2013年8月28日発売
年下の、男の匂いのしないユヒラさんに誘われて、春まだ浅い夜、月光をかがり火がわりに夜釣りに出かけた。一度吸えば、もう死んでもいいと思うくらい美味しいというトモスイを探しにー。第三の性に寛容なタイ訪問を機に創作された川端康成文学賞受賞の表題作。バリの噎せ返る緑のなか、姉と弟の禁断の愛を描く「芳香日記」ほか、アジアのエロスと情熱を湛えた傑作短編十編。
諸葛亮と司馬懿、二人の天才による対決がいよいよ始まった。勇将・姜維を得るも、趙雲や関羽の遺児らを亡くし、期待されていた馬謖は街亭で痛恨の敗北を喫するなど、蜀漢は人材不足に悩んでいた。だが諸葛亮は、三年の内政で国を建て直し、忠純と神算鬼謀の限りを尽くして、秋風の五丈原における最期の決戦に挑むー。宿命と永訣の最終巻。
生涯に唯ひとりの最高の敵と出会ったーー。出世欲に揺れ、女に惑いながらも己の剣の道を必死に磨き続けてきた武蔵の半生。憎まれ、救われ、教わり、愛した数多の記憶を胸に、お通と思いを確かめ合ったのは因縁の相手・佐々木小次郎との決戦間際だった。向かう先に待ち受けるは勝利か、死の府かーー。人々の祈りを乗せていざ、船島へ! 思索と感動に満ちた圧巻の結末がここに。最高にシビれる歴史ロマン落涙必至の最終巻。
ついてないな。そもそも高校に入ったときからついてない。バスに乗り遅れたナツミは停留所で小学校時代の友人と再会する。ぎこちない会話はやがて不幸の手紙へー(「銃を撃つ」)。少しずつ少しずつ積み上げてきた生が、ふと直面する戸惑い、やりきれなさ、苦い思い。その儚くも愛しいミルフィーユのような断面を鮮やかに描き出す珠玉のナイン・ストーリーズ。著者初の短編小説集。
オレ、シンジ、パンクロックにハマッたんだ!-17歳の少年の脳内に突如、100年前の革命家の魂が棲みついた。関東大震災後に虐殺された伝説のアナーキスト大杉栄だ。パンク少年+アナーキストは閉塞した21世紀ニッポンを疾走する。二人の運命は?アイドル美少女との恋の行方は?政治と文学、アイドルとパンク、時空を突き抜け元気になる!!「恋と革命」の痛快パンク青春小説。
「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開ーー。この作品で一躍脚光を浴びた現代アメリカ文学の旗手の記念すべき小説第一作。オースター翻訳の第一人者・柴田元幸氏による新訳、待望の文庫化!
“やりすぎミステリー”の旗手が贈る、100パーセントの推理小説!“血の池”に浸かった死体には両手首がなかった。難事件に挑むのは、孫におんぶされたおばあちゃん!名刑事の未亡人・城沢薫の“位牌推理法”が炸裂する!?
秀吉の朝鮮出兵が始まった頃のこと。京の一商人・角倉了以は朱印船貿易を終えた帰途、備前・吉井川で人生を変える出来事に遭遇した。了以は、舟子が「ほ〜いほい、ほ〜いほい」と掛け声を上げながら、上流へ舟をひっぱり上げる光景を目撃したのだ。かねてより了以は山城の北西部、大堰川・保津川に水運を開けば人々のためになると考えていて、その方法がわからず悩んでいたが、奇しくもこの光景がその方法そのものだった。しかし戦国の世はまだ収まらず、了以の思いは子の素庵を巻き込み家業もなげうった末、ようやく十三年後に達成される。さらに父子は富士川や高瀬川開削舟運にも着手すると、豪商へとまっしぐらに進んでいくー。「京都の水運の父」として歴史に名を残すことになった父と子の生きざまを描く歴史長編。
俺、柳井馨は存在感の薄い地味なリーマン。そんな俺が休暇を利用して訪れたのは、遺跡で知られる中東の小国ネムル・アルカト王国だ。ところが、どうやらこの国では俺の冴えない容貌が「完璧な美」に見えるらしく、入国するやいなや超絶ハンサム王子のシャルクに一目惚れされ王宮に連れてこられた挙句、遺跡の案内まで買ってでられて…。四人の腹違いの王子様に囲まれ…突然の“モテキ”に、どーする俺!?