2012年12月発売
北関東のとある地方都市の一角、観音さまが見下ろす街、紅雲町で、コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営む気丈なおばあさん、杉浦草。人々を温かく見守り続ける彼女は、無料のコーヒーを目当てに訪れる常連たちとの会話がきっかけで、街で起きた小さな事件の存在に気づいていく人気シリーズ第三弾。今回は、お草さんが、コーヒーを仕入れるミトモ珈琲商会が、紅雲町のある街に出店を計画。ミトモでは、二代目の若手女性社長・令が紅雲町をリサーチしていた。珈琲豆の仕入れに不安を感じたお草さんは、懇意であるミトモ初代社長に相談へ行くが、社長になった娘の令と、彼女をサポートする井(い)との対応で、逆に三友から相談されてしまう(「長月、ひと雨ごとに」)。紅雲町の青果店に持ち上がった産地偽装問題を記事にしようと、意欲に燃えている新聞記者の萩尾。だが、事件の背景には、意外な事情があった。萩尾の元の雇い主で、お草さんのコーヒーの師匠であるレストラン「ポンヌフアン」であるバクサンこと寺田博三は、正義感が先行し、ややあぶなかったしい萩尾を心配して、青果店と同じ町に住むお草にお目付け役を依頼する(「霜月の虹」)。お草は、この事件を通して、草の友人である由紀乃のいとこのかつての夫で、萩尾の民俗学の師匠である勅使河原先生と、その娘の美容師・ミナホとも関わることになる。草から見る、萩尾とミナホの関係は、どこかギクシャクとした不思議な関係だった。そんななか、勅使河原先生に論文盗用の疑惑が持ちあがる。そして、論文盗用疑惑をきっかけに、三人の止まっていた時が動き出そうとしていた……。「萩を揺らす雨」でブレイクした著者が、お草さんと彼女をとりまく街の人々の生活を通して、四季を描きつつ、お草さんならではの機転と、ささやかな気配り、そして豊富な人生経験から、小さなトラブルを解決していく滋味あふれる短編連作小説集。
異界・幻想・ユーモアと恐怖の名短篇。吉田知子の作品集全三巻の第一巻。 脳天壊了 ニュージーランド 乞食谷 寓話 東堂のこと お供え 常寒山 巻末:「脳天壊了への四題」町田康
南北に分断され、探偵行為が禁じられた日本。空閑純は探偵を目指していた。彼女の両親は名探偵として活躍していたが、母は事件を追い行方不明となり、父は殺人事件の推理をした罪で逮捕され、裁判を待つ身となっている。失踪した母の足跡をたどり、純は九州の山奥にある深影村を訪れた。だが、テロにより村に通じる唯一のトンネルが破壊され、連続殺人事件が発生!暗躍する特殊部隊、蠢く陰謀、蔓延るコンピュータウイルスー論理爆弾!少女は探偵の業をその身に刻み、真実と対峙する。
【2025年5月現在、新本が定価(2,200円+税)で購入可能】 「私は生き生きと悲しもう。」(「ふるさとに寄する讃歌」より) ほとばしる才気、あふれ出る詩情、青い安吾がここにいる。 坂口安吾の詩情あふれる初期の作品を中心に、これまであまり単行本に収録されてこなかった、埋もれた名作・佳作を集成。 散文詩を思わせる言葉の連なりが美しい「ふるさとに寄する讃歌」を皮切りに、狂気をはらむ親友の死を描いた「長島の死」、壮絶な恋愛小説「花火」、ユーモラスなどんでん返しが鮮やかな「無毛談」、妻と親友への疑心が意外な結末へとつながる感動の名作「アンゴウ」、安吾流ファルスの到達点ともいえる「保久呂天皇」など、29作品を収録した。 ※七北数人氏を監修者に迎えた「シリーズ 日本語の醍醐味」は、“ハードカバーでゆったり、じっくり味わって読みたい日本文学”をコンセプトに、手に汗握るストーリーではなく、密度の濃い文章、描写力で読ませる作品、言葉自体の力を感じさせる作品を集成してゆきます。 ふるさとに寄する讃歌 〔翻訳〕ステファヌ・マラルメ──ヴァレリイ Pierre Philosophale 傲慢な眼 山麓 山の貴婦人 宿命のCANDIDE 長島の死 淫者山へ乗りこむ 流浪の追憶 母を殺した少年 お喋り競争 手紙雑談 山口修三宛書簡 夏と人形 南風譜 閑山 紫大納言 囲碁修業 探偵の巻 市井閑談 二流の人(抄録) 我鬼 花火 無毛談 アンゴウ 死と影 日月様 保久呂天皇 解説/七北数人
穏やかな引退生活を送る男のもとに、見知らぬ弁護士から手紙が届く。日記と500ポンドをあなたに遺した女性がいると。記憶をたどるうち、その人が学生時代の恋人ベロニカの母親だったことを思い出す。託されたのは、高校時代の親友でケンブリッジ在学中に自殺したエイドリアンの日記。別れたあとベロニカは、彼の恋人となっていた。だがなぜ、その日記が母親のところに?-ウィットあふれる優美な文章。衝撃的エンディング。記憶と時間をめぐるサスペンスフルな中篇小説。2011年度ブッカー賞受賞作。
〈フレンチ百貨店〉のショーウィンドーの展示ベッドから女の死体が転がり出た。そこには膨大な手掛りが残されていたが、決定的な証拠はなく……難攻不落な都会の謎に名探偵エラリー・クイーンが華麗に挑む!
