2008年8月発売
大正末期、大震災直後の東京にひとりの異才が登場、卓抜な着想、緻密な構成、巧みな語り口で読者をひきこむ優れた短篇を次々と発表していった。日本文学に探偵小説の分野を開拓し普及させた江戸川乱歩(1894-1965)の、デビュー作「二銭銅貨」をはじめ「心理試験」「押絵と旅する男」など代表作12篇を収録。
雑誌『smart』にて連載された、リップスライム自身の筆による官能小説がついに文庫化!メンバー5人のリレー小説の他、「届かぬ思い。」フォト・ストーリーや、メンバーが文豪に扮したミニ写真集、男の本音が炸裂するディープなエロス討論、豪華作家陣とリップスライムのコラボによるオリジナル漫画などの企画も充実。読んで楽しい&見て楽しい、エンターテインメント・ブックです。
いまはもう寂れてしまった国道沿いの一軒のドライブイン。そこで、僕は、ただ純粋に不器用に生きる青年セイジに出会う。「人間って何だ」「人生っていったい何だ」-そんなことを考えながらも気のおけない仲間たちと楽しく過ごしていたある日、目の前で奇蹟は起こった。文壇を騒然とさせた話題作。太宰治賞作家の原点とも言うべき名作。「竜二」を併せて収録した。
オホーツクのソ連領海を侵して蟹を捕り、缶詰に加工する蟹工船では、貧困層出身の人々が奴隷のような過酷な労働を強いられている。船には海軍の軍艦が寄り添い、この搾取が「国策」により行われていることを示していた…。「ワーキングプア」の文学として脚光を浴びる、日本プロレタリア文学の金字塔「蟹工船」。小林多喜二虐殺後、遺作として発表された「党生活者」。新たに雨宮処凛による解説も加えた、文字が読みやすい新装版。
江戸城の目安箱に入れられた一通の書面。それを読んだ将軍徳川吉宗は大岡越前守に探索を命じるが、その最中に芝の寺の尼僧が殺され、旗本大久保家の存在が浮上する。将軍家世嗣をめぐる思惑。本格歴史長編。
資産家の木部信夫が突然失踪、直後に彼が所有する6億円もの不動産が売買されたことが判明した。だが、契約には不審な点は見あたらない。木部はなぜ、姿を消したのか。真相を追う新宿署の牛尾は、無関係に思えたタクシー強盗殺人から、解決の糸口をつかむ。だがその後、関係者が次々と殺人や轢き逃げに巻き込まれ、事件は混迷を極めていく…。人生の路上で交錯する悲劇を描いたヒューマン・ミステリー。
虚と実、仮面と素顔とが人形芝居の舞台の内と外で演じられる、キャプテン・コックとムーシュの波乱に富んだ愛の物語『七つの人形の恋物語』。代表作『スノーグース』も収録、ギャリコファン必携の一冊。
あの夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。旧家で起きた、大量毒殺事件。未解決となったあの事件、真相はいったいどこにあったのだろうか。数々の証言で浮かび上がる、犯人の像はーー。
29歳の目黒は夫婦仲もよいが、毎夜他の女性たちと「調教癖」にみちたセックスをしていた。そんな目黒が一見地味な繭子に出会い関係をもつが、やがて繭子は目黒の想像を超えていく……SM青春小説第3弾!
ちょっとしたきっかけで近づいたり、大嫌いになったり。友達、親友、ライバルーー。読者と選んだ好評アンソロジー。友情編には、坂木司、佐藤多佳子、重松清、朱川湊人、よしもとばななの傑作短編を収録。
中堅事務器会社の新人OL洋子は入社してすぐ、先輩の村上に一目ぼれ。独身でハンサムな彼と付き合うことになる。しかし、村上には秘密があった。彼は次々とやめていく女子社員をつなぎとめておくためのオトリだったのだ。逢うたびに彼にのめりこむ彼女は、ある日、その秘密に気づいてしまう。密かに復讐を決意する彼女は…。表題作含め珠玉の4編を収録した傑作サスペンス・ミステリー短編集。
愛はいつしか悲しい色彩に変わっていく。婚約者が事故死する直前に、私に見せたがったナナカマドの「赤」。夫に見捨てられた私を染めていく、夕空の「紫」。同棲相手と致命的なケンカをして、ひとりで泊まるホテルの床の「茶色」。決して叶うことのない恋の相手に贈る、フォトフレームの「ピンク」。この愛に優しい光は灯るのかー。様々な色をテーマに、胸を打つ恋愛を描いた掌編集。オリジナル文庫。
牛込御門近くに建つ吉田御殿。ここで暮らす徳川秀忠の娘・千姫が、夜な夜な男をもてあそび、殺害するとの噂がたつが、その真相は…(「千姫と乳酪」)。家綱公の旗本、大久保彦六。雨中休業中の市松座を、直参の沽券で開かせたのはいいが…(「九枚の皿」)。茶屋の娘と孤老の武士のはかない交流、歌舞伎役者に入れ込む旗本の奥方など、牛込界隈を舞台にさまざまな人間模様を描く八編を収録。
19歳の翔悟は父と大ゲンカして家を出た。一人暮らしを始めたある日、彼の周囲でデジタル時計がカウントダウンを開始、突然、23年前の東京にタイムスリップ。途方にくれる彼が、身分を明かさず若き日の父を訪ねると、社会人2年目の情けない男がいた。古い歌謡曲が流れる不思議な世界で共同生活を始めた二人はその年に射殺されるジョン・レノンの救出を誓うが…。時を超えた親子の絆を描く感涙長編。
東京近郊の海辺の町で密かにささやかれはじめた奇妙な噂。謎のツィス音=二点嬰ハ音が絶え間なく、至るところで聴こえるというのだ。はじめは耳鳴りと思われたこの不快な音はやがて強さを増し、遂に首都圏に波及して、前代未聞の大公害事件に発展していく。耳障りな音が次第に破壊していく平穏な日常。その時、人びとが選んだ道は?そして「ツィス」の正体は?息もつかせぬパニック小説の傑作。
美しきシモネッタの死から一年、反目を強めていくいっぽうのパッツィ家とメディチ家。ついに復活祭のミサの席上、襲撃されジュリアーノが命を落とす。血で血を洗う抗争を冷徹にも思える目で見つめ、描き続けるボッティチェルリに驚く「私」-そして、傑作「ヴィーナスの誕生」が完成したのだった。
第一次大戦末期の1918年。ロシア革命の影響を受けて、アメリカ国内では社会主義者、共産主義者、アナーキストなどがさかんに活動し、組合活動が活発になる一方で、テロも頻発していた。そんな折り、有能な警部を父に持つボストン市警の巡査ダニー・コグリンは、インフルエンザが猛威をふるう中、特別な任務を受ける。それは、市警の組合の母体となる組織や急進派グループに潜入して、その動きを探ることだった。だが彼は、捜査を進めるうちにしだいに、困窮にあえぐ警官たちの待遇を改善しようと考えるようになる。一方、オクラホマ州タルサでは、ホテルに勤めていた黒人の若者ルーサー・ローレンスがトラブルに巻き込まれてギャングを殺し、追われる身となっていた。ボストンにたどり着いたルーサーはコグリン家の使用人になり、ダニーと意気投合する。ある日、ダニーは爆弾テロの情報を得て、現地に急行する。その犯人は意外な人物だった…。大反響を巻き起こした『ミスティック・リバー』『シャッター・アイランド』の著者が、満を持して放つ画期的大作。