2007年3月発売
永年率いた社会人野球の名門チームからの引退を、自ら育てた後輩に告げられた老監督、亡くなった夫の好きだった野球を始めた息子がベンチで試合を見つめる姿に複雑な思いを抱く若い母親、母と自分を捨てて家を出た父親との再会を躊躇う男…。誰にも訪れる切ない瞬間によぎる思いを描いた、直木賞受賞作。
寛政の江戸を跋扈する悪党どもに立ち向かう、若き火盗改・近藤重蔵。猿遣い名人、お高祖頭巾の大年増、鍵言葉に突っ転がし、さらに、重蔵なじみの飯屋に因縁の謀が。世を騒がせる怪事件を、冴え渡る推理で解決する。そして、重蔵の身辺に忍び寄る女の影…。痛快無比、大評判の傑作時代小説シリーズ第三作。
中学生の獅見朋成雄はオリンピックを目指せるほどの駿足だった。だが、肩から背中にかけて鬣のような毛が生えていた成雄は世間の注目を嫌い、より人間的であることを目指して一人の書家に弟子入りをする。人里離れた山奥で連日墨を磨り続けるうちに、次第に日常を逸脱していく、成雄の青春、ライドオン。
十八歳で藩主斉彬の養女となった篤姫は薩摩島津家分家に生まれた学問好きな姫であった。その才覚、器量を見込んだ斉彬は画策の末、篤姫を十三代将軍家定の正室として江戸城に送り込んだ。形ばかりの結婚に耐え、病弱な夫を支え将軍御台所として大奥三千人を見事に統べる篤姫には、養父斉彬の密命が…。2008年大河ドラマ原作。
将軍家定の急死、継嗣をめぐる幕府内の対立、養父斉彬の死。篤姫は、家定との結婚が斉彬の遠大な野望であったことを知り慄然とする。天璋院となったのちも総帥として大奥を統べ、皇妹和宮の降嫁、大政奉還等、激動の幕末を徳川家の人間として徳川宗家のために生き抜いた篤姫の偉大な生涯を描いた歴史長編。
医者を親に持つ僕と羅は、反革命分子の子として山奥で再教育を受けることになった。厳しい労働にもめげず、僕らは仕立屋の美しい娘に恋をした。僕らは禁書のバルザックを手に入れ、その小説世界に夢中になった。親友の羅はバルザックの語る壮大な冒険を、哀しい恋の物語を娘に読み聞かせ、ふたりは親密になっていくが…。文化大革命の嵐が吹き荒れる中国を舞台に、在仏中国人作家がみずからの体験をもとに綴る青春小説。
井の頭公園に湧く水をたどりながら、僕たちは海まで歩くーそれは、永遠の夏休みのはじまりだった。ひととひととがつながりあうミラクル。おだやかな熱に包まれる再生の物語。
深手を負い、記憶を失った青年クリスタを襲った犯人は…?血脈の業がもたらす悲劇の連鎖をアデリエンは断ち切れるのか?ミステリータッチの新しいファンタジー・ノベル。剣と魔法のファンタジーに食傷気味の人に贈る、剣と魔法のファンタジー。
隠岐島に流罪となった後醍醐天皇が旅の途次、美作出雲街道近くのとある小さな村に逗留された。そこには帝も愛でたという壮麗な桜が今に残る。しかし、その桜には村の若い男女の悲しい恋の物語が…。
江戸で始末屋を営む室井十郎太と秀二郎に遅い春が訪れようとしていた。愛するお凛との祝言を控えた十郎太は、忙しい日々を送っていた。だがその矢先、お凛が十郎太に恨みを持つ博徒の一家に攫われてしまう。お凛を人質にとった博徒は、十郎太に香具師の元締と同心の暗殺を要求してきたのだ。卑劣な博徒たちを倒し、お凛を救うため、十郎太は乾坤一擲の策を講じるがー。十郎太とお凛の命運はいかに!?大好評書き下ろし時代長篇。
錺職人の夫が急逝し、義理の子供たちから家を追い出されてしまった後添えの八重。先妻の子・おみちと日本橋堀江町に引っ越して小間物屋を開いた。血のつながりはないが、実の親子のように仲の良い二人。新しい生活は希望に満ちていた。しかし、向かいに岡っ引きでも手を焼く猛女のお熊が住んでいたからたまらない。しかも、この鼻摘まみ者の息子におみちが気のある様子。頭を悩ます八重のもとに、自分たちを追い出した義理の息子が金の無心に現われて…。
心に茨を持った小学五年生・供犠創貴と、“魔法の国”長崎県からやってきた転入生・水倉りすかが繰り広げる危機また危機の魔法大冒険!“最後の一人”から驚愕の誘いを受けた創貴はー!?これぞ「いま、そしてかつて少年と少女だった」きみにむけて放つ、“魔法少女”ものの超最前線、「りすかシリーズ」第三弾。
人類は誕生と同時に「虚構」を生みだし始めた。原始の昔に口承された物語から、現代最先端のヴァーチャル・リアリティまで、それは我々の文明に寄り添うように今も確かに存在する。先史時代の洞窟、六歌仙のサロン、戦国時代の戦場、現代のTVスタジオ…著者もまた時空を超えて「虚構」を追い求めてきた。作家の個体進化をたどることで、人類文明の系統進化を仮想体験する稀有の作品集。
環境破壊と貧窮のうちにゆっくりと滅びつつある近未来の日本。老夫婦が辿りついた理想の“終の棲家”とは(表題作)。現在・過去・未来にわたり、すべての生きとし生けるものに等しくやってくる終末の風景を、時に叙情的に、時に黒い笑いを交えて直木賞作家は描き出す。もしかしたらそれは、明日のあなたのことかもしれないー甘美な破滅と残酷な救済が織りなす、8つのものがたり。
壬申の乱に勝利した天武天皇は、聖徳太子以来の理想である律令国家建設へ向け、さまざまな改革に着手した。その路線を継承し完成させたのが、大化改新の立役者である父・中臣鎌足の志を継いだ古代日本最高の政治家、藤原不比等だった。大宝律令の制定、正史「日本書紀」の編纂、そして万葉歌人がその繁栄をうたいあげた平城京建都まで、日本民族の国家完成を描く。日本書紀の世界を再現した「古代からの伝言」シリーズ、堂々完結。
六本木にそびえる東京ミッドタウン。多くの大使館がひしめき諜報員が暗躍する街を見おろす華やかなタワーに秘められた罠に、元女性自衛官初の戦闘機パイロット、今は臨床心理士の岬美由紀が挑む!盗まれた最新鋭攻撃ヘリの謎、大切な人の命と国家の命運を賭けて挑むカードゲーム、そして迫真の心理戦。動体視力を封じられ、生涯最大のピンチに陥った美由紀の運命は?!新シリーズ書き下ろし第4弾は徹夜必至の急展開。