2013年11月発売
崩れゆくものこそ、美しく愛おしいーー。窓を叩く激しい雨、哀切なピアノのメロディ、そしてかすかな恋の予感。それは破滅への序曲なのか? ピアノ調律師と自動車整備工の平穏な恋は、一人の男の出現によって、思わぬ局面を迎える。甘やかで残酷な、二つの愛のはざまに揺れる、女・三十歳の選択。極上の恋愛小説! <本文抜粋> 〈苦味は感覚の必需品である。苦味とか哀しみとか痛みとか、それらは生きていく上で欠かせないものなのだ〉 〈幸福なんてものの概念をいちいち探ったりしない。それが、最も健全な状態なのかもしれない〉 〈「好き」の分量が多いほうが、いつだってみっともない行動をする。みっともない分だけ相手はしらけていく〉 〈あの人は今、何をしているのだろう。答えを知ったところで、それは薬にもなるし毒にもなる〉 〈単なる偶然を、つい運命などという大げさな言葉に置きかえてしまう。これだから恋愛は嫌だ。一番嫌いな女に自分自身がなってしまう〉 〈別れるとは、どんな状態を指すのだろう。逢わない、連絡をとらない、相手の温もりをあてにしない。胸がどんより重くなった〉
街を逃げ出した久我原がやってきたのは、司法過疎地域の南鹿村。村で唯一の法律家となった彼のもとへ、待ってましたと言わんばかりに村人が飛び込んでくる。薄幸の人妻、費用を叩く村の役人、親戚付き合いに難のある一家の大黒柱。久我原は村の雰囲気に慣れぬうちに、三人の難解な依頼を受けることにー。第32回小説推理新人賞受賞作他、久我原が所属する「群馬司法書士青年会」に降りかかった事件を描く二編を収録。現役の司法書士が描く、法律ミステリーの新境地!
江戸の裏社会で存在感を増す男、残月の異名を持つ郎次は、抜け荷の稼業を一手に仕切っており、一家の跡目を襲う立場と見なされていた。だが、一人の因業女を始末したことから、潮目が変わり、次第に抜き差しならない立場に追い込まれていく。
明治10年、根津遊郭。御家人の次男坊だった定九郎は、過去を隠し仲見世の「立番」として働いていた。花魁や遊郭に絡む男たち。新時代に取り残された人々の挫折と屈託、夢を描く、第144回直木賞受賞作。
僕が小説を書くようになったのには、心に秘めた理由があった(「小説家のつくり方」)。ふたりぼっちの文芸部で、先輩と過ごしたイタい毎日(「青春絶縁体」)。雪面の靴跡にみちびかれた、不思議なめぐり会い(「ホワイト・ステップ」)。“物語を紡ぐ町”で、ときに切なく、ときに温かく、奇跡のように重なり合う6つのストーリー。ミステリ、ホラー、恋愛、青春…乙一の魅力すべてが詰まった傑作短編集!
食品輸入会社の現地職員としてアテネで働く美貴は、仕事で訪れたとある村で廃院となった修道院を見つける。その宿坊の壁に描かれた大天使ミカエルを目にして以降、彼女の周りでは次々と不可思議な現象が起こる。無人の聖堂で不意に聞こえる祈りの声、相次ぐ村人の死、積み重なる家畜の死骸。全ては神の仕業か悪魔のいたずらか。異国の地を舞台に繰り広げられるサスペンス長編。
「如水に謀反の疑いあり」。徳川家康は本多正純に真偽を確かめよと命ずるが…。黒田官兵衛・長政父子の情を絡め、日本史最大の謎、関ヶ原合戦に新解釈で挑み、官兵衛最後の采配を描く、戦国小説の白眉。
戦国時代。土佐の名門、長宗我部家の若き当主・元親は、領民が安らかに暮らせる戦のない国を目指して四国統一に乗り出す。巧みな戦略で着実に領土を広げてゆくが、戦で多くの部下を失い、肉親をも殺めたことで、元親は自身の器量と夢との間で苦しみ始める。さらに、天下を目指す信長、秀吉の脅威が迫りー。四国の覇者、長宗我部一族の栄光と挫折を真正面から描く、圧巻の歴史小説。
動乱の予兆をはらむ幕末の会津藩。下級武士の家に生まれた伊庭俊輔は、頭はいいが大人しい一平、何事にも中庸を得た新次郎ら幼馴染と楽しい日々を過ごしていたが、上士の子弟に因縁を吹っかけられ袋叩きに遭う。将来を誓い合った隣家の娘である梨津に縁談話が持ち上がり、平穏な暮らしが一変する。時代の激浪にもまれ、俊輔は大切なものを守りぬけるのか。青春時代小説の新基軸、ここに始まる。
「女」という漢字を分解すると、“く”“ノ”“一”-女忍者の通称である。そのくノ一を主人公にした、傑作六篇を収録。真田方の忍者と徳川方の女忍の因縁のドラマ。愛する新妻が隠密だと知った夫の苦悩。男たちの間を流転する忍びの悲哀…。戦国乱世の裏で、江戸時代の泰平の底で、くノ一たちが濃艶に、きらびやかに乱舞する。本邦初のくノ一アンソロジー、ここに見参!オリジナル文庫。
