2010年4月発売
碑文の謎を解いた者は、右代宮家の黄金と家督を引き継ぐことができるー魔女“ベアトリーチェ”から届いた手紙の導くままに、ついに黄金を探し当てる長女・絵羽。そして、ベアトリーチェの名を襲名することで絶大なる魔力を得て、殺戮を繰り返す。そんな様子をチェス盤の外側から見つめる戦人は、凄惨な魔女幻想の中に、真実を見つけることができるのか…。
家庭に居場所を得られず自転車を駆って遠征する少年、学校になじめず都バスに乗って往還する少女、超能力を持つ老女、ストリートミュージシャン、殺し屋、そして多くの野良猫。直感だけを生きる指針にして東京を疾走する者たちの、熱い鼓動がシンクロするー邂逅と別離のリンクから生まれるドラマを、軽やかなビート感にのせて鮮烈に描き、読書界を沸騰させた青春群像小説の傑作。
揺るぎなく君臨する大女優・夏樹菜々に導かれて、少女から女へと変貌していく朝倉京子。華やかな光の陰で繰り広げられる権謀術数。憧憬と嫉妬、情熱と裏切りが渦巻くサバイバル・ワールド。まったくの素人が女優としての欲望を実現していく生きざまを、芸能の世界に生まれ育った著者ならではの、リアルな筆致で描ききった、禁断の物語。
長距離走者として将来を嘱望された高校一年生の碧李は、家庭の事情から陸上部を退部しようとする。だがそれは、一度レースで負けただけで、走ることが恐怖となってしまった自分への言い訳にすぎなかった。逃げたままでは前に進めない。碧李は再びスタートラインを目指そうとするー。少年の焦燥と躍動する姿を描いた、青春小説の新たなる傑作。
大学の研究室を追われた二十八歳の「おれ」。失意の彼は教授の勧めに従って奈良の女子高に赴任する。ほんの気休めのはずだった。英気を養って研究室に戻るはずだった。渋みをきかせた中年男の声が鹿が話しかけてくるまでは。「さあ、神無月だー出番だよ、先生」。彼に下された謎の指令とは?古都を舞台に展開する前代未聞の救国ストーリー。
“冥王星O”と名乗る男が、世界の秘密を語る…。「なぁ、この世界のヒエラルキーの頂点に位置するのは人間だと思っていないか?それは大いなる誤解だ」俺は知る。探し求めた彼女ー美しい少女の形をした楽器ーに至る道を。「“彼ら”はひっそりと闇の中でくらしている。彼らと人間の間にトラブルが起こったとき、“冥王星O”-つまり俺の出番ってわけだ」。
「謎の巨匠」の「探偵小説」仕立ての、暗喩に満ちた迷宮世界。ある夏の日の午後、主人公エディパは、大富豪ピアス・インヴェラリティの遺言管理執行人に指名されたことを知る。偽造切手とは?郵便ラッパとは?立ち現われる反体制的なコミュニケーションの方法とその歴史。短編「殺すも生かすもウィーンでは」を併録。暗喩読解のための解注も増補した。
故郷銀河をめざす“ソル”に異言語の非常シグナルがとどいた。発信源をつきとめるため、グッキーとフェルマー・ロイドは搭載鑑の“クロンダイク”で惑星グロソフトに向かう。ところが、近づくにつれ、ミュータントふたりは正体不明の強力なインパルスに襲われる。その出どころは非常シグナルと同じく、惑星の港町クノサウルだった。インパルスの謎を解明しようと、クノサウルに着陸したふたりを待ちうけていたものとは。
山上悟はギリシャに赴任するが、妻の奈美子は日本に留まり一方的に離婚を切り出した。真意を問いただす悟に、奈美子は自分の祖父母の間で交わされた手紙のコピーを送る。50年前、祖母は殺人の容疑で逮捕され、手紙には夫婦のみが知る真実が語られていたー。人間が隠し持つ秘密を手紙が暴き出すミステリー。
昭和19年、戦争の只中に暁星中学一年生となったフカダ少年。軍事教練にネを上げ、長刀姿の女学生に恋心をもやし、箱根のドイツ兵と共にB29と戦い、空襲下の下町で昏倒し…。時代は多感な少年をさんざんもてあそぶ。そして敗戦と破産。切なくて懐かしくて、そして抱腹絶倒の少年時代を描く初の自伝的小説。
明治2年、長崎・浦上村の隠れ切支丹たちが土佐の漁村・天浜へ流罪となった。志操堅固な信徒たちに手を焼く村の顔役たちは、遊郭の女郎たちをけしかけて戒律を破らせ、棄教に追い込もうとする。表題作など、宮本常一とおぼしき民俗学者が採集した回顧譚の体裁で語られる、濃密なエロスとグロテスクな哄笑に満ちた7つの物語。
渋谷のチーム「雅」の頭、アキは、チーム解散後、海外放浪を経て、裏金強奪のプロ、柿沢と桃井に誘われ、その一員に加わる。二人は、あらゆるテクニックをアキに教え込み、アキも持ち前の勘の良さで、課題をクリアしてゆく。はたして、アキのデビューはうまくゆくのか?「ヒートアイランド」の続篇となる痛快クライムノベル。
教え子エディが悪名高き殺人犯の息子だと知ったとき、悲劇の種はまかれたのだ。若き高校教師だった私はエディとともに、問題の殺人を調査しはじめた。それが痛ましい悲劇をもたらすとは夢にも思わずに。名匠が送り出した犯罪文学の新たなる傑作。あまりに悲しく、読む者の心を震わせる。巻末にクックへのインタビューを収録。
戦国の世、越後上杉家中の樋口与六は、若くして長尾喜平次の小姓となった。五歳の歳の差を超え、二人は肝胆相照らす名コンビとなる。後の直江兼続と上杉景勝である。二人は上杉謙信の許で薫陶を受け、精神を学び、謙信亡き後の越後の維持に努めていた頃、京より、織田信長が明智光秀に討たれたという本能寺の変の一報が届く。
光秀討滅後、着実に日本統一への歩みを進める秀吉の膝下に、上杉家も屈する。領国安堵された二人は、次第に豊臣政権でき大きな存在となる。石田三成と親交を結ぶ兼続だが、秀吉亡き後、徳川家康と対立し、遂に関ケ原の戦いを迎える…。信長、秀吉、家康と渡り合い上杉家を存続させた主従の姿を描いた大河小説。
「パッパッパッ」と点滅する三色のランプが付いた銀色の箱。点滅のパターンを組み合わせて、あらゆる物語が伝達可能になった。ならばこれを使ってとびきりの楽しい話を、一つ披露してやろうじゃないか。芥川賞候補作「点滅…」を含む、小説の可能性を極限まで押し広げる十六篇。野間文芸新人賞受賞作。
闇夜に遺伝子工学の研究所から姿を消した謎の生命体“ダンサー”。正体不明の男につきまとわれる美しき踊り子・志麻子。やがて彼女の周囲で猟奇的な連続殺人が起こる…。ベストセラー『TENGU』『KAPPA』で活躍したルポライター・有賀雄二郎が、現代の闇と対峙する著者渾身の長篇サイエンス・ミステリー。
宮廷文化が華ひらく平城宮。木っ端役人の葛木連戸主は、ひょんなことから夫婦となった和気広虫とともに粛々と日々を送っていた。ところが穏やかな日常の裏では魑魅魍魎が跋扈し、権謀術数が渦巻き、戸主も知らぬ間に政治抗争に巻き込まれ…。あの世とこの世、政界も俗界も入り乱れる痛快歴史ファンタジー。