2007年発売
相沢深雪、十六歳。母と弟との三人暮らし。母の佐和子さんはJelly Beansという雑貨屋を営みながら、弟・月光と深雪の二人を育ててくれている(深雪と月光は父親の違う姉弟だ)。それだけでも複雑っぽさ十分なのに、佐和子さんが再々婚することになった。しかも相手には六人もの息子がいて、中の一人は元人気アイドル!?親友・泉ちゃんも巻き込んで、深雪のジェットコースターな日々が始まる。
「この先生はお嫁さんじゃなくて、私の娘だよ」いつもと変わりない笑顔で若林先生は答えたが、さすがに教室内は「くだらない嘘をつくな」という失笑に包まれた。そして、先生はALTの先生に英語で自己紹介を求めた。次の瞬間教室が凍りつくとは、誰も思ってもいなかったことだろう。「Hi,How do you do?こんにちは、私の名前は若林キャメロンです」。
斬新な語りの手法と構成で、新しい文学表現に挑んだフォークナー(一八九七ー一九六二)の最初の代表作。語り手たちの内的世界のかなたに、アメリカ南部を舞台とした兄弟たちの愛と喪失の物語が浮かびあがる。フォークナー自身この作品をもっとも深く愛した。
コンプソン家の現在を描き、物語にいっそうの奥行きを与える後半。「奇蹟が起きた」と言われるこの作品の成立によって、フォークナー独自の創造世界は大きく開花し、世界の文学に幅広く影響を与えた。のちに書かれた「付録」も収録。
祖母から聞いた、四国の森の奥深くに伝わる「壊す人」と「オシコメ」の創造の物語を、MとTという記号を用いて書き記す。時の権力から独立した、一つのユートピアがつくり出される奇想天外の物語は、いつしか二十世紀末の作家が生きる世界、われわれの時代に照応していく。海外で最も読まれている大江作品。
呉服問屋が軒をつらねる東京・日本橋堀留町の仕出し弁当屋“弁菊”。人情味豊かであけっぴろげ、良くも悪くもにぎやかな下町に、21歳で嫁いできたハナは、さまざまな事件に出遭いながらも、持前のヴァイタリティで乗り切ってゆく。-戦中から戦後へ、激動の時代をたくましく生きた庶民たちの哀歓を、自らの生家をモデルにいきいきと描き出した、笑いと感動の下町物語。直木賞受賞。
恒例の「一人避暑」に行く父親と犬のミロにくっついて、五年ぶりに北軽井沢の山荘で過ごす小説家志望の「僕」。東京に残った妻には、他に好きな男がいる。危ういのは父親の三度目の結婚も同じらしい。-かび臭い布団で眠り、炊事に疲れてコンビニを目指す、アンチスローな夏の終わりの山の日々。ゆるゆると流れ出す、「思い」を端正に描く傑作小説。翌年の山荘行きを綴る『ジャージの三人』収録。