2007年4月発売
私立探偵のサニーに新たな仕事が舞いこんだ。依頼人は、ボストン近郊の島に住む映画プロデューサー。大リーグの球団を持つ彼は、女優のエリンを選手にして話題にしようとしていた。だが女性の大リーグ入りには反発もあるので彼女の護衛を頼むというのだ。サニーは引き受けるが、やがてエリンの付き人が殺された。彼女は警察署長ジェッシイ・ストーンと犯人を追う。ジェッシイとの夢の競演で描く注目作。文庫オリジナル。
漫画家で家庭的な父親ダニエルと、優秀な学者の母親ローラ、そして二人に愛されて育った娘トリクシィ。平凡な一家の穏やかな生活は、ある日突然崩れ去った。14歳のトリクシィがボーイフレンドから暴行を受け、心に深い傷を負ったのだ。世間の冷たい視線にさらされ、彼女の苦しみは頂点に達する。娘をなんとか守ろうとする両親だったが、現実は容赦なかった。事件をきっかけに、一家は思いもよらない真実に次々と直面することとなる。ローラは不貞を告白せざるをえなくなり、一方ダニエルの内部では、遠い昔に葬った荒々しい人格が呼び覚まされる。そして被害者のトリクシィ自身の供述にも、ほころびが生じてくる。三人三様に身にまとっていた偽りがひとつずつ剥がされ、やがて最悪の事態が一家を…。『わたしのなかのあなた』で全米に衝撃を与えた著者による、家族の崩壊と再生の物語。
昭和20年、爆弾が降り注いだ和歌山。戦争が激化する中、18歳の警官、瀬名弘之は大事件に遭遇した。砲台島の砲兵3名が謎の焼死を遂げたのだ。弘之は、捜査に訪れた死神のような憲兵、渡里純一と行動をともにする。しかし、謎めいた渡里の言動と次々と起こる事件のため、事態は混乱に陥る。ようやく事件の核心へと近づくが、弘之に召集令状が届き…戦火の中、生と死をみつた少年の哀しみのミステリ。
1999年英国、著名な歴史ノンフィクション作家スチュワート・グラットンのもとに、第二次世界大戦中に活躍した空軍大尉J・L・ソウヤーの回顧録のコピーが持ちこまれる。グラットンは、次作の題材として、第二次大戦中の英国首相ウィンストン・チャーチルの回顧録のなかで記されている疑義-英空軍爆撃機操縦士でありながら、同時に良心的兵役拒否者であるソウヤーなる人物(いったい、そんなことが可能なのか?)-に興味をもっており、雑誌に情報提供を求める広告を出していた。ソウヤーの回顧録を提供した女性アンジェラ・チッパートン(旧姓ソウヤー)は、自分の父親は第二次大戦中、爆撃機操縦士を務めていたと言う。果たして、彼女の父親はほんとうにグラットンの探しているソウヤーなのだろうか?作家の棲む現実から幕を開けた物語は、ジャックとジョーという同じイニシャル(J)をもった二人の男を語り手に、分岐したそれぞれの歴史の迷宮をひたすら彷徨していく…。稀代の物語の魔術師プリーストが、SF、ミステリにおける技巧を縦横無尽に駆使して書き上げた“もっとも完成された小説”。英国SF協会賞/アーサー・C・クラーク賞受賞作。
もう一度、巡り逢う。そのとき、二人のあいだには、何が芽生えるだろう。別れてしまった恋人、終わってしまった恋。時を経て、ふたたび出会った二人には、思いもかけない物語が待っていた…。『金田一少年の事件簿』『神の雫』をはじめ、多くのヒット作を手がける漫画原作者が、はじめて本名で発表する、少し甘口な、大人の恋愛小説集。
「馬の胎から産まれた少年」アディと、宮廷ユダヤ人の息子イシュア・コーヘン。二人の若者の運命が、果てなき戦乱の中で変転していく。ドイツ三十年戦争を、傭兵とユダヤ人の目線から描ききった、圧巻の大作。
革命のたびに巨大化する銅像を崇拝する都市、精神状態の沈殿を再構成することで甦る絶世の美女、人間とロボットが逆転した世界、時間を貯める永遠時計…。ノンセンスな奇想と風刺と感傷が渾然一体となった台湾SF小説集。
越前で名を上げていた甲冑鍛冶・長曽祢興里(のちの虎徹)には、壮大な夢があった。自らが鍛え上げた当代随一の兜を一刀のもとに叩き切る刀を鍛えるー。興里は、己を超えるべく、重病の妻を伴い江戸に出た。鉄と共に生きた伝説の刀鍛冶・虎徹の情熱と創意工夫が蘇る。一振りの刀に命をかけた刀鍛冶の波乱と葛藤の一代記。
世界中を涙で包んだ『エターナル・サンシャイン』の天才ミシェル・ゴンドリー監督が贈る、切なくもスウィート&キュートな愛の物語。夢では幸せなのに、現実は上手くいかない冴えない主人公が繰り広げる究極の恋愛世界。
宴席に供されたのは、腹心だった将軍の丸焼き。荷船もろとも爆沈、厄介払いした子供は二千人。借金の形に、まるごと米国にくれてやったカリブ海。聖なる国母として、剥製にされ国内巡回中のお袋。だがお袋よ、ほんとにわしが望んだことなのか?二度死なねばならなかった孤独な独裁者が、純真無垢の娼婦が、年をとりすぎた天使が、正直者のぺてん師が、人好きのする死体が、運命という廻り舞台で演じる人生のあや模様。
叔母さんは、トラブルとともにやってくる。27歳未婚。定職ナシ。男を見る目ナシ。いつも厄介を引き起こしては投げ出して-『笑う招き猫』の山本幸久が描く“居候美女”の痛快爽快・逃げっぱなし人生。
新聞記者・堀口大示は長男が精神を病んでいることに心を痛めつつ、長く会わない友人の運命を思いやる。友人・河井はある過激派の非合法活動家として潜行しているらしい。そんな中、大示はやはり新聞記者であった父の日記をひもとく…。時代の波にのまれ、時代とたたかった新潟・長岡出身の一族とその友人たちの、数奇な運命の群像を描く巨篇。