2007年1月発売
一八九四年長崎、蝶々さんと呼ばれた芸者の悲恋から全てが始まった。息子JBは母の幻を追い、米国、満州、焼跡の日本を彷徨う。三代目蔵人はマッカーサーの愛人に魂を奪われる。そして、四代目カヲルは運命の女・麻川不二子と出会った刹那、禁断の恋に呪われ、歴史の闇に葬られる。恋の遺伝子に導かれ、血族四代の世紀を越えた欲望の行方を描き出す画期的力篇「無限カノン」第一部。
風呂上りの火照った肌に鮮やかな刺青を躍らせた猛々しい男たちが、下穿き一つで集い、日々酒盛りに明け暮れる三村の家。人面獣心の荒くれどもの棲む大家族に育った幼い駿は、ある日、若い衆が女たちを連れ込んでは淫蕩にふける古びた離れの家の一隅に、幽霊がいるのに気づくのだった。湾の見える町に根を下ろす、昭和後期の地方侠家の栄光と没落のなかに、繊細な心の成長を追う力作長編。
恋愛経験ゼロのオタク青年が、電車内で酔っ払いに絡まれた美女を助けた。やがて彼女からお礼の品が!お近づきになるにはどうしたら…。困った彼はネットの掲示板に助言を求めた。意外にも、まるで自分のことのように彼「電車男」を応援する掲示板の住人たち。彼らに勇気をもらい、電車男は立ち上がる!日本中を熱狂させた奇跡の純愛物語。電車男が自ら語る後日譚のオマケ付き。
「Yes,I am.I am a Japanese.(えーっと、ホントは違うんですけど)」。在日韓国人三世の崔奈蘭は、中学高校の6年間だけ「前川奈緒」だった…。国と名前をめぐって編まれた三つの物語と、パソコンから見つかった未完の遺稿を含む鷺沢萠の絶筆。35歳の若さで世を去るまで、きりりと明るく、人間を深く肯定する物語を届け続けた希有な才能が、いま作品のなかに永遠の生を得て、光り輝く。
道化者、悪戯者、詐欺師、暴力の化身、色欲魔、純粋少女ーこれらのトリックスターたちが、中国の五大長篇小説『三国志演義』『西遊記』『水滸伝』『金瓶梅』『紅楼夢』の物語世界において、どんな役割を果たしているかをたどり直す。
感染者の精神だけでなく肉体をも変貌させる奇病、A(アゴニスト)異常症患者ー俗に言う“悪魔憑き”が蔓延る世界。左腕を失った男、石杖所在と、漆黒の義手義足を纏い、天蓋付きのベッドで微睡む迦遼海江の二人が繰り広げる、奇妙な“悪魔祓い”
父の失踪の謎を求めて降り立った上海で、運命の女と出会う。女は中国政府に追われる身。「女と良心の呵責を両腕に抱いて生きる」とうそぶいた父をなぞるかのように、危険な恋の扉が開かれる。逃避行の挙句の別れと再会。大胆にして甘美、華麗なロマンスは国を越え、政治に逆らって、もっとも美しいラストへと突き進む。
恵美子はナポリ滞在中に風変わりな男を紹介された。舞台美術家・ドニ鈴木。250年前のオペラ歌手の生れ変りと称するドニは、妖しく強烈な精気を放っていた。彼の妄言を受け流そうとするも、その魔力に翻弄されてしまう恵美子。やがて恵美子の恋人をも巻き込んだ三角関係は性も時空も超えた官能へと発展する。
宝塚の娘役である千花は、歌舞伎界のプリンスと目される梨園の御曹司と、親友でライターの萌は歳の離れた評論家と、それぞれの恋を謳歌している。だが、花の盛りのように美しいヒロイン達の日々は、現実の退屈さや挫折、裏切りによってゆっくりと翳りを帯びていく。甘く苦い青春を描いた傑作恋愛長篇。
「昔の親は、家族の幸せを思うとき、何故か自分自身は勘定に入ってなかったんだよねえ…」。女手ひとつで娘を育てた母は言う。そんな母の苦労を知りつつ反発する娘が、かつて家族で行った遊園地で若かりし日の両親に出会う。大切なひとを思い、懸命に生きる人びとのありふれた風景。「親子」「夫婦」のせつない日常を描いた傑作短篇集。
「俺、何かに対して本気になれるのかな?」何事にも本気になりきれない高校生・高村コウ。そんな彼は一人のゲーマーに出会い、“己の本質”と真剣に向き合うことになる。将来の進路を考え決めていく友人や幼馴染み。変わっていく周囲の人間関係の中で、彼の答えはどこにあるのかー。「-敢えて問いますが、君は、ゲームが好きですか」。『終わりのクロニクル』『都市シリーズ』の川上稔が贈る最新作。
あらゆるゲームの中で、難度の高いシューティングゲームを縦横にプレイ出来る者だけが持てる最高の攻撃手の称号であり、そしてゲームが出来ない人々を絶対に楽しませることが可能な、…ゲームセンター最強の守り手の呼び名連射王。-と、そういうべきかしら。そして、少年は己の本気を試し始めるー。川上稔が贈る最新作。
深夜、当直の外科医・浅倉は、肩に大怪我を負った男…志波を診ることに。志波は元ヤクザで今は一匹狼の便利屋だった。「先生、男を知ってるだろ」-惚れた…と臆面もなく囁き、浅倉の心の隙間にすっと入り込んでくる志波。そんな折、浅倉のかつての恋人で研修医時代の指導医、三枝が急死。遺された研究データを巡って、浅倉はいつしか抗争の渦中にいた…。