2009年9月29日発売
最下層の身分ゆえに、討死にして髻だけになって帰ってきた父のようにはなりたくない、と連歌の道に進んだ里村紹巴は、天下一の連歌師へと駆け上った。戦国期の名だたる権力者に近づいて、政治の世界でも地位を確かにしていった紹巴だが、なぜか辞世の歌を残さなかった。そのしたたかな生き様を描く長編小説。
日曜夕月のハチ公前、夜の円山町、昼下がりの公園通り。この街の喧騒の中、神様は別人の顔をしてやってくる。出会い系サイトで知り合ったサラリーマンと中学生、デートをすっぽかされた女子高生とスカウトマン、年下の彼と破局寸前のバツイチOL。彼らの人生がふと“つながる”瞬間とはー見えない何かを信じたくなる、心温まる群像小説。
孫娘のけい子ちゃんに買ったゆかたが大きくて着られない。妻が寸法を直すことになったものの、お祭りは今日の夕方。さて、間に合うだろうか?…孫の成長を喜び、庭に来る鳥たちに語りかけ、隣人との交歓を慈しむ穏やかな日々。夜になると夫はハーモニカで童謡を吹き、妻はそれに和してうたう。子供たちが独立し、山の上のわが家に残された夫婦の豊かな晩年を描くシリーズ第十作。
小学五年生の夏休みは、秘密の夏だった。あの日、ぼくは母さんの書斎で(彼女は遺伝子研究者だ)、「死んだ」父親に関する重大なデータを発見した。彼は身長173cm、推定体重65kg、脳容量は約1400cc。そして何より、約1万年前の第四氷河期の過酷な時代を生き抜いていたーじゃあ、なぜぼくが今生きているのかって?これは、その謎が解けるまでの、17年と11ヶ月の、ぼくの物語だ。
不慮の事故で片腕を失ったエドガーは、ひとりフロリダの孤島デュマ・キーに移り住んだ。波と貝殻の囁きを聴きながら静かに暮らすエドガーは、ある日、絵を描く衝動にとりつかれた。かつて幾人もの芸術家を迎えたデュマ・キーに宿る何かが作用したのか?彼の意思と関わりなく手が描き出す少女と船の絵ーそれはいったい何なのか?屋敷に住まう老女の過去に何があったのか?じわり、じわりと怪異が迫る。島にひそむ悪しきものがひそやかに触手を伸ばす“恐怖の帝王”の本領発揮。圧倒的恐怖へ向けたジェットコースターが、高みをめざして昇りはじめる。
エドガーの絵は美術シーンに衝撃をもたらし、個展を開くことが決定した。それはエドガーの新たな人生の幕開けであり、崩壊していた家族との和解の場であり、最高の栄誉の瞬間でありー彼と彼の愛する者たちにとって最後の平穏な夜となった。ついに物語は臨界に達する。そっと時を待っていた死と破滅と邪悪が猛威をふるう。溺れ死んだ双子。黒い闇に沈む船。人形。赤いバスケット。そして邪悪なる“パーシー”。愛する者に迫る死を防がねばならない。邪悪なるものを斃さねばならない。これぞモダン・ホラー。これぞスティーヴン・キング。悲しみに満ちた浄化を描くラストへ突進する最新超大作。