2005年発売
七世紀の玄奘三蔵による仏教経典取得の旅行記『大唐西域記』から生まれ、その後民間で発達した説話を、明代になってまとめた中国四大奇書の一つ。第1巻は、悟空の誕生から、天宮で傍若無人に振舞うさまを描く。各冊十回ずつを収録。
珍しく棉のような雪が静かに舞い降りる宵闇、一九四三年の満洲で梶と美千子の愛の物語がはじまる。植民地に生きる日本知識人の苦悶、良心と恐怖の葛藤、軍隊での暴力と屈辱、すべての愛と希望を濁流のように押し流す戦争…「魂の底揺れする迫力」と評された戦後文学の記念碑的傑作。
突然の父の事故死、ナンパやパチンコに明け暮れた日々、転職をくり返したサラリーマン時代、そしてついに、ひきこもりへ…。20代の紆余曲折を描いたこの自伝的物語は、目標を持てず、出口の見えない青春を過ごす若者たちへ贈る著者のエールだ。37歳で医師になった著者が、30歳で医学部受験を決意するまでの迷いと挫折の日々が、心に残る七つのメロディーと共に今よみがえる。
迷惑な妄想逆ギレ男が、夫の帰りを正座して待つ壊れた妻が、生き地獄を味わう可憐な美少女が、虐待される寝たきり老人が、自己の中心で愛を叫ぶ!勝手気ままに狼藉の限りを尽くす面々をあなたは愛せるか!エンターテインメントの旗手・新堂冬樹が「ここまで書くか!」とばかりに練り上げた、強烈すぎるキャラクターと刺激的なストーリー。
美人プロテニス選手・中野美代子の死体が伊豆下賀茂で発見された。十津川警部が下賀茂に急行するも、間もなく彼女のコーチ、大会スポンサーの社長が連続して惨殺されてしまう。その死体の傍には下賀茂の名物「メロン最中」がなぜか残されていた。捜査本部が翻弄されるなか、第四の犠牲者が発見され…。犯人の目的は一体何なのか?十津川と怜悧な連続殺人犯との熾烈極まる攻防戦!傑作長編ミステリー。
鎌倉幕府に対し単独で兵を挙げた楠木正成は、一千の兵で千早城に篭り、数万の軍からの攻めを半年以上も凌いできた。この楠木軍の奮闘が、反幕府の精神的な支えとなり、隠岐に配流されていた後醍醐天皇が、島からの脱出を決意する。厳重に警護されている天皇を連れ出し、小さな舟で激しい海流の中を進む、無謀ともいえる脱島計画は成功するのか!?血の匂い立つ激動の時代を描いた、歴史大河小説。
後醍醐天皇の鎌倉幕府討伐軍に、全国から数々の武将が加わってきた。鎌倉幕府の中心にいた新田義貞、足利高氏も叛旗を翻し、後醍醐軍に加勢する。一気に敗勢に回った鎌倉幕府軍は、とうとう鎌倉に追い込まれた。三方を山に囲まれた地形を活かした幕府軍を攻めきれない新田義貞は、敵の意表をつく作戦を展開するが…。未曽有の動乱の時代を描いた、歴史大河小説。
ラブホテルの一室で殺人事件が起きた。殺人現場で犯人として名乗り出たのは、まだあどけなさの残る女子高生。この事件の捜査にあたった三河刑事のもとに、「事件から手を引け」という脅迫状や爆発物が届けられて(「明日なき十代」)。表題作「明日なき十代」をはじめ、「泳ぐひと」「たそがれの維納」「愛情の瞬間」と、懐しの名画からタイトルを借りた珠玉の短編ミステリー四作を収録。
わんぱく少年トムは、宿なしっ子ハックを相棒に、騒動を巻き起こす。海賊気どりの家出、真夜中の殺人の目撃、洞窟で宝探し、そして恋。子供の夢と冒険をユーモアとスリルいっぱいに描く、少年文学の金字塔。
次期首相の本命と目される大物代議士を父にもつ柴田龍彦。彼は、四年前に起こした不祥事の結果、精神に失調をきたし、父の秘書を務めながらも、日々の生活費にさえ事欠く不遇な状況にあった。父の総裁選出馬を契機に、政界の深部に呑み込まれていく彼は、徐々に自分を取り戻し始めるが、再生の過程で人生最大の選択を迫られる…。一度きりの人生で彼が本当に求めていたものとは果して何だったのか。『一瞬の光』『不自由な心』に続く、気鋭の傑作長編。
咲子はかつて、人間が植物として存在している“楽園”の住人だった。掟に従い、何度も生まれ直しては恋を繰り返していたが、裏切りを働いたため、この世へと追放される。やむなく結婚情報誌のライターとして働き、区役所勤めの陽一と34歳で結婚。しかし咲子はなぜか猛毒アルカロイドを陽一に与え始める。それは楽園を追われた者の運命だった-。植物の毒と甘い蜜に彩られた恋人たちの物語。
300勝達成を目前に苦闘する老いたスタルヒン投手に悲願を叶えさせるため、ひとたび間違えば大きな災いが襲うことを承知で密かに南洋の呪術を使う男の話「枯葉の中の青い炎」。1カ月だけ愛人と同棲したい、という夫の望みを聞き入れてやる妻が妖しい「ちょっと歪んだわたしのブローチ」。奇妙な匂いに誘われて、妻の妹をレイプしてしまった男のモノローグ「水いらず」。野球に天才的な能力を持ちながら不幸な人生をおくった同級生を、深い哀切の思いを込めて追想する「野球王」など、全6篇。