2007年3月発売
壬申の乱に勝利した天武天皇は、聖徳太子以来の理想である律令国家建設へ向け、さまざまな改革に着手した。その路線を継承し完成させたのが、大化改新の立役者である父・中臣鎌足の志を継いだ古代日本最高の政治家、藤原不比等だった。大宝律令の制定、正史「日本書紀」の編纂、そして万葉歌人がその繁栄をうたいあげた平城京建都まで、日本民族の国家完成を描く。日本書紀の世界を再現した「古代からの伝言」シリーズ、堂々完結。
六本木に新しくお目見えした東京ミッドタウンを舞台に繰り広げられるスパイ情報戦。巧妙な罠に陥り千里眼の能力を奪われ、ズタズタにされた岬美由紀、絶体絶命のピンチ! 新シリーズ書き下ろし第4弾!
娘ざかりのおいとは、江戸入船町の裏店で古着屋をいとなむ父と二人暮らし。隣に住む幼なじみの龍次を恋慕っていたが、上方へ年季奉公に行ってしまった。それから三年、待ちこがれた龍次が、突然帰ってきた。だが、女が一緒で…。町娘の熱い想いを綴る表題作ほか、武家の若妻が官能の目覚めに懊悩する「路地の奥」など全四篇を収録。男を惑わす江戸の女たちを鮮やかに描く傑作時代小説集。
「寛は何を集めているの?」と鈴子が聞いた。「昆虫」と寛は適当に答えた。「何と何を捕ったの?」「まだ。夏休みは始まったばかりだろう。もう宿題をやっているのか?」「夏休みはあっという間に過ぎるのよ」少年にしか見えないこの世界の真実を描く、芥川賞作家の書下ろし長編小説。
主婦の典子は、娘との関係がうまくいかないことで悩んでいた。そんなある日、典子のもとに、中学時代の交換日記が届く。差出人の名前はないが、最後に日記を書いていたのは、メンバー四人の中でリーダー格だったハセジュンこと長谷川淳子だった。ところが、テレビで淳子が他殺体で見つかったとのニュースが。一週間も前に殺された淳子が、日記を送れたはずなどない。これは誰かのたちの悪いいたずらか、それとも…。
愛した女の死がもたらしたのは、哀しみだけではなかった。精緻に描き上げた男と女の物語。満場一致、驚嘆すべき新鋭、堂々のデビュー。傑作ハードボイルド!第十回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
ある日曜日、ほんの思いつきで初恋の思い出の場所を訪れた26歳のOL京子は、そこで初めて恋をした少年と再会する。彼は、なんと当時-10歳の時の姿のままだった。子供らしい純粋さとわがままさをあわせ持つ彼に惹かれ、京子は毎週日曜日になると、彼に会いに行く。そして、少年とのデートを重ねるにつれ、京子の中の時間は逆行して、10歳の少女の心に戻り始める-。注目の作家が描く、ファンタジック・ストーリー。
猛将白起率いる秦軍は、領土を拡大するも宣太后らの私有地が増えるばかりであった。魏の巷間に身を潜めていた范雎は秦の昭襄王への謁見が叶い、天下の秘策「遠交近攻」を献じ、信任を得る。宰相となった茫雎は、政争の芽を的確に摘み、韓・魏・趙など隣国を次々に落とし、巨大帝国の礎を築いていく。始皇帝出現前夜、戦国期に終焉をもたらした天才宰相を雄渾壮大に描く傑作歴史長編。
周囲から隔絶された森の中にある完全会員制の遊郭、椿屋。その内部に燻る不穏な噂。若きオーナーの虎は、二人のボディーガードから警護されることに…。優しく笑顔の似合う男、白鳳。一方の黒龍は、人を寄せつけない雰囲気の凄みのある男。少年時代をこの椿屋で過ごした虎には、辛い記憶の中で一人だけ淡い想いを抱いた相手がいるのだが、それは白鳳なのか?そんな折、暴漢が現れ…。めくるめき遊郭ハードロマン。
灼熱の砂漠地帯ーワニの化石発掘作業を手伝うことになった古生物学者の秋一郎。ある晩、星空に魅せられてテントを抜け出した秋一郎は、精悍なベドウィンの鷹匠の青年、ジル・ジーにいきなり組み敷かれ、熱烈に口説かれてしまう。俺のこと何も知らないのに…!?だが、褐色の獣の手管は巧みで…。その頃、政情不安を抱えるこの地で、発掘を巡り怪しい動きが…。バーニングLOVEアドベンチャー、書き下ろし。
13歳で明治維新を、16歳で廃藩置県を、20代で西南戦争を体験し、巡査となった津田三蔵。病いがちの母を案じ、困った兄に悩まされ、妹には櫛や半襟を見立ててやる。不器用で几帳面、ごくまっとうなこの男が、なぜロシア皇太子を襲ったのか。近代化から逸れ、否応なく追いつめられていった一人の男の悲劇を、愛惜をこめて描き出す。
僕は「片説家」。「小説家」と違って、純粋に「特定の個人に向けて物語を書く」仕事だ。そこにあるのは、創作とはいえないリクエストとマーケティングだけ。いや、正確には「片説家」だった。四年間この仕事をしてきたが、今さっき解雇されたのだ。27歳の誕生日だというのに…。あてもなく過ごしていたところへ、「私のために小説を書いて欲しい」という女性が現れた。奇しくも、失踪しているという彼女の妹は、かつて僕のいた会社が、片説の原稿を渡した相手だという-。