イギリス医学界の重鎮、アーサー・ヒルがノーベル賞を受賞したー。知らせを受けた青年医師の津田は、同じ分野で研究を続けながら惜しくもこの世を去った恩師、清原の死因を探るなかで、アーサーの周辺に不審な死が多いことに気付く。彼らを死へと追いやった見えざる凶器とは一体何か。真相を追ううちに津田は大きな陰謀に飲み込まれてゆく。ノーベル賞を題材にした本格医療サスペンス。
7編の連作短編を通して〈笑い〉と〈忘却〉というモチーフが繰り返しバリエーションを奏でながら展開され、精緻なモザイクのように編み上げられる、変奏形式の小説。クンデラ文学の原点。
「付き合い始めたあの頃、僕はこれっぽっちも君のことが好きじゃなかった。全部嘘だった」天才サウンドクリエーターの小笠原秋は、人気バンド「CRUDE PLAY」の元メンバー。青果店を営む家で育った小枝理子は、クリプレの大ファンの、歌うことが好きな女子高生。ビジネスとしての音楽につまらなさを感じていた秋は、気まぐれに理子に声をかけ、自分の正体を隠したまま付き合い始める。しかし、理子がクリプレのプロデューサーにスカウトされ、デビューすることに。“嘘”から始まった、秋と理子のせつない恋の行方はー!?累計四百五十万部突破同名コミックの映画版ノベライズ。
事件記者のアビーは人気俳優ジャック・ウインターのプライベートジェットに乗り込み、彼にインタビューすることになった。彼はスター然として尊大だが、スクリーンで見るよりはるかに男性らしく、強烈な魅力を放っていた。そんな中ジェット機が墜落し、ホンジュラスのジャングルに不時着してしまう。危機的状況下でアビーは不注意な行動からジャックの罰を受けることになり…。人気作家の満を持しての日本デビュー作!
ジャックと共にジャングルから救出されたアビー。帰国後、彼の手ほどきでBDSMの世界に足を踏み入れる。自分は硬派なキャリアウーマンだと自負していたのに、彼に鞭打たれると、歓びと期待感を覚えてしまうーアビーは戸惑いながらも、彼の優しさに触れ、心を解き放つのだった。そんな折、ジャックの過去がスキャンダラスに報道され、二人の間に誤解が生まれる。セクシーでホット、その上、心温まる極上ロマンス!
西暦453年、フン族王アッティラの婚礼の祝宴に沸く陣地。強力な騎馬部隊を率いて中央アジアからロシア・東欧を制覇し、帝政末期の西ローマ帝国まで脅かしたアッティラは、「神の鞭」の異名を取り、西側キリスト教徒を震え上がらせていた。そのアッティラが宴の席でローマからの使いの巧妙な手口により毒殺されるー。“トレジャーハンター”のファーゴ夫妻は知り合いの考古学者フィッシャー博士から、ハンガリーでフン族のものらしき遺跡を発見したとの連絡を受ける。遺跡からは武装した千体もの遺骸が発掘され、そのひとつの鎧にアッティラの墓のありかを示す暗号が見つかる…。
豪腕ながらも、依頼人に高額報酬を要求する“悪辣弁護士”御子柴礼司は、夫殺しの容疑で、懲役十六年の判決を受けた主婦の弁護を突如、希望する。対する検事は因縁の相手、岬恭平。御子柴は、なぜ主婦の弁護をしたのか?そして第二審の行方は?
この出逢いは、人生を変える。走るように、飛ぶように生きた三十五年の熱き奔流。子規と漱石。二人の友情は、日本の未来をひらいた。こんな友が欲しかった。こんな男に、側にいてほしかったー。伊集院静が贈る、待望の、感動の青春小説!
不妊の末に授かった息子には、出生前診断によって重大な疾患が発見されたー選べるはずのないことを選ばされ、孤立感と絶望のあいだを揺れ動く35歳のフリーランス・ジャーナリスト、ルーチェの魂の彷徨を、著者みずからの体験をもとに描いて大きな反響を呼んだイタリアのベストセラー。ローマ賞受賞。イタリア最高の文学賞・ストレーガ賞最終候補作。
もし神が気まぐれで怠け者で、おまけに惚れっぽいティーンエイジャーの男の子だったら!?そう、その神の名はボブ。そもそもの始めはこうだった。地球の神の第一候補は直前になって辞退した。この惑星は宇宙の果てにあり、労働環境が悪かったのだ。結局、地球の管理はポーカーゲームの賭け金にされ、ゲームに勝ったプレーヤーが、それを無気力な十代の息子ボブに譲り渡した。とはいえさすがに心配した理事が中年の管理職ミスターBを補佐につけ、こうして地球の天地創造は始まったのだ。そしていま、いい加減な神ボブが(またしても)若い女性に恋をした…。ポップで、八方破れで、ちょっぴりせつない。カーネギー賞、ガーディアン賞受賞作家が贈る、腹が立つけどなぜか憎めない“神”ボブと地球の物語。