2005年7月発売
恋は不思議なもの。ある時は人生に歓びを与え、ある時は苦難をもたらす…。年老いた大富豪ラファティの依頼は、ごく簡単なものだった。甘やかされて育った一人娘のリーバが、横領の罪で服役していた刑務所から出所するのを迎えに行き、自宅へ送り届けてほしいという。30歳を超えているのに常識に欠けるわがまま娘のお守り役だが、ひどく楽な仕事に思えた。出所したリーバはキンジーには気を許し、なにかと制限の多い仮釈放中の生活で友人づきあいを求めてくる。だが、彼女の元の雇い主ベックがマネーローンダリングに手を染めており、彼と愛人関係にあったリーバがそこに足を突っ込んでいたことが判明し、楽な仕事は吹っ飛んだ。ベックを摘発したいFBIや国税庁の合同チームがリーバの証言を求めて接近してくる。チームに参加しているのが、旧知の市警チーニー警部補だったことから、キンジー自身の身にも予想外の出来事が!カリフォルニアの女探偵が、ひさびさの恋に燃えつつ事件に挑む、人気シリーズ最新作。
突如地球を襲った大災害!途方もない嵐が世界各地で発生、熱帯地方では大雪が降り、津波による死者は数十万人におよんだ。原因は火星から地球へと伸びる力場チューブだった。火星へと飛来した謎の物体が、火星から地球の大気を盗んでいるらしい。この未曾有の危機に、一人の男が立ち上がった。男の名はカーター・リー-世界的に名高い冒険家だ。プロペラ機による両極間無着陸飛行の途上、南極でこの恐ろしい事件に遭遇した彼は、愛機フェニックス号を駆って大竜巻-力場チューブのなかに飛びこむと、一路火星へと向かったが…表題作「火星ノンストップ」をはじめ、パラレル・ワールドの概念を世界で最初に提示した傑作「時の脇道」、待望の野田昌宏訳による「シャンブロウ」、凍てついた大地にアンモニアの吹雪が吹きすさび、空にナトリウムの爆発がひらめく木星を舞台にした「わが名はジョー」など、全7篇を収録。SF作家としてまた「と学会」会長として知られる編者が、センス・オブ・ワンダーに満ちた珠玉の名作を厳選したテーマ別SFアンソロジー決定版。
憧れの少女エレナとデートしたい…。でも、デートの相手に選ばれるには少女の父親のハートを射止める贈り物をしなくてはいけない、という村のしきたりがありました。貧しい漁師の息子・マルチェロは、ある朝、彼女の父親に贈るとっておきの物を思いつきます。でも、それを手に入れるには、ある“取り引き”が必要だったのです。夢にまで見た彼女と交わす、初めての会話。初めてのデートのときめき。ひたむきな恋心だけを武器に恋の成就を目指して走る16歳の少年。イタリアの海辺の小さな村を舞台に繰り広げられるとってもピュアな初恋物語。
「こんなはずじゃなかった」が母の口癖だった。記憶の中の母は、怒ってばかりだった。そして、私が高校三年のときに父と母は別れた。それから母とはもう、八年近く会っていない。なのに、なぜ今になって戻りたいなんてー。逃れることのできない母娘の確執を描く表題作他、会社を辞めて実家に戻った私が高校生の妹と過ごすあてどない時を描く「十八階ビジョン」を収録。
男の人生はかくも甘美で苦い-。「もしふたりが愛し合っていれば、そこにはハッピーエンドなどはない」「小説を書くときに作家は血の通った人間を創り出すのだ。人物ではなく人間を」など、ヘミングウェイが遺した言葉は今も魅力に富む。その数々を「人生」「異国・祖国」「自然」「楽しみ」「執筆」の五章に分けて収め、背景を鮮やかに読み解く。二十世紀を颯爽と駆け抜けた文学者の濃密な生涯がよみがえる一冊。
横浜医科大学の処理室から一体の屍体が消えた。屍体は江口達夫という医大生のもので、学術解剖用に遺体を提供するという遺書が死後発見されていた。消えた屍体の捜索を依頼された神奈川県警捜査一課の二村永爾は、江口の友人二人を訪ねるが、その数日後、屍体は処理室に戻っていたー。『ロング・グッドバイ』の二村永爾シリーズ第2弾!傑作長編ハードボイルド。
稲生タダシは小学五年生。両親の別居で、東京からママのふるさとの鳥取に引っ越してきた。でも、都会育ちのタダシはいなかの暮らしに馴染めず、学校ではいじめられっ子だ。夏休みが近づいたある日、近所の神社で「麒麟獅子」の祭りが開かれた。その祭りで、タダシは子供たちの憧れの英雄「麒麟送子」に選ばれてしまった!その日を境に、タダシは「妖怪を見ることができる」という不思議な能力を身につけていく。そして、妖怪たちを苦しめる魔人・加藤保憲と戦うことにー!角川映画『妖怪大戦争』原作、痛快無比の冒険ファンタジー。
神尾はるかはM大学の新入生。入学式で、幼なじみの浩子によく似た学生とすれ違い、思わず「浩子?」と声をかけてしまった。しかし、その学生が浩子であるはずはない。浩子は十数年前に故郷の村で行方不明になったままなのだ。浩子が行方不明になった時、村の大人たち全員で捜索したが、ついに発見することができなかった。その後、村にはダムが建設されることになり、浩子の失踪の謎とともに村全体が湖の底に沈んでしまったのだー。十数年の時を経て、失われた村の秘密がはるかの前に姿を現しはじめる。哀切なサスペンス・ミステリー。
「耳無し芳一」「ちんちん小袴」「ろくろ首」をはじめ、ハーンが愛した日本の怪談42編を叙情あふれる新訳で紹介する。江戸時代に詠まれた狂歌を、ハーン自らが解説した貴重なエッセイ「妖怪のうた」も収載。ハーンによる再話文学の世界を探求する決定版。
福井県西端の新興港湾都市・海市。大陸の動乱を逃れて大量の難民が押し寄せ、海市は中・韓・露のマフィアが覇を競う無法地帯と化した。相次ぐ現場警官の殉職に業を煮やした市警の一部が地下組織を作り、警官殺しに報復するテロ組織が誕生した。警官の警官による警官のための自警団。彼らは「P」と呼ばれたー。第5回大薮春彦賞を受賞した、著者渾身の最高傑作。