2014年8月29日発売
「先生ー生きてくって辛いね。悲しいことですね」両手両脚を切断された若い女の惨殺死体が発見され、瓦版には連日「達磨美女」の文字が躍る。妻・おさとの幼馴染で、謎の死を遂げた名人花火師の一人娘・おゆきの用心棒となった貧乏浪人・由比三四郎は、迫りくる敵を迎え撃ち、憎き下手人を追う。
原発事故による居住制限区域内で被曝した牛たちを今も生かそうとする牧場で、ボランティアに来た女性が見たものはー「聖地Cs」。非正規雇用で働く男性が「猫が苦しむ社会は、ヒトも苦しむ社会」だと切実に思うまでの日々を描いた「猫の香箱を死守する党」。現代社会の問題を真正面から捉えた二篇を収録。
金が欲しいんやったら爺を紹介したる。一千万でも二千万でも、おまえの手練手管で稼げや。妻に先立たれ、結婚相談所で出会った二十二歳歳下の小夜子と同居を始めた老人・中瀬耕造は、脳梗塞で倒れ一命を取り留めたものの意識不明の重体に。だが、その裏で、実は小夜子と結婚相談所を経営する柏木は結託、耕造の財産を手に入れるべく、周到な計画を立てていた。病院に駆けつけた耕造の娘・尚子と朋美は、次第に牙をむく小夜子の本性を知り…。
人間の消失と、その突然の帰還が不思議とされない街“新宿”。吹雪の日、北の若者秋摩が“秋人捜しセンター”に依頼を持ち込んだ。秘密に触れたため某国情報部に追われ、姿を消した恋人夏奈が、“魔界都市写真展”のモデルになっていたというのだ。撮影場所はSMクラブ。美貌の人捜し屋せつらが調査を始めるや、夏奈がときどき消えること、鏡に映らないことも判明した。彼女は実在するのか?凶悪な暗殺組織の魔手が迫る中、北国の恋人たちの行く末は?
掃除当番で放課後の旧校舎に集められた「底辺」の生徒たち。「強者」によって支配される校内には、彼らの居場所はなかった。いつも誰かに怯えている彼らだったが、一人の少女の出現によって変わっていく。少女の教えてくれた“おまじない”をすれば、「なりたい自分になれる」と信じて。しかし、それは復讐劇のはじまりだった。やがて“おまじない”は全校生徒を侵食し、学校は静かに壊れていく…。
ぼろ袈裟に身を包み、気まぐれに「泰平山末法院」の看板をあげて、向島小梅村の荒れ寺に住みついた破戒僧不覚。寝言まがいの念仏や祈祷でひとさまの懐をうかがっている。ものぐさ、出不精、食い意地張りでおんな好き。しかし、情に仇なす悪は許さない。六尺を超える巨躯に岩の鎧のような筋肉をまとう、宝蔵院流十文字槍の手練れである。寺に出入れするかわら版売りの佐一が、己の欲のために次々と事件を持ち込んでくる。その口車にのせられて事件に首を突っ込むうちに災厄がふりかかり…。笑いあり、涙あり、チャンバラありの、本格痛快時代小説!
「ねえ、ぼくたちの恋は本当にうまくいくと思う?」1960年春、シリア。ムシュターク家のファリードとシャヒーン家のラナーは、一族の者に隠れて逢瀬を続けていた。十二歳で出会ってすぐ、恋に落ちたふたり。しかし片田舎のマーラ村に住む両家は、何十年ものあいだ血で血を洗う争いを続ける仇敵同士だったのだ。一方、1969年のダマスカスで、礼拝堂の壁にぶら下げられた篭の中から、首の骨を折られた男の死体が発見される。殺害されたのは秘密警察官のマフディ・サイード少佐で、胸ポケットには謎めいた文章が書かれた灰白色の紙が残されていた。ふたつの物語の断片に、一族の来歴、語り部による哀話や復讐譚を加えて構成された全304章が、百年にわたるシリアの人々・風土・文化が埋め込まれた壮大なモザイク画となる。今世紀最大級の世界文学第一巻!
可憐な美貌を持つ財閥令嬢から依頼された“鱗雲荘”の調査。有力政治家として名を轟かせた彼女の祖父が遺したその建物の地下には、鍾乳洞を利用して建造された巨大なシェルターが存在していた。そこで七ツ森神子都をはじめとする地下世界研究会のメンバーが屍蝋化した遺体を発見した瞬間、恐るべき連続殺人の幕が開く…!
退屈に苦しむ名探偵ホームズのもとに持ちこまれた、怪奇な雰囲気が横溢する事件「“ウィステリア荘”」。ワトスンが目にした、ベッドに横たわるホームズの衝撃的な姿「瀕死の探偵」。そしてシリーズ中で異彩を放ち、長い余韻を残す表題作など、全8編を収録する短編集。登場から一世紀以上がたってもなお、世界じゅうの人々を魅了しつづけている永遠の名探偵の事件簿、新訳決定版。
不穏な空気をはらんだ夏の午後、医師シャーロットの診療所にやって来た若い女。ヴァイオレットと名乗るその娘は、夫ではない男の子どもを妊娠したという。彼女の“頼み”を一度は断ったシャーロットだが、混乱しきった様子が気に掛かり、その晩、ヴァイオレットの住まいへと足を向け…卓越した心理描写を武器に、他に類を見ないミステリを書き続けた鬼才による傑作、本邦初訳。