2013年発売
騙されていると知りながらも、出張ホストに貢ぐ「りつ子」。男の都合に合わせ、ソープ嬢へと身を落としていく「茉莉」。中学生の男子生徒に密かな欲情を抱く養護教諭の「和美」。ありきたりの生活の中にある、小さな小さなくぼみ。わかっていて足を踏み入れるのか、気づかないうちに、穴が広がってすべり堕ちてしまうのか。一途に愛することの幸せ、そしてその代償。十人十色の愛のカタチを描く、傑作短編集。
あたたかな一皿が、誰かと食卓で分かちあう時間が、血となり肉となり人生を形づくることがある。料理人の父に反発し故郷を出た娘。意識の戻らない夫のために同じ料理を作り続ける妻。生きるための食事しか認めない家に育った青年。愛しあいながらすれ違う恋人たちの晩餐ー。4人の直木賞作家がヨーロッパの国々を訪れて描く、愛と味覚のアンソロジー。味わい深くいとおしい、珠玉の作品集。
風営法の改正に伴い、若手ホストたちがショーとスイーツでもてなす昼間の2部営業をはじめた「club indigo」。人気は上々だが、個人主義で生意気な若手ホストたちと、ジョン太、犬マンなどのレギュラー陣との間に対立が。しかも彼らが連れてきた謎の青年が新たなトラブルを引き起こし!?謎だらけのマネージャー・憂夜の素顔に迫る表題作ほか、全4編を収録したホスト探偵団シリーズ第4弾!
和助と作蔵は信州の幼なじみ。江戸で食い詰めた二人は、仏具屋へ押し込みに入る。盗んだ五十両は、ほとぼりがさめるまでと、和助が箱に入れ質屋『万屋』へ預けたが…。店主の藤十郎は、箱の重さに不審を抱き、和助を探り始める。やがて二人にお上の手が伸びた時、裏で幕府を脅かす意想外のからくりが仕組まれていたことが判明。悪を挫き庶民を護る藤十郎の名裁きやいかに!痛快人情捕物帳。
自称「貴族」で趣味は「探偵」という謎の男が、コネと召使いを駆使して事件を解決! 斬新かつ精緻なトリックと過去に例のない強烈なキャラクターが融合した、奇跡の本格ミステリ集。(解説/千街晶之)
同じ大学に入学した妹と同居することになった「私」。妹を追うようにして写真部に入った私は、顔に皮膚炎をわずらいながらも写真の魅力に少しずつ引き込まれていく。そんな私を妹は意図的に無視し続ける。いびつな二人暮らしが続くなか、ある日妹は荷物と共に忽然と姿を消して…。現実世界に突如現れる奇妙な出来事を丁寧な筆致で掬い取る。第149回芥川賞を受賞した著者の小説二作品を収録。
時は明治末。財産家の次男に生まれた代助は30歳になっても仕事に就かず、結婚もせず、父の金に徒食して暮らしていた。ある日、失職して上京した友人、平岡の来訪を受ける。彼の妻、三千代は、かつて代助とも因縁のある間柄だった。再び目の前に現れた三千代。それをきっかけに、停滞していた日々の歯車が思わぬ方向に少しずつ動きはじめる。『三四郎』に始まり『門』へと連なる、三部作の第二作。
オスロにその年の初雪が降った日、一人の女性が姿を消した。彼女のスカーフを首に巻いた雪だるまが残されていた。捜査に着手したハリー・ホーレ警部は、この10年間で、女性が失踪したまま未解決の事案が、明らかに多すぎることに気づく。そして、ハリーに届いた謎めいた手紙には“雪だるま”という署名があった…。全世界でシリーズ累計2000万部、ノルウェーを代表するミステリー作家の傑作。
“雪だるま”事件は連続殺人の様相を呈していた。また、10年前に起きた警官失踪が、事件に関係していることも明らかとなる。捜査班の前には、次々と容疑者が浮かぶが、真犯人はあざ笑うかのように先回りし、やがて、その魔手は、ハリーの身辺にも迫る…。アルコール依存症と闘いながら捜査に打ち込む、陰影に富む主人公と、癖のある同僚警官たち。30カ国以上で出版されている傑作警察小説。
ひょんなことから、俺様財閥総裁・原島俊紀に気に入られ、彼の専属夜食係になった谷本佳乃。俊紀の事故、会社の危機など艱難辛苦を乗り越えた彼女は、俊紀との間に新しい命も授かり、あとは結婚式を待つばかり。けれど、義母である和子とはぎこちないまま…佳乃はなんとか和子との関係を修復しようとするがー義母との関係修復に奮闘する「いい加減な和解」他、出産編「いい加減な登場」、育児&仕事復帰編「いい加減じゃない保育所」の全3編を収録。俺様総裁と、一筋縄ではいかない元夜食係のすったもんだストーリー、待望の第3巻!
