2012年3月発売
ひょんなことから雇われ医師として参加することになった、カラコルムの未踏峰ディラン遠征隊。キャラバンのドタバタ騒ぎから、山男のピュアにして生臭い初登頂への情熱、現地人との摩擦と交情…。そして、彼方に鎮座する純白の三角錐とは一体何物なのか…。山岳文学永遠の古典にして、北文学の最高峰。
京都近郊に建つヨーロッパの古城のような館・蒼鴉城を「私」が訪れた時、既に惨劇は始まっていた。首なし死体、不可解な密室、奇妙な見立て殺人、そして蘇える死者…。「謎」だらけの連続殺人事件を解決すべく登場したのは銘探偵メルカトル鮎ー。彼が導き出した凄絶な結末とは!?麻耶ワールド炸裂のデビュー作。
さまざまな「後藤さん」についての考察が、やがて宇宙創成の秘密にいたる四色刷の表題作ほか、百にもおよぶ断片でつづられるあまりにも壮大で、かつあっけない銀河帝国興亡史「The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire」、そしてボーイ・ミーツ・ガール+時間SFの最新型モデル「墓標天球」など、わけのわからなさがやがて圧倒的な読書の快楽を導く、さまざまな媒体で書かれた全六篇+αを収録。
戦争は終結に向かい、ロシアで革命が起き、そして罹患すれば死にいたるインフルエンザが流行の兆しを見せる1918年。ボストン市警察の若き巡査ダニーは、組合を結成しようとする急進グループへの潜入捜査を命じられる。同じ頃、遠く離れたオクラホマで殺人を犯してしまった黒人青年ルーサーは追手を逃れるためボストンへとやってくる。二人の青年の人生が思わぬ形で交錯する時、時代のうねりは発火点を迎えようとしていた。
逃亡者のルーサーはダニーの実家で職を得、二人は友情の絆を結んでゆく。だが、二人の行く手には数多くの困難が待ち受けていた。任務と仲間の板挟みになり、また許されぬ恋に悩むダニー。追手に怯え、悪徳警官に脅されるルーサー。そしてボストンの町では、生活苦に追い込まれた警官たちの不満が、ついに爆発しようとしていた…歴史の渦に翻弄される人々のドラマを『ミスティック・リバー』の著者が力強く描く超大作。
鎌倉幕府を開いた源頼朝、そして、日本史上の稀代の英雄、源義経の父にして、太政大臣・平清盛の最大のライバルと目された男、源義朝。平家に比肩すべく、関東を源氏の拠点として作り上げ、頼朝再起の基礎を作り、保元の乱では、敵方についた父と弟たちを殺し、源氏の棟梁に君臨した悲運の御曹司の波瀾の生涯。
美しい容姿からは想像もつかないほどガサツな叔母の意外な秘密についての表題作、雨の日だけ他人の心の声が聞こえる少女を描く「雨つぶ通信」、西日暮里の奇妙な中華料理屋を巡る奇譚「カンカン軒怪異譚」など、『花まんま』『かたみ歌』の著者が、昭和の東京下町を舞台に紡ぐ「赦し」と「再生」の七つの物語。
赤坂で発生した殺人事件の特捜本部に、警視庁公安部でロシア事案を担当する倉島が呼ばれた。被害者は右翼団体に所属する男だ。二日後、今度は暴力団構成員が殺された。2つの事件に共通する鮮やかな手口から、倉島はプロの殺人者の存在を感じる。鍵はロシア、倉島は見えない敵に挑む。公安捜査官の活躍を描くシリーズ第3弾。
「イリエワニ一頭を頂戴しました。怪盗ソロモン」凶暴なクロコダイルをどうやって?続いて今度はミニブタが盗まれた。楓ヶ丘動物園の飼育員である僕(桃本)は解決に乗り出す。獣医の鴇先生や動物園のアイドル七森さん、ミステリ好きの変人・服部君など、動物よりもさらに個性豊かなメンバーが活躍する愉快な動物園ミステリ。
