2009年発売
“犯罪被害者家族の集い”を舞台にした殺人事件の捜査は、暗礁に乗り上げた。被害者の一人、目取真南美の夫・渉の挙動に不審を抱いた大河内刑事には、公安から圧力がかかる。事件の裏には沖縄の悲劇、そして警察内部の腐敗が黒々と横たわっていた。猟奇的殺人者、狙撃者、孤独な刑事の三つ巴の闘いの結末はー。
貞右衛門殺しの容疑で捕らえられた義父・長右衛門。それは、岩田屋勘助の仕組んだ罠だった。岩田屋は自らの権力拡大のため、前の将軍のご落胤である桂助を、次期将軍にして自分の思うがままに動かそうとしていた。義父の命の鍵を握る岩田屋の命じるままに、次期将軍争いを繰り広げる南紀派と一橋派の両領袖の治療にあたった桂助。そして、側用人の岸田が襲われ、叔母とその孫が連れ去られるに至って、桂助は出生の証である“花びら葵”を、岩田屋に差し出すことを決意する。岩田屋の野望は達せられたかに見えた…。長年の因縁に決着が付く、シリーズ第八弾。
時は江戸・享保年間。八代将軍徳川吉宗の側近である御用取次・加納久通より「目安箱改め方」を拝命した想身流柔術の使い手、竜巻誠十郎に新たなお役目が言い渡された。来る六月二十二日、真宗・幸徳寺において、幕府の実力者たちも参列する大規模な法式が開かれる。その門主・栄如に、いかがわしき女たちと通じ、妖しげな加持祈祷を行なっているという噂が立っているのだという。その真偽を探るうち、誠十郎は幸徳寺の近隣で狐憑きなど様々な怪異が起きていることを知る。政で救えぬ人々のため、天涯孤独の侍が江戸を奔る。長編時代小説シリーズ第二弾。
ピアニストの由起子は、病気療養のために訪れた沖縄の離島で漁師の龍二に出会い、恋に落ち、やがて女の子を身篭もる。しかし、娘・涼子を産んだ後、由起子は他界。やがて涼子は美しく成長し、島の幼馴染の漁師・一也と愛し合うようになる。だが、一也は結婚に反対する龍二に反発。漁師のプライドを賭けて深く海に潜り、帰らぬ人に。ショックで心を病んだ涼子は、心を閉ざしてしまう…。『花宵道中』で鮮烈なデビューを果たし、“新官能派”の旗手として活躍中の著者が等身大の若者の愛と苦悩、親子の愛情を描ききった意欲作。
「のぶ!まだ泣いちゃだめだ!もっと泣きたいこと、いまからいっぱいあるぞ!」時は一九七〇年代。田舎町に住むヤンチャでムチャでワンパクな男子高校生と町の駐在さんが“あいかわらず”繰り広げるイタズラ合戦第四弾。ある日、ママチャリ達は「ザリガニ池」で泣いている少年を見つける。少年はつい最近、近所の小学校に越してきた、いじめられっ子ののぶくん。のぶくんに、いじめられていた自分の過去をかさねた西条は、徐々に彼との交流を深めていく。ブログ小説「ぼく駐」の中でも人気の高い感動巨編『のぶくんの飛行機』を収録した、ファン待望の一冊。
小田原に住み、湘南ライナーで新橋の経済研究所に通勤する武藤の前に現れた美女・小早川恵。彼女は武藤に、週に一度、平塚にある自分のマンションで一夜をともにしてほしい、ただしセックスは抜きで、と持ちかける。恵はこうして、川上、大杉、岸川、仲という湘南に住む五人の三十代エリートに声をかけ、それぞれ月曜日から金曜日まで「一夜同棲契約」を結ぶ。岸川の美人秘書が殺され、捜査に乗り出した十津川警部の元に、恵と男たちの奇妙な関係を記した報告書が届く。一方、恵の魅力に翻弄された岸川は、他の男たちに恵をレイプしようと持ちかける。
大学卒業を間近に控え、就職も決まり、単位もばっちり。ある意味、手持ちぶさたな日々を送る主人公ホリガイは、身長175センチ、22歳、処女。バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。そして、ふとした拍子に、そんな日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。第21回太宰治賞受賞作にして、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。
