2012年発売
七日後の立春に結婚をする決意をした花世は、花嫁修業に目もくれなかったつけが回り、てんてこ舞いに。るいや麻生宗太郎ら周囲の温かな支援で源太郎との祝言を無事あげる表題作ほか、老舗の糸屋で起きた連続殺人事件「糸屋の女たち」、築地居留地の清国人の不審死にはじまる人情譚「抱卵の子」など、六篇からなる珠玉の短篇集。
名代の茶道具屋の愛娘だったゆずは店の奉公人だった真之介と出奔、幕末の京都で道具屋「とびきり屋」を営んでいる。二人にわかるのは道具のことだけ。でもその「見立て」力で、龍馬や桂小五郎らと渡り合い、動乱の京を生き抜いていく。若い夫婦の成長を軸に、京商人の心意気を描いた大人気シリーズ第2弾。
遠藤慶太は30歳。大航ツーリスト成田空港所に赴任して二年目を迎えた。今や空港勤務のプロ「あぽやん」として大活躍ーのはずが、能天気な新人の教育、テロリストの出没騒動に今日も悪戦苦闘。さらに空港所閉鎖の話が浮上する中、恋のライバル登場で、まさに大ピンチ!?遠藤の活躍を描く、大人気シリーズ第二弾。
江戸の町で付け火が続いた。捕縛された盗賊・東雲の鉄五郎の一味の者が、鉄五郎を放免しなければ火を放つと脅してきた挙げ句のことだった。南町奉行の荒尾但馬守は、大火を恐れるあまり脅しに屈しかけ、吟味方与力・秋山久蔵に対し探索の日切りを申し渡した。久蔵は、期限までに一味を捕らえられるのか。人気シリーズ16弾。
殺人を犯して服役、八年の刑期を終え出所した笙子。静かに暮らすつもりが、かつての恋人が起こした十億円強奪事件に巻き込まれて複数の組織に狙われるはめに。かかる火の粉を笙子は振り払えるのか?ハードボイルドの新しいヒロイン像が絶賛された第16回松本清張賞受賞作。
昭和初期、女中奉公にでた少女タキは赤い屋根のモダンな家と若く美しい奥様を心から慕う。だが平穏な日々にやがて密かに“恋愛事件”の気配が漂いだす一方、戦争の影もまた刻々と迫りきてー。晩年のタキが記憶を綴ったノートが意外な形で現代へと継がれてゆく最終章が深い余韻を残す傑作。著者と船曳由美の対談を巻末収録。
完全犯罪テクを磨く高校生たちが世間にはびこる悪を討つーそれが醍葉学園“ゼロ年代探偵小説研究部”の裏活動。援交、イジメ、立てこもりと様々な事件の解決へまとまり見せる部員たちだったが、謎の女子の入部で分裂危機が!つのる想いと少女の闇と偏る正義が非モテ系男子部員を行き過ぎた犯罪へ導いていく。元顧問・由利千早は事件阻止へ急ぐが、思わぬ災いが自分にも。
一世代に一人だけ現れるという、「創石師」のナイトゥル。人の感情を靄に見て両手のひらに包めば石を創ることができるという稀有な魔力を持ちながら、隣の部族の侵攻によって、家族や婚約者、血族のすべてを失い、恨みや憎しみといった感情までも奪われ、敵のために自らの命を削ってその力を使う日々を送っていた。だが、闇色に七色の虹をちりばめた水晶を手にした日から、その運命は急激にまわりはじめるー。
村中の人間が集まると、アルフェットゥ語りの始まりだ。豹頭の仮面をつけたグインがゆっくりと登場する。そこはノスフェラス。セム族に伝わるリアードの伝説を演じるのは、小さな旅の一座。古くからセムに起こった出来事を語り演じるのが生業だ。しかしその日、舞台が終わると役者の一人が不吉な予感を口にして身を震わせた。それは、この世界に存在しないはずの、とある禁忌をめぐる数奇な冒険の旅への幕開けだった。
ノンフィクション作家の笹尾は、容疑者の視点で生々しく綴られた小説『堀田守男氏の手2』をきっかけに、北関東で起きた少女連続失踪事件を追いかけることに。被害者家族との接触を続ける中、冤罪の疑いが晴れぬまま服役を終えた容疑者が出所し、事件は大きく動き出す。小説家は誰なのか?容疑者は無実なのか?そして、真犯人は誰なのか。
八歳の時にある出来事から言葉を失ってしまったマイク。だが彼には才能があった。絵を描くこと、そしてどんな錠も開くことが出来る才能だ。孤独な彼は錠前を友に成長する。やがて高校生となったある日、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり、芸術的腕前を持つ解錠師に…非情な犯罪の世界に生きる少年の光と影を描き、MWA賞最優秀長篇賞、CWA賞スティール・ダガー賞など世界のミステリ賞を獲得した話題作。このミステリーがすごい!2013年版海外編。2012年週刊文春ミステリーベスト10海外部門第1位。
遠藤周作には、代表的長篇小説が多くあるが、それぞれの長篇には、源泉となる短篇作品がある。遠藤文学の核となる名短篇十二篇と単行本未収録の一篇。遠藤周作の文学・人生・宗教観がすべてわかる短篇集。
いつの時にも市井の人として、さりげない日常に、慈しみを含んだ独自の視線を向けていた木山捷平。彼の真骨頂を表出したともいえる、初恋の淡い想い、さりげない男女の出会いと別れ、細君の留守中のちょっとした顛末といった著作の数々を編纂した作品集。表題作の他、「空閨」「留守の間」「口婚」「好敵手」など、短篇の名手といわれた著者の十一篇を収録。
愛し合って一緒に住んでるのに、婚姻届を見ただけで顔がひきつるってどういうこと!?好きなのにどうしてもすれ違う二人の胸の内を、いやんなるほどリアルに描く連作2篇。ひりひり笑える同棲小説。
父・清隆を銃殺した杉山と帰宅後鉢合わせした塔子は、重傷を負わされてしまう。半年間の昏睡状態に陥ったのち、一命を取りとめ、奇跡的に目覚めた。犯人・杉山への判決に得心できない塔子に、事件担当刑事の犬伏は、「捜査に強い圧力がかかった」ことを告げる。さらに犬伏は、警察も捜査できない事件を扱う文目屋なる殺しの集団の存在を塔子に明かすのだった…。
尖閣諸島近海で中国海洋局の漁業監視船と海上自衛隊の哨戒艇が武力衝突した。これは環太平洋全体の自国経済圏化を狙った中国の覇権主義の第一歩で、続いて沖縄、台湾の制圧を目論んでいた。国家主席の習近平は、大陸沿岸に中距離弾道弾を配備させる。一方、米国のNSA(国家安全保障局)は軍事衛星を使い中国の動きを日本側に通報し、日米両国はミサイルによる邀撃作戦を展開することになるが…。
インテリアデザイナーの沙良、36歳は、母の駒子61歳とふたり暮らし。「あなたが心配だから」という名目のもと、チャンスさえあれば、娘を支配したくてたまらない母。善意がベースとわかってはいるものの、母の言葉に、嫉妬心やライバル心を感じることがある。家賃はなし、家事もすべてお任せという夢のような環境と干渉を天秤にかける娘。結婚のこと、老後のこと、娘と母の思惑は錯綜する。