの思惑と密約が潜み、幾重にもからまった運命の糸が、やがてすべてを悲劇の結末へと導いていく。華麗な社交界を舞台に繰り広げられる駆け引きを、卓抜した心理描写と息詰まるほどの緊張感で描ききる永遠の名作。
『無窮堂』は古書業界では名の知れた老舗。その三代目に当たる真志喜と「せどり屋」と呼ばれるやくざ者の父を持つ太一は幼い頃から兄弟のように育つ。ある夏の午後に起きた事件が二人の関係を変えてしまう。
ゲーム制作会社で働く汐路は、同僚がビルから転落死する瞬間を目撃する。衝撃を受ける彼女に、故郷・早瀬で暮らす姉から電話が入る。故郷の中学で女学生が同級生を猟銃で射殺するという事件が起きたのだ。汐路は同僚と女学生が同一のキャラクターグッズを身に着けていたことに気づき、故郷に戻って事件の調査を始めるのだが…。現代社会の「歪み」を描き切った衝撃のミステリ!第二十一回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
突然の事故で記憶と左眼を失ってしまった女子高生の「私」。臓器移植手術で死者の眼球の提供を受けたのだが、やがてその左眼は様々な映像を脳裏に再生し始める。それは、眼が見てきた風景の「記憶」だった…。私は、その眼球の記憶に導かれて、提供者が生前に住んでいた町をめざして旅に出る。悪夢のような事件が待ちかまえていることも知らずに…。乙一の長編ホラー小説がついに文庫化。
恋人との穏やかな日常に、突然生じた疑惑。彼女は自分を裏切り、あの男と愛しあっているのではないだろうか?身を苛む嫉妬。崩壊して行く関係。それでもなお彼女の放つ香りは理性を奪い、「私」を虜にする。そして、白い花の香りをまとったもうひとりの女ー。欲望?それとも愛なのか?「香り」を通奏低音に、愛についての張りつめた問いが続く、狂おしく、ピュアな恋愛小説。