現役の作家のなかにも熱狂的なファンの少なくない、鬼才、久生十蘭の精粋を、おもに戦後に発表された短篇から厳選。世界短篇小説コンクールで第一席を獲得した「母子像」、幻想性豊かな「黄泉から」、戦争の記憶が鮮明な「蝶の絵」「復活祭」など、巧緻な構成と密度の高さが鮮烈な印象を残す全15篇。
断崖絶壁に建つ曰くつきの洋館。少女・砂波の父が購入するという。あまりにも怪しげなため、探りに行った彼女を待っていたのは甲高い悲鳴と、長い髪を振り乱し海を歩く者。いったいこれは?依頼を受けた美形の妖探偵達が調査に出向いた先で、陰惨な殺人事件が起きてしまうのだった。大人気シリーズ第12作。
ベルリンの壁が崩壊し、世界が冷戦終結に向けて動き始めた一九八九年暮れ、機甲師団の将軍が死体で発見された。場所はうらぶれたモーテル。重要な会議に向かう途中、なぜ片道五〇〇キロの寄り道をしてそんな所に行ったのか?続いて彼の妻が遠い自宅で、デルタ隊員が基地内で惨殺される。英国バリー賞最優秀長編賞受賞作。
世界各地の米軍警察指揮官が一斉に異動させられていた。パナマからノース・カロライナへ突然転属になったリーチャーもその一人だった。誰が、何のために?死んだ将軍が出席するはずだった秘密会議の議題がすべての鍵を握る。激変する時代の波にもまれる軍の指揮を離れ、リーチャーは真相を探り始める。英国バリー賞最優秀長編賞受賞作。
31歳になった。遠距離恋愛中、年下の彼は何も言ってくれない。不安を募らせて、彼の住む町・稚内をこっそり訪れた真穂子は、地元の人たちの不思議なパワーを浴びて、なにやら気持ちが固まっていくー。三十代独身女性のキモ焼ける心情を、軽妙に描いた小説現代新人賞受賞作を含む、著者の原点、全五編。
世界が認めた名経営者盛田昭夫。町工場だった東京通信工業を皮切りに、テープレコーダー、トランジスタラジオなど常に時代の先頭を走り続け、ソニーを世界ブランドに成長させたその手腕。製品開発、アメリカ進出、商標裁判…笑顔で壁を次々に越えていく盛田の隣には、居並ぶ一騎当千の強者たちがいた。
南青山でのPRの仕事や、幼馴染み・フユちゃんと出かける金曜日の夜。充実しているはずの毎日に、なぜか励奈は何かが欠けているように感じていた。そんなとき間違い電話で偶然聞いた英語のメッセージが、思いがけなく新しい自分に出会う旅へ彼女を誘う。
情熱を込めた語り口は周囲の人を動かし、最前線を歩き回る行動力が、やがて“安かろう悪かろう”だった日本製品のイメージを払拭していった。財界人となってからもマーケットの創出に心を砕いた盛田昭夫。経営、販売、開発に関わるすべての人に、困難を乗り切る知恵と勇気をもたらすドキュメント小説1700枚。
出ていってやる、私は車に乗り込んだ/美しい老婆ミナミの運転に僕は命を預ける/愛犬ブランと最後のドライブ/二ヵ月前に出ていった透の愛車が部屋の前に/私は恋の終わる地点をめざし、アクセルをふんだ/いつものCD、だけど湧き上がる怒りと失望ー6人の人気作家が車をモチーフに描いた珠玉の恋愛小品集。
「現実とネットの関係は、銃を撃つのに似ている」。ネットの対戦ゲームで知り合った本間とみのり。初対面のその日、本間が打ち明けたのは、子どもの頃の忌まわしい記憶と父の遺した拳銃のことだった。二人を監視する自転車に乗った男。そして銃に残された種類の違う弾丸。急逝した著者が考えていた真相は。
道端で男に殴られていた女子大生美紀を拾ったバイク乗りの幸雄。奇妙な同居は幸雄が美紀に売春をさせたことで終わったかにみえたが…男女の不思議を描く表題作他、ストリップ劇場で理想の女を見つけた男が彼女を探して旅をする「ひと目だけでも」、会社を辞めた男が故郷で恋人の親友に会う「いつもの彼女、別な彼」等、感情を排した乾いた文章がなぜか通常の恋愛小説よりも深く胸に残る名品7篇を厳選。