2005年発売
主人公のチャンスは孤児である。生まれてすぐ偶然にも大富豪に拾われ、庭師として育て上げられた。屋敷と庭から一歩も外に出たことがない。学校にも通ったことがない。読み書きもできない。庭仕事をしている以外は、ひたすらテレビを見ている。ところがある冬の日、主人が死んでしまい、生まれて初めて外の世界に出ることに…。童話のような、寓話のようなおかしなおかしな一週間の物語。映画『チャンス』の原作、27年ぶりに新訳で復刊。
舞台は南の島。イルカがすむ島として脚光を浴びる巌倉島で、比嘉涼子は、環境保護団体の一員として生態調査に従事していた。そのかたわら環境客向けのドルフィン・スイムなどの世話をしていた。そこに新しいダイバーとして雇われた葛西拓海がやってきた。イケメンの彼は何かとトラブルの元。彼は、かつて潜水中の事故でバディを死なせてから潜れなくなっていたという。そんな折、イルカが数頭、浜に打ち上げられる。原因は不明。そしてシャチの出現!平和だった島に波紋がひろがっていく…。直木賞・山本周五郎賞ダブル受賞から半年、注目のストーリーテラー、最新長編。
ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。僕は町役場から敵地偵察を任ぜられた。だが音も光も気配も感じられず、戦時下の実感を持てないまま。それでも戦争は着実に進んでいたー。シュールかつ繊細に、「私たち」が本当に戦争を否定できるかを問う衝撃作。第17回小説すばる新人賞受賞作。
みのり、31歳、独身。元カレが結婚すると知ったその日から、原因不明のふるえに襲われた。病院でも異常は見つからない。行き着いた先は漢方診療所。独特の視点を持つ東洋医学に戸惑いながらも、自分に何が起きているのか答を探していく、みのり。症状…失恋?ストレスに効くあなたのための処方箋(ストーリー)。第28回すばる文学賞受賞作。
時は享保年間、信州松本城で秘伝の忍法を披露した筑摩組の忍びの者二人。松本城主戸田家の姫君の密命を受け二人は勇躍して出かけるのだが…表題作を含む全八篇の傑作忍法帖。
魔導戦争の隙間にあるその非武装地帯には、見せ掛けと偽りの享楽と笑顔の陰でいつも血塗れの陰惨な事件がつきまとう。積み重ねられし数十年の悲劇の果てに訪れた大破局に、大地は裂け、街は震撼し、人々は喪った夢を想う…そしてすべてが終わったはずの廃墟にやってくる仮面の男がもたらす残酷な真実は、過去への鉄槌か、未来への命綱かー。
あらゆる諜報機関から極秘データを盗み出して作られた、驚愕のコンピュータソフト。その争奪戦に巻き込まれた男の運命は?膨張するネット社会への恐怖と人の心の強さを問いかける、大沢在昌のサスペンス巨編。
昭和二十年、日本が滅亡に瀕していた夏。崩壊したナチスドイツからもたらされた戦利潜水艦・伊507が、男たちの、国家の運命をねじ曲げてゆく。五島列島沖に沈む特殊兵器・ローレライとはなにか。終戦という歴史の分岐点を駆け抜けた魂の記録が、この国の現在を問い直す。第22回吉川英治文学新人賞受賞。
この国に「あるべき終戦の形」をもたらすと言われる特殊兵器・ローレライを求めて出航した伊507。回収任務に抜擢された少年兵・折笠征人は、太平洋の魔女と恐れられたローレライの実像を知る。米軍潜水艦との息詰る死闘のさなか、深海に響き渡る魔女の歌声がもたらすのは生か死か。命の凱歌、緊迫の第2巻。