2006年1月発売
定年退職後、平凡な人生を楽しむ夫に肺癌の診断が下されたー。看護の現場に長く携わり、多くの病人やその死と向かい合ってきた妻は、突然の身内の発病にうろたえる。誰にもぶつけようもない後悔と悲しみ、不安、怒り…。そして、手術はしないと決断した夫とともに、夫婦二人の「生きる」闘いが始まった。医療小説の第一人者が自らの体験を基に描く問題作。看護とは、家族とは?さらに、医療従事者や終末医療のあり方をも問う。
慶長七年(一六〇二)陰暦十月、常陸国北限、小生瀬の地に派遣された大藤嘉衛門は、野戦場の臭気が辺りに漂う中、百軒余りの家々から三百名以上の住民が消えるという奇怪な光景を目の当たりにする。いったいこの地で何が起きたのか?嘉衛門はやがて、地元の者が「カノハタ」と呼ぶ土地に通ずる急峻な山道で、烏や野犬に食い荒らされるおびただしい死体を発見した。恭順か、抵抗かー体制支配のうねりに呑み込まれた土豪の村の悪夢。長く歴史の表舞台から消されていた事件を掘り起こし、その「真実」をミステリアスかつ重厚に描いて大絶賛された戦慄の物語。
「殺さば殺せ!だが私を斬るなら呪ってやるぞ」安房国の悪評高き妖女・玉梓は、里見家の伏姫を前に叫んだー。世は戦国。玉梓に呪われた里見家は窮地に陥り、伏姫は自害する。だがその胸元からは八つの水晶珠が飛び去った。仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌の文字がそれぞれ浮かび上がる八つの珠は、八人の勇者の手に渡っているという。呪いを解き、いくさを収める力となる八人の犬士を求めて、里見家の金碗大輔は旅立つ。大森美香脚本によるTBSドラマ「里見八犬伝」を原案に、気鋭の時代小説作家、植松三十里が書き下ろした伝奇エンターテインメントの傑作。
伊豆・鳥島の東北東で一夜にして小島が海中に没した。現場調査に急行した深海潜水艇の操艇者・小野寺俊夫は、地球物理学の権威・田所博士とともに日本海溝の底で起きている深刻な異変に気づく。折から日本各地で大地震や火山の噴火が続発。日本列島に驚くべき事態が起こりつつあるという田所博士の重大な警告を受け、政府も極秘プロジェクトをスタートさせる。小野寺も姿を隠して、計画に参加するが、関東地方を未曾有の大地震が襲い、東京は壊滅状態となってしまう。全国民必読。二十一世紀にも読み継がれる400万部を記録したベストセラー小説。
とにかくその日が来る前に。政府は日本人全員を海外へ移住させるべく、極秘裏に世界各国との交渉に入った。田所博士は週刊誌で「日本列島は沈没する」と発言して、物議をかもしていた。小野寺は極秘プロジェクトからはずれて、恋人・玲子とともにスイスに旅立とうとするが、運悪く玲子は、ついに始まった富士山の大噴火に巻き込まれ行方不明となってしまう。そして、日本沈没のその日は予想外に早くやってきた。死にゆく竜のように日本列島は最後の叫びをあげていた。日本人は最悪の危機の中で、生き残ることができるのか。未来をも予見していた問題作。
東北の小さな町の寺に勤める僧・浄念は、躁鬱に苦しみつつ薬と酒の力を借りて法要をこなす毎日。不惑間近となったいま、学生時代にのめり込んだバンドへの情熱が心を占める。やっと実現にこぎつけたライブのステージで、強烈な恍惚感とともに降りてきた啓示の正体は…。精神を病みロックに没入する僧が、祝祭の只中で感じた歓喜と安らぎ、心のひそやかな成長を描く芥川賞受賞第一作。
1943年7月、ヒトラーは最後の賭けに出たー。中央ロシア平原クルスクの陥落を狙って“ツィタデレ”作戦の実施を決断。最新鋭のティーガー6号戦車を続々と前線に集結させていた。そのうちの10輛は“アドルフ・ヒトラー”師団のべガ大尉が指揮していた。彼は先のレニングラード包囲戦で重症を負い、今回の任務には強硬な決意で臨んでいた。史上最大の激烈な戦車戦を描いた巨編。
クルスクをめぐる死闘のため、ソ連軍は3000輛以上のT-34戦車を準備していた。その一台に搭乗するのが、老コサック人操縦手ディミトリイと息子で戦車長のワレンティーンだった。さらにディミトリイの娘も、女性だけで編成された夜間爆撃飛行隊“夜の魔女”の操縦士だった。そしていよいよ戦闘の火蓋は切られた。ドイツ兵80万人、迎え撃つソ連兵150万人が歴史と名誉をかけて衝突する。
セアは、故郷デスティニーに帰ってきたくはなかった。10年前、父に反抗して家を出た彼女は、いまやサンフランシスコで超売れっ子のインテリア・コーディネーター。弟の自殺の報せがなかったら、二度とこの地に戻ることはなかった。だが弟の死には他殺の疑いもあると知り、真相を突き止めるまで、「運命」という名のこの町に留まることに…。父と子の絆をめぐる本格ラヴ・サスペンス。
セアは、父の工場の顧問弁護士ベックと情熱のおもむくままに激しいキスを交わしてしまった。甘い恋の罠に落ちていく彼女の心は乱れる。労働環境の悪化が進む工場では、従業員の事故が相次いでいるというのに、心惹かれる彼は鬼のような経営者、父の側の人間なのだ。やがて労働争議が始まった。そして、兄のクリスが弟殺しの容疑者としてあげられて…。灼熱の愛に燃える野心作。
女優のように美しかった韓国の女子大生、イ・チソンを襲った悪夢の交通事故。顔も体も、全身の55パーセントが黒焦げになる大火傷を追った彼女は絶望の淵で叫びました。「お兄ちゃん、わたしを殺して。こんなになって生きていけないわ!」。それから五年ー。『チソン、愛してるよ。』が日韓でベストセラーになって間もなく、チソンはシアトルに一年間語学留学し、今年二〇〇五年の三月、ボストン大学大学院に合格しました。リハビリテーション・カウンセラーになる夢に一歩一歩近づいています。きょうも幸せです。