2005年発売
長期の薬物中毒治療から戻った北見貴秋は、幼馴染みの作家・今川出流が謎の死を遂げたことを知る。「業火」と題された遺作は何を物語るのか。ドラッグによって失われた記憶の中、真実を探す心の旅がはじまる。哀切の書き下ろし長篇サスペンス。
獅子の紋章で封じた招待状を受け、各国の使者達が大陸全土からコーラルに集う。白亜の城では盛大な和平式典が催されるが、その陰でタンガ・パラスト両大国は飽くことなき権力への執念を燃やしていた。偽りの宴と知りつつ、デルフィニアの国王夫妻は敢然と顔を上げ、互いの手を取り広間へと踏みだした。
世界一危険な運び屋兄弟、真と実に拉致されてから早数ヵ月。今では離島で診療所を開く準備をしつつ、兄弟二人から愛されながら暮らす医者の誠巳。そんな彼らのもとにマフィアのドンから、南米で拘留中の息子を救出してほしいという依頼が…。命懸けの脱出劇。さらなる追っ手が迫る。謎めいたその男、マルチェロは逞しく聡明…まさに実の好みで…。デンジャラスで禁忌な四人の旅が続く。
60を過ぎた老批評家ケペシュに美しい乳房を持つ若い愛人ができた。美しい体への執着は、せまりくる老いと生への渇望を想起させ、初めての嫉妬にとらわれる。そして大きな喪失感に苛まれた別れから8年、ふたたび彼の前に現れたとき…。「死にゆく獣」としての男の生と性への執着を赤裸々に描くフィリップ・ロス円熟の代表作。
三十歳を過ぎ、仕事への希望も見出せぬまま、東京で一人虚無的な日々を過ごすデザイナーの暁子は、祖母の遺品をきっかけに耿介という男と知り合う。命ある限りの残酷な愛の記録。真実の愛を知った大人の哀愁漂うラブストーリー。
すべての生産手段が完璧に自動化され、すべての人間の運命がパンチ・カードによって決定される世界…ピアニストの指を拒絶し、あくことなく自動演奏をつづけるプレイヤー・ピアノの世界を描く本書は、『1984年』と『不思議の国のアリス』とのはざまの不可思議な文学空間を生みだした。アメリカ文学の巨匠として熱狂的な支持を受けているヴォネガットが、現代文明の行方をブラックな笑いのうちにつづった傑作処女長篇。
レジスタンスの英雄だった老富豪が、北フランスの館に親族を呼び寄せた矢先に不慮の死を遂げた。数日後、館の地下室から、第二次大戦中のものと思われる人骨の一部が発見される。フランスを訪問中だった人類学教授ギデオン・オリヴァーは、警察に依頼され人骨を調べ始めるが、今度は親族の一人が毒殺された!骨を手がかりに謎を解く、スケルトン探偵オリヴァーの名推理。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
家族連れや若者たちでにぎわうのどかな浜辺。その中に人目をひく赤毛の女性が独りいた。彼女はおもむろに寝そべり、くつろぎ始めた。そして、いつのまにか彼女は首を絞められて息絶えていた。周りには海水浴客が大勢いたにもかかわらず目撃情報は皆無で、犯人の手がかりは波に洗われてしまい、捜査は暗礁に乗り上げた。しかし、ダイヤモンド警視は地道な調査のすえ、女性が犯罪心理分析官(プロファイラー)だということをつきとめる。彼女は警察に協力し、殺人犯の正体を暴こうとしていた。その犯行とは、人一人を殺害し、現場に暗く情念的なコールリッジの詩の一節を残してゆくという不気味なものだった。ダイヤモンドは殺人犯の行方を追うが、まもなく次の殺人予告が…。ダイヤモンド警視と異常殺人鬼の熾烈な駆け引きを描き出したシリーズ最新作。
伊豆・天城トンネルの取材に来ていた雑誌記者・西東南は、川端康成の文学碑の傍で若い女性の殺された死体を見つけた。鮮やかな桜色のスーツに身を包んでいたが、顔が無惨に潰されていた。死体の身元は誰か?犯人はなぜ被害者の顔を潰したのか?静岡県警の村嶋なつみ刑事とともに、南は事件の解明に乗り出してゆく。容疑者はすぐに浮かんだように見えたが…。
時は鎌倉時代。武門の身を捨て十三歳で出家した一遍は、一度は武士に戻りながら再出家。かつての妻・超一房や娘の超二房をはじめ多くの僧尼を引き連れ遊行に出る。断ち切れぬ男女の愛欲に苦しみ、亡き母の面影を慕い、求道とは何かに迷い、己と戦いながらの十六年の漂泊だった。踊念仏をひろめ、時宗の開祖となった遍歴の捨聖一遍が没するまでの、波瀾の生涯をいきいきと描く長編小説。
オンボロ車でふらりと牧場に乗りこんできたカウガール、友人の姉と恋におちる15歳の少年、泥棒を殺害した移民と奇術師の友情、トラックが故障してひまわり畑で立ち往生する兄妹ー表舞台とは無縁の彼らにも人生の落とし穴があり、喜びと悲しみの溢れる一瞬がある。孤独、挫折、そして愛をかみしめながら生きる人々の姿を、シンプルな文章と独特のリズムで丁寧に描いた短篇12作。
高校卒業以来、他人を騙し、裏切り、蹴落とすことでスーパー・エリートとなったヘンリー。だが、自分を捨てた恋人を見返すべく戻った故郷で、彼女が当時、死期が近いとすでに悟っていたことを知らされる。絶望感に包まれ、ホテルのバルコニーへと歩を進めるヘンリー…と、その背にメイドの声。「すべてにきっちり片をつければいいのよ」こうして彼女との奇妙な贖罪ツアーが始まった。
元MI6工作員のハーランドが乗った小型ジェット機が墜落ー彼はその事故の唯一の生存者だった。事故直後、彼はFBI及びMI6の元同僚の接触を受ける。犠牲になった彼の友人で、元CIA工作員グリズウォルドに両者は強い関心を示した。ハーランドは危険を承知で独自の捜査を開始した。そんな折り、彼はある若者から驚くべき話を聞かされる。新時代の鮮烈エスピオナージュ誕生。
グリズウォルドは、旧ユーゴスラヴィアで大物戦犯を追い詰めていたことが判明。また謎の若者トマスは、自分はハーランドの息子で、母はチェコの諜報員だと主張。さらに彼は戦犯の情報も握っていた。しかしトマスは何者かに狙撃されてしまう。ハーランドは墜落事故が自分と友人を狙った破壊工作だと確信。彼は真相究明のため、懸命に封印していた過去の記憶を必死に呼び起こすー。
いつ、いかなる時、何を殺生しようがお咎めを受けるいわれはござらぬ。殺生お構いなし斬り捨て勝手の殺生方に新たな奉行がお目見えした。織部多聞、人呼んで“かぶきの多聞”。徳川の世も三代目にあたり盤石に見えたが、現世を憂える軍学者・由比正雪一党の企みによって、不穏な事件が相次いでいた。多聞もいつしか事件に巻き込まれていく。反骨のかぶき奉行が揮う剛剣ー柳生流兜割りが悪を断つ。