2013年2月発売
「島」という絵を通じて相馬が知り合った女性ー広島で被爆し心と体に深い傷を負った芸術家・素子と彼女と暮らす美しく清楚な綾子、双方に惹かれてしまった彼の許に二人が広島で心中したという報せが届く。これは一日の物語であり、一年の出来事であり、一生の話であり、一人類へ与えられた悠久の啓示でもある。文学史に燦然と輝く、著者を代表する長篇小説。日本文学大賞受賞作。
お金がないなら、知恵を出すのよ!もりはら鉄道新社長・篠宮亜佐美(31歳独身)の果敢な挑戦が始まった。立ちはだかるのは、やる気を失った社員たち。一筋縄ではいかない経営幹部、そして、亜佐美らを次々と襲う不穏な事件。「もり鉄」に明日はあるのか!?人々の希望を乗せた列車は、感動の終着駅に向かってひた走る。
地獄変の屏風絵を画くために娘に火をかける異常の天才絵師が描いた「地獄変」、映画「羅生門」で一躍世界に名を馳せた「藪の中」などの表題作のほかに、「道祖問答」「六の宮の姫君」「二人小町」などを収める。王朝物とよばれるこれらの作で、芥川は古い物語の中の人物を見事に近代に蘇らせた。
「裏に一本の柘榴の木があって、不安な紅い花を点した」(小川未明「薔薇と巫女」)。何を視、どう伝えるのかー日露戦後の新機運のなか、豊饒な相克が結ぶ物語。明治三八ー四四年に発表された、漱石・荷風・谷崎らの一六篇を収録。
「お読みに為って、お笑い為さっては如何?」素朴な金銀細工師の不屈の恋、代官・領主・大元帥の智恵比べ、枢機卿をも夢中にさせた高級娼婦の有為転変。いつの世にも変わらぬ大胆で滑稽な愛の諸相を、雅な言葉でほろりと綴った、文豪会心の艶笑譚。図版多数。
理由もなく、当たり前のように会えていた日々や、無条件に一番近い場所にいて、気軽に誘い合っていた日々は、何をどうしたって戻らない。卒業は学校だけのものじゃない。様々な「その瞬間」を描きとる13ストーリーズ。
北アフリカの港町モガドールで若い娘ファトマが投げかける謎めいた眼差し、町の人々のあいだで交錯する生と性の予感…。メキシコで最も権威ある文学賞「ハビエル・ビジャウルティア賞」受賞作。
社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説の傑作に、驚きと感嘆の声。人間の尊厳、真の善と悪を、今をいきるあなたに問う。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
明日、あなたの身に降りかかるかもしれない“リアルしばり”の本格サイバーセキュリティ小説!ネット上のささいな悪意を集約させるという「殺人販売サイト」ギデス。いったい誰が作り、広めているのか。君島がたどり着いた先はー。
突如襲われる眩暈。それは異界の扉が開く瞬間なのか?作家の日常に散在する“アンバランスゾーン”への入口。廃神社の鈴の音、閏年に咲く狂い桜、深泥丘三地蔵、ラジオ塔、そして深泥丘病院…。この京都、面妖につき取り扱いにはご注意を。-どこから読んでも、いよいよ深まる謎。綾辻版『ウルトラQ』ともいうべき、読みきり連作短篇、待望の第二集。
昭和30年代の新宿、珈琲店の二階に住む美しき青年・水上櫂が開いたその探偵社は、「雨の日だけ営業する」そう噂されていたー。櫂のもとに、大家で幼馴染の和田慎吾が「最近、自分の店子の会社で、郵便物の間違いが多くて、応対する受付の女性が困っている」と訪れる。慎吾が櫂に相談した三日後、その女性は失踪して…(表題作)。友人の死を悼む女性の真意を見抜く「沈澄池のほとり」、破格の条件が用意された学生カメラマン採用試験の謎に迫る「好条件の求人」など四作品を収録した連作短篇集。
生来の男性嫌悪症のため、全寮制の私立女子校・星城学院へ転入してきた主人公・秘芽留。「お嬢様」独特の世界に最初は戸惑いながらも、次第にクラスメートたちとも距離を縮め、学園生活を楽しみ始める。しかし、そんな矢先に、学院にとっての魔の季節・クリスマスがやってくる。なんと、その日は、学園の中から生贄の処女を一人選び、隣の男子校・珀陵高校に捧げなければならないという信じがたい儀式が毎年行われていたー!?クリスマスイブの当日、学院内で繰り広げられる男子生徒と女子生徒の必死の攻防。その闘いの最中に、驚愕の真実が明かされる…。
“騙し・騙され”の壮絶なゲームの果てに嘲笑うのは誰か!?詐欺師の意地とプライドを賭けた闘いが、いま始まるー最後にカネを掴んだ者が勝ち!大阪の裏社会を舞台に、疾風怒涛で駆け巡るアウトロー小説の極北。
高度なコミュニケーション社会の発達の行く末に失望し、失われた人間性を取り戻すため、立ちあがった四兄弟。大舞台の幕が今、上がる…夢想家の長男、実務肌の次男、兄に忠実な三男、ミステリアスな四男ー彼らが語るのは、脱力と失笑を誘う、ただの世迷い言か?それとも、人と人とが本当につながる夢のような世界なのか?戯曲を模した小説、その小説のノベライズという、まさかの手法で生み出した、二つのトゥルーストーリー。隠れた名作「この世の、ほとんどすべてのことを」も友情収録。
函館ーわずか二十年で三度も悲劇に見舞われた町。昭和9年春・函館大火災、昭和20年夏・函館大空襲、昭和29年秋・青函連絡船「洞爺丸」沈没。そのすべてに遭遇してしまった男ー泊敬介。運命はこの男を何度突き落とせば気が済むのかー。海の男の生還と鎮魂のドラマ。再生と矜持の感動巨編。
二匹の名は、いい孤独・ソリチュードと悪い孤独・ロンリネス。恋人に暴力をふるうDV男、好きでもない男と契約結婚する女、整形して過去を捨てた青年。貰われる先々で二匹は、寂しさで破裂しそうなヒトという生き物を見つめる。ふたつの「孤独」から、生きる真理を問いかける。心揺さぶる、最新長編小説。