無実の死刑囚を救い出すために与えられた期限は三ヶ月、報酬は一千万円だった。不可能とも思える仕事を引き受けた二人の男に待ち受けていた運命とはー手に汗握る展開と、胸を打つ驚愕の結末。現代社会の罪と罰を問い、圧倒的なサスペンスで読書界を震撼させた江戸川乱歩賞受賞作。『十年ぶりの後書き』収録。
次点から繰上当選した参議院議員の周辺で、次々と関係者が死んでいく。ある男は右腕が川に浮かび、ある男は不自然な交通事故にー。警視庁公安部警部・青山望の前に現れたのは、選挙ブローカー、刀匠、中国人鍼灸師、暴力団…。彼らが大きな権力の一点に結び付く。徹底的にリアルさにこだわった文庫書き下ろしシリーズ第二弾。
六世紀の中国、南北朝時代と呼ばれる動乱の世。北斉は無能な皇帝の乱脈を極めた統治のもと、西に北周、南に陳、北に突厥と三方を強敵に囲まれていた。あまりの美貌ゆえに仮面をつけて戦場にたったと言われる北斉の皇族、蘭陵王・高長恭は智勇兼備、不敗の名将であり傾きかけた国を必死でささえていた。
小学五年生のノブオは、誰もが一目おく野球少年。詩人である父は行方不明、母は働くことにも子どもにも無関心という悲惨な状況のなか、ひたすら長嶋に憧れ野球に打ち込みます。友との別れや理不尽に負った怪我、出生の秘密やほろ苦い初恋も、「長嶋」を心の支えに、ぜんぶぜんぶ乗り切るのです。
「復興しないったってさせてみせらあ。日本人じゃあねえか。」焼け野原の銀座にたったひとつ灯った、トタン小屋の飲み屋のランプー作家と実業家、二足の草鞋を生涯貫いた水上滝太郎(1887-1940)が、関東大震災後の銀座の人びとを描いて力強い『銀座復興』。他に、『九月一日』『果樹』『遺産』を収録。
裏切りと復讐、自殺と自由、不条理な争い、暴力、弾圧ー。均斉のとれた構造のうちに複雑な内容が秘められた、パヴェーゼ文学の原質をなす“詩物語”全10篇。当時エイナウディ社で働いていたカルヴィーノが遺稿から編み上げた生前未発表の短篇集で、いずれの作品も詩的想像力に満ち溢れ、完成度がきわめて高い。1953年刊。
吉祥寺にある書店のアラフォー副店長理子は、はねっかえりの部下亜紀の扱いに手を焼いていた。協調性がなく、恋愛も自由奔放。仕事でも好き勝手な提案ばかり。一方の亜紀も、ダメ出しばかりする「頭の固い上司」の理子に猛反発。そんなある日、店にとんでもない危機が…。書店を舞台とした人間ドラマを軽妙に描くお仕事エンタテインメント。本好き、書店好き必読。
下北沢の輸入雑貨店で再びアルバイトを始めた和子が持ち帰ったぬいぐるみのカエルから、突然野太い声が聞こえてきた。「よう。俺だよ!」。心中偽装事件を解決し、成仏したはずのオヤジ刑事・康雄が、「ポイント稼ぎのために戻ってきた」と言うのだ。翌日、盗作事件に巻き込まれた和子は、身に潔白を証明するため、“あみぐるみ刑事”と再びコンビを組んで、捜査を開始することに…。待望のシリーズ第二弾。
昭和二十年東京。八王子の神社の神主を務める明比家に伝わる秘能。それは、衆人環視の状況下で如何にして母親が子殺しの人買いに復讐したかを観客が推理する、世界最古の探偵小説というべきものだった。内容に呼応するように、上演中、演者が何者かに殺される。身近な悲劇と終戦目前の歴史的悲劇に人はどう立ち向かうのか。若き日の“検閲図書館”黙忌一郎が導く驚愕の真相。3・11を越えて著者が贈る破壊と再生を紡ぐ本格伝奇ミステリ。