北極圏に墜ちた機体のブラックボックスを回収せよーロシア人大富豪の乗ったプライベートジェットが、北極圏で消息を絶った。暗殺が疑われるが、確認の術がない。ブラックボックスからの信号は、あと3日で止まるという。信号が届く範囲はわずか半径10キロ。元SASのウェストらは、視界ゼロの猛吹雪の中、どうにかターゲット・エリアに到達するが、信号はまったく検知できない。そんなとき、ロシア製攻撃ヘリコプター、ブラック・シャークが飛来し、彼らを上空から襲撃するー。想像を絶する過酷な環境下で展開する渾身のミリタリー・アクション。
天正遣欧使節団とともに、長崎を出航して二年半。異国の地で貪欲に西洋の技を身につけていく次郎左。言葉の壁を実力で乗り越え、普請現場で、たちまち名を上げていくが…。嫉妬の目、密告、逃避行、戦乱の日々。帰国を夢見つつも、イスパーニャ軍の暴虐に反旗を翻すネーデルラント共和国軍に力を貸し、鉄壁の城塞を築き上げた男の波乱の生涯!
高貴中の高貴薬といわれるのが、「紫雪」である。まさに秘薬であった。医薬の研究者なら一度は目にして、できれば口に含んでみたいと熱望する名薬である。口中に投じれば淡雪のように融けるという。そこから、「雪」の字が当てられていた。用いる生薬類も入手困難のうえに高額で、製法に高度な技術を要するので、当時、製剤は事実上、不可能だった。中国から輸入され、唯一、正倉院に所蔵されているだけである。奥医師ですら現物を見た者はいない。幻の薬である。その幻の薬を家康は欲したのではないか。医典籍を渉猟し、みずからも製剤するまでに医薬に長けた家康だからこそ、正倉院に幻の薬を発見して入手を思いたったといえる。家康は単なる好奇心だけで「紫雪」を探したのだろうか。
九州を平定し、荒廃した博多を最後に復興した秀吉には、大明国制覇の野望があった。大陸との交易で栄えてきた商人として、対馬の宗氏とともに戦火を交えぬための工作をした宗室だったが、秀吉は息子鶴松の死をきっかけに朝鮮出兵を決断。宗室は石田三成に密かに呼び出される。名だたる戦国武将たちと渡りあいいくさなき世を求めた、気骨溢れる商人を描く。
精神病院で受けた絵画療法によって絵の才能が開花した青年を巡る、病院関係者たちの心の闇を書簡形式で綴るミステリ「火焔樹の下で」、隣室をのぞき見た孤独な娘を誘う異様な遊戯とその結末を語る「密室遊戯」のほか、初文庫化に際し、閉鎖的な地方に生きる少年少女の倦怠と残酷を幻視的な筆致で描き出した「バック・ミラー」など3篇の単行本未収録作を附した16篇を収める。
地の民を治療する医術の匠を目指すことにしたダグは、“新月湖”駐留地に基礎継ぎの匠がいるとの噂を聞いたフォーンに勧められ、教えを乞おうと決意する。果たして湖の民と地の民の夫婦は歓迎してもらえるのか?弟子入りを志願してきたダグに基礎継ぎの匠は戸惑いを隠せない。ふたつの民族の融和に奔走するダグとフォーンの奮闘を描く、ビジョルドのファンタジー四部作完結。
“新月湖”駐留地の基礎継ぎの匠への弟子入りを許されたダグ。妻のフォーンも元警邏員の若者たちも、安住の地を見いだしたかにみえた。だが地の民の子どもをダグが治療したことから、再び駐留地を出て行く羽目に。驚いたことに師となった基礎継ぎも一緒に来てしまう。平和な旅も束の間、一行の前に悪鬼の影が。数少ない警邏員で、恐ろしい悪鬼に立ち向かうことができるのか。