「あなたたちはアセンションされました。これから、命をかけたゲームをやってもらいます」クラスで忘年会をしていた高校3年生の啓太たちは、突然不気味な仮面の人物によって体育館に監禁される。ここから出られるのはたった2人。男女でペアとなって様々なゲームを勝ち抜くしかない。負けた者を待つのはロスト=死。駆け引き、暗躍、裏切り…究極の心理戦が幕を開ける。緊迫のノンストップ・サバイバル・ホラー。
ふた月前の夜、池ノ端仲町の日野屋に賊が押し入り、金を奪って逃げた。あるじ久次郎は奉行所に届け出たが、恋女房のおきぬが犯されたことは隠していた。もう忘れようと夫婦が互いにいたわりあっていた矢先、再び同じ賊が日野屋に押し入る…。火付盗賊改方の頭に就任した長谷川平蔵は、神出鬼没の盗賊団捕縛を命じられ、正念場を迎える。「江戸怪盗記」をはじめ、人の世の哀感を滲ませる、「鬼平」の原点ともいうべき傑作捕物帳。
交通事故で死亡した女性の財布に残されていた新聞広告の切り抜きには、暗号めいた数字が記されていた。十津川警部は、この切り抜きに隠された犯行計画に気づく。それは、首相と総務大臣が首相公邸で死亡した事件に端を発していた。一方、京都駅の0番ホームには、新聞広告を目にした犯人グループが集結する。寝台特急に乗り込んだ彼らの綿密な計画とは?豪華寝台特急「カシオペア」の中で、犯人との息詰まる攻防が始まる。
「この城攻め、何かおかしいーー」急な陣触れと、無理難題の主命、そして敵方には貴族出の女城主。矢玉飛び交う戦場で運と欲に翻弄される人びとは、生き残りと恩賞をかけ、不可解かつ厄介な戦いに挑むが……。
売れっ子絵師・清麿が美人画に描き人気となった町娘2人をつけ狙う者が現れた。〈謎解き屋〉を始めた自由奔放な三十路の姫さま・静湖姫は、その不届き者捜しを依頼されるが……人気シリーズ第4弾!
平和を享受してきた伊賀国に暗雲が垂れ込める。隣国の伊勢を手中にした織田信長の侵攻が、いよいよ始まろうとしていた。伊賀国衆の子弟たち、忠兵衛、小源太、勘六、左衛門の4人は、押し寄せる信長の軍勢を前に、それぞれの選択を迫られる。信長の走狗となる者、屈辱に耐えようとする者、信長の命を狙う者、そして、特別な道を選ぶ者。故郷を愛した竹馬の友は、非情な運命に引き裂かれていく…。
幼なじみ・サヨの死の秘密を抱えた17歳の私は、ある女性に夢中だった。白い服に身を包み自転車に乗った彼女は、どこかサヨに似ていた。想いを抑えきれなくなった私は、彼女が過ごす家の床下に夜な夜な潜り込むという悪癖を繰り返すようになったが、ある夜、運命を決定的に変える事件が起こってしまうー。幼い嘘と過ちの連鎖が、それぞれの人生を思いもよらない方向へ駆り立ててゆく。最後の一行が深い余韻を残す、傑作長編。
浜松町の茶問屋「駿河屋」の姉妹は揃って器量よし、財産もあるが、結婚しないまま三十路を過ぎた。この先、気に入らない親戚に家を継がせるのも業腹だ。そこで妹のちよは名案を思いつく。白羽の矢が立ったのは、芝神明前の腕利き医師・北村宗哲のもとに出入りする浪人、長井判四郎。が、元渡世人の宗哲は、群雄割拠する江戸の裏社会に顔が利くだけあって、半四郎もややこしい状況に置かれていた…。人気シリーズ、堂々の完結。
時は平安、陰陽師の時代。”鬼斬り(おにぎり)”と呼ばれる鬼退治を生業とする美貌の剣士がいた。名は相馬鬼麿。そしてその相棒は、美少女ぽんぽこ。果たしてその正体は狸の妖かしであった!?
縁日で行きずりの男の子に「おっかさんだよ!」と取りすがって泣く女。錯乱した女かーーと誰もが素通りする中、次郎吉の妹・小袖は女の命を狙う浪人を見逃さなかった。女の素性は? 「鼠」シリーズ第5弾!
FBIに戻ったチョコザイは、ある日、日本語の殺人事件のニュースに反応。そこに沢の姿を見つけてーー。チョコザイ、沢、舞子の3人組が再びタッグを組み、絶妙なチームワークで犯人に迫る!