2006年発売
いま府内を騒がしているのは“人を殺さず、蔵に傷付けず”という盗賊。父丈右衛門の「向こうがしの喜太夫ではないか」との助言に奔走する文之介だったが、先輩吾市が故あって獄中に入れられたうえ、鉄火娘さくらが現れ、てんてこ舞いに…。
比類ない自然描写の美しさで知られる19世紀オーストリアの作家シュティフター、その代表的短篇集『石さまざま』全訳版(上下2巻)をここに。上巻では、作家自身の芸術的信仰告白ともいうべき「序文」、幼いころの鉱石蒐集の想い出が反映している「はじめに」、ボヘミアの森の風物を背景に、故郷での想い出を紡いだ「花崗岩」、不毛の地に暮らす貧しい司祭の、隠れた美しさを描く「石灰石」、姦通とそれへの呪詛という人間のまがまがしい情念に巻きこまれた子どもが、愛ある女性によって救われる「電気石」を収録。
新しい思想を持ち、人間主義の教育によって不合理な社会を変えて行こうとする被差別部落出身の小学校教師瀬川丑松は、ついに父の戒めを破って自らの出自を告白する。丑松の烈しい苦悩を通して、藤村は四民平等は名目だけの明治文明に鋭く迫る。
日露戦争前夜、女医の診察室に忍ぶ流れ者の男。いけない事と分かっていても、年下の男との甘美な情事に溺れてしまう…。老舗呉服屋の養女は美しく我侭な娘に育つ。やがて若い歌舞伎役者に惚れこんで、ふしだらな逢瀬を重ねてゆく。その奔放な火遊びの結末は…。
友人の作家・有栖川有栖と休養に出かけた臨床犯罪学者の火村英生は、手違いから目的地とは違う島に連れて来られてしまう。通称・烏島と呼ばれるそこは、その名の通り、数多の烏が乱舞する絶海の孤島だった。俗世との接触を絶って隠遁する作家。謎のIT長者をはじめ、次々と集まり来る人々。奇怪な殺人事件。精緻なロジックの導き出す、エレガントかつアクロバティックな結末。ミステリの醍醐味と喜びを詰め込んだ、最新長編。
「北のほうがらよ、何かよくねえもんが通って行っただ」恐山のイタコ・杉山サキの予言どおり、孫の音楽教室教師・博之の死体が、東京の自宅で見つかった。続いて作曲家の高川が変死する。二人は、「北から来る男」を恐れていたという。真相究明を依頼された浅見光彦は、呼び寄せられるように「北」へ向かう。東北と東京を結ぶ連続殺人に、名探偵・浅見光彦が挑む。
壇ノ浦から落ちのびた平家の美しい官女が、あやまって足をすべらせ、水の底へ…。その怨念を秘める幽霊藻(「水鬼」)。弁護士試験の会場に、決まって現れる痩形で背の高い、髪の毛の白い女とは?(「白髪鬼」)。雪降る宵、からだじゅう真っ白になりながら、大溝のふちに坐る婆の正体は?(「妖婆」)。人々を妖気漂う幻想の世界に導く、名作十三編を収録。
時は戦後まもなく。ある地方都市での出来事。占部製糸は紡績会社としては名の売れた企業だった。占部製糸では、双子がトップにつくと栄えるという歴史があり、社長は、かつて仲違いをした弟の双子の息子たちに会社を継がせた。しかし、その双子の兄弟は、あることから諍いを起こし、弟は家を出た。弟は東京で整形手術を受け、行方をくらませた。そして、その弟から兄への殺人予告が届く。社長である兄からボディーガードを依頼された川宮兄妹だったが、寝ずの番に就いたその夜に兄は殺されてしまった。弟が殺したのか……。容疑者にはアリバイがあり、捜査は遅々として進まない。そして、第二の殺人が起こった。
あこがれの宇宙基地に連れてこられたミノルとハルコ。”電波幽霊”の正体をつきとめるため、キダ隊員とロボットのプーボと訪れるのは不思議な惑星の数々。広い宇宙の大冒険。傑作SFジュブナイル作品!
脳を残して全て人工の身体となったムント氏。ある日、外に出ると、そこは動くものが何ひとつない世界だった(「凍った時間」)。SFからミステリ、時代物まで、バラエティ豊かなショートショート集。
小松左京『日本沈没』のパロディで、日本列島以外の文明を持った人類が住む陸地ほぼすべてが沈没してしまった世界を舞台に、唯一残った日本へ殺到する、世界の著名人の悲惨な境遇と世界で一番偉い人種となる日本人と三等市民である外国人の軋轢を描いた小説。第5回(1974年度)星雲賞短篇賞受賞作品(ちなみに長編賞は『日本沈没』)。 2011年、原因不明の天変地異でアメリカ大陸が1週間で海に沈む。大統領はじめ国外脱出しようとする人々で大混乱に。をの後、中国大陸、ユーラシア大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸が沈没。田所博士は日本列島だけが無事だった理由を解明していた。避難民で人口の増えた日本社会はどうなるのか。食料問題、移民問題、独裁者によるテロ行為……。そして田所博士は日本も沈むと予言する。作品の完成度の高さに小松左京を嫉妬させた、世界が舞台の未曽有のパニック小説。2006年、映画化。
都会のしがらみから離れ、海辺の街で愛犬と静かな生活を送っていた松原龍。ある日、龍は浜辺で一人の見知らぬ女と出会う。しかしこの出会いが、龍の静かな生活を激変させた……!
つかの間の時間を過ごしただけなのに、また、彼女の隠された素性を知ってもなお、どうしようもなく彼女に惹かれる龍。彼女を追って軽井沢、石垣島と、静かなる男の激しい戦いが始まるーー