2008年3月発売
ベトナム戦争、学生運動、浅間山荘事件。本気で生きた時代が、確かにあったはずだ。-海辺の街から届いた手紙に、男は涙した。みんな、どこへ行ってしまったんだ。’70年代を熱く生きた著者が、魂の全てを注ぎこんだ渾身の小説集。
愛し方がわからない大人と子ども。人間から忘れ去られた精霊たち。絆を奪われた孤独なたましいがふれあうときオーストラリアの赤い大地に、愛と痛みのコーラスがこだまする。精霊の子に出会ったビリー。語りかける風と精霊に見守られ、少年の旅が始まる-。各国で絶賛された新進作家の話題作。
火星で目覚めた素性不明の男は、自らを永久追跡刑事と称した。この世界を創造し、自由に改変する能力を持つ犯罪者・ボルターを追っているという。戦略情報局のケイ・ミンはその話を疑いつつも、彼の真摯で誠実な態度に惹かれていく。ボルダーの巧妙な世界改変による攻撃に対抗しつつ絆を深め合う二人だが、情報局の人工知性体・マグザットの介入も加わり火星崩壊が迫るー虚実混交の中で信頼と陰謀がせめぎ合う傑作長篇。
女性作家としてブッカー賞最年少受賞!喪失と再生をめぐる家族の物語。少女サイは、インド人初の宇宙飛行士を目指していた父を母と共に交通事故で亡くすと、母方の祖父である偏屈な老判事に引き取られた。老判事はすでに引退し、ヒマラヤ山脈の麓の古屋敷に隠居していたが、孫娘の出現は判事と召使いの料理人、そして近所の老人たちの慰めとなるのだった。やがてサイは、家庭教師のネパール系の青年ギヤンと恋仲になる。急速に親密になっていくふたりだが、ネパール系住民の自治独立運動が高まるにつれ、その恋には暗雲が立ちこめる-。時代の流れに翻弄されながらも力強く生きる人々の姿をコミカルに、チャーミングに描きあげるインド系著者の出世作。全米批評家協会賞も受賞。
「もし生きていたら、三十年後のクリスマスに会いましょう。必ずよ」。それが彼女の別れの言葉だった。人生は孤独に耐える修練かもしれない。淋しさは突然さざ波のように心の中を走る。その波が通りすぎるのを待ち、また恐る恐る歩きだす。噛みしめるほどに味わいが深まっていく文学の言葉で綴られる胸底に響く物語。
レイは故郷に戻ってきた。TV脚本家としての名声を捨て、生まれ育った団地の町に貢献するために。貧困と荒廃に覆われた町のハイスクールで、レイは講師をはじめる。少しずつ生徒たちとの交流も深まってきた頃ー何者かが彼の頭を殴打し、瀕死の重傷を負わせた。だがレイは警察に犯人の名を明かさない。捜査を担当することになった刑事ネリーズは、レイの幼なじみだった。献身的に町のために尽くしてきたレイは何を隠しているのか?ネリーズの捜査が、レイに関わった人びとそれぞれの物語を引き出してゆく…それはひとつひとつが悲しく、あるいは暖かく、そして何より彼らにとってかけがえのない物語だ。その果てに明かされる真相。善行をなそうとした男を見舞った悲劇の理由。スティーブン・キング、エルモア・レナードら、小説巧者たちが絶賛の声を惜しまない感動の大作。痛ましい現実に満ちた世界のなかで、しかし希望の光が最後に灯される。
宗像時子は父が遺した古アパート、扇荘の管理人をしている。扇荘には様々な事情を抱えた人たちが住んでおり、彼女はときに厳しく、ときには優しく、彼らと接していた。ある日、新たな入居者が現れた。その名は有馬生馬。ちょっと古風な好青年だった。二度の辛い別離を経験し、恋をあきらめていた時子は、有馬のまっすぐな性格にひかれてゆく。暖かで、どこか懐かしい恋愛長篇。
合唱コンクールの全国大会常連校・七浜高校で、合唱部のソプラノパートリーダーを務める荻野かすみは、自分の歌声とルックスに異常なまでの自信を持つ女の子。ある日、憧れの生徒会長・牧村純一から、写真のモデルを頼まれて有頂天となるが、歌っている顔が「産卵中のシャケみたい」といわれて、すっかり自信を喪失し、合唱へのやる気を失ってしまう。そこに突如、湯の川学院高校“ヤンキー”合唱部の番長・権藤洋が現れて…。
外資系ファンドの野上妙子は、地熱発電を運営する会社の再建を任される。地熱発電に命をかける老研究者、それを政争に利用する政治家、欧米からの執拗な圧力など、さまざまな思惑が交錯する中で、地熱ビジネスは成功するのかードラマ「ハゲタカ」の著者が描く大型経済情報小説。
もの心ついたときに、父はいなかった。それは寂しいことではなかった-。美名子と母のあいだにある、ふれられない空白。そこには、いつも「不在の父」がいた。現代を生きるひとりの女性の姿を、思春期から40代までの心の軌跡をとおし語る六篇の物語。とまどいながら、その先に見つかる心の本当のかたちを、美しい文章と丁寧な心理描写で描き出した「絆